藤井聡太、絵本で明かした気持ちを落ち着かせるための「物を握るクセ」 作業療法士が3つの効能を解説

対局中、扇子をぎゅっと握って突破口を探る藤井聡太(時事通信フォト)

 伝記絵本といえば、歴史に名を残した「偉人」が題材となることが多いが、22才の若さで彼らの仲間入りを果たした男がいる。現在「竜王戦」4連覇に挑んでいる藤井聡太七冠だ。11月7日、藤井の半生を描いた初の絵本『ぼくは 将棋で 世界を えがく 藤井聡太ものがたり』(世界文化社)が発売された。本書は発売前から重版が決まるなど、各所で話題を集めている。

「将棋を始めたきっかけや、師匠である杉本昌隆八段に弟子入りを志願しに行った日のこと、小学生時代からのライバル・伊藤匠叡王に破れて号泣したときの思い出など、将棋ファンの間ではよく知られるエピソードが小さな子供たちにもわかりやすく描かれています。“未来の藤井聡太”を目指してほしい親御さんたちに好評だとか」(出版関係者)

 そんな本書の一節で、藤井は子供の頃から身につけていたという、ある“クセ”について明かしている。

「《きんちょうしたときは どうやって きもちをおちつけますか?》という質問に、《子どものころから なにかを にぎっていると きもちが おちつきます》と答えているんです。学生時代には消しゴムを、現在は扇子を握ることで、緊張や不安を和らげているようですよ」(前出・出版関係者)

 たしかに藤井が扇子をぎゅっと握りしめ、指し手を考える姿は対局中によく見られる。歴戦の猛者たちも舌を巻く藤井の“読みの深さ”は有名だが、実はこの「物を握るクセ」が、彼の強さのヒミツでもあるようだ。さらに子供の脳の発達やボケ防止の観点からも、「物を握る」ことの効果は、医療現場や教育関係者の間で注目されているという。

 作業療法士で「STROKE LAB」代表の金子唯史さんは、「『握る』ことの効能は、大きく分けて3つあります」と語る。

「まずは、血流の改善。物をグッと握ることで心臓のポンプが活発に動き、結果的に脳の血流もよくなります。2つ目が脳の活性化。手指の感覚を感じながら物を握ると、手の感覚野から前頭葉への入力が増え、集中するときに使う脳の部位がより活性化します」

 プロ棋士の対局は、4〜9時間に及ぶ。長時間集中力を保つためにも、「握る」ことは有用だ。

「3つ目の効能が、ストレス緩和やリラックス効果です。赤ちゃんが母親の手を握るように、『握る』という接触行為は原始的な反応。副交感神経が優位になり、安心を得ることができるんです。さらに交感神経と副交感神経のバランスを保つことは、長時間集中して冷静な判断を下すためにも有効です」(前出・金子さん)

 また、手を開いたり閉じたりを繰り返す「グー・パー運動」など簡単な動作で、認知機能アップの効果が見込める。

「『握力が年々下がるほどアルツハイマー型認知症のリスクが高まる傾向がある』というデータもあります。日頃から手を意識的に使うことが大切です」(前出・金子さん)

 絵本で明かされた藤井の“すごいクセ”は、老若男女に効果がありそうだ。

※女性セブン2024年11月28日号

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