スマホ偽装工作に親族への馬券予想…通算111勝、JRA4年目有望株の22歳・永野猛蔵騎手が引退

デビュー4年目で現役を引退した永野猛蔵騎手

 JRAは13日、永野猛蔵騎手(22)=美浦・伊藤圭三厩舎所属=から騎手免許の取消申請があり、同日付で騎手免許を取り消したと発表した。21年のデビューから約3年8か月での引退となった。同騎手は10月5日から6日に東京競馬場の調整ルーム居室内に通信機器(スマートフォン)を不正に持ち込み、通信していた事実が判明。同8日から裁定委員会の議定があるまで騎乗停止となっていた。

 JRAによる調査の結果、永野騎手には23年5月25日から24年10月6日までの1年4か月間に及ぶ継続的なスマートフォンの不適切使用が判明。所有していた2台のうち1台のみをロッカーに預ける偽装工作を行い、外部の複数人と常態的に通話、通信を行っていたことが発覚した。

 さらに、自身の骨折休養中、親族に対し馬券の予想行為を1度行っていたことがLINEの履歴より判明。JRAは所属厩舎および自身が騎乗経験のある出走馬ではなかったため、競馬の公正確保には抵触していないと判断したが、騎手としての順守規定を破る非行とした。なお、競馬法で禁止されている馬券の購入および譲り受けは行われていなかった。

 これらの事実を踏まえ、13日に行われた裁定委員会で永野騎手には、24年10月8日から25年10月7日まで12か月間の騎乗停止処分が決定。処分を伝えた際に同騎手から騎手免許取消願が提出され、受理された。JRA美浦トレーニングセンターの赤井誠公正室長によると、聞き取り調査の段階から本人は引退の意思を示していたという。

 JRAでは、同じくスマートフォンの不適切使用発覚後の先月11日に人気女性ジョッキーの藤田菜七子(27)が引退したばかり。1年目から29勝、30勝、24勝、今年も28勝とコンスタントにVを重ねていた4年目の有望株も“スマホ問題”でムチを置くことになった。

◆スマホ不適切使用と処分

 ▼23年5月3日 4月の競馬開催中に調整ルームや競馬場の騎手控室で通信機器を不適切に使用したとして永島まなみ、古川奈穂、今村聖奈、河原田菜々、小林美駒、角田大河の6騎手を5月13日から6月11日まで30日間(開催10日)の騎乗停止にしたと発表。

 ▼24年7月10日 水沼元輝騎手が3~5月に美浦や競馬場の調整ルーム居室内でスマホを不適切に使用していたことが判明。ケースだけをロッカーに預ける偽装工作をして持ち込んでいたことが分かり、5月31日から9か月間の騎乗停止が決定。特定できる範囲では最も重い処分に。

 ▼同10月7日 永野猛蔵、小林勝太の両騎手が所有する2台のうち1台を預け、残る1台のスマホを調整ルーム内に持ち込み通信していたことが判明。2人は翌8日から騎乗停止。

 ▼同10日 藤田菜七子騎手が23年4月頃まで複数回にわたり、調整ルーム内にスマホを持ち込み通信していたことが判明。23年のJRAへの申告が虚偽だったことが分かり、翌11日から騎乗停止に。同騎手は10日に引退届を提出し、11日に受理が発表された。

 ◆調整ルーム 各競馬場、トレセンに併設されている。外部との接触の禁止が目的。各騎手は原則レース前日の午後9時までの入室が義務づけられ、携帯電話などの通信機器は使用禁止となっている。

 ◆永野 猛蔵(ながの・たけぞう)2002年9月8日、新潟県出身。22歳。21年3月に美浦・伊藤圭三厩舎所属でデビューし、同6日の中山3R(タマモヒップホップ)で初騎乗初勝利。1年目に29勝を挙げ、関東の新人騎手賞にあたる民放競馬記者クラブ賞を受賞した。JRA通算2501戦111勝。同期には永島まなみ、古川奈穂らがいる。161.5センチ、45.5キロ。

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