相撲の面白さと高い技術が凝縮された大の里と若隆景の一番 星が伸びない2大関は何を思ったか…元大関・琴風の目

初黒星に厳しい表情の大の里

◆大相撲 ▽秋場所12日目(19日、東京・両国国技館) 

 東前頭7枚目・若隆景が土俵際からの大逆転劇で、関脇・大の里に土をつけた。優勝経験のある元関脇の実力者が、大関昇進が目前の“怪物”を相手に意地を見せた。大の里の初日からの連勝は11で止まったが、単独トップは変わらず。1差の2敗で関脇・霧島と平幕の高安が追い、3敗で若隆景と平幕の錦木が続く。

 鳥肌が立った。猛暑でも寒気(さむけ)が止まらなかった。10秒2の短い時間に、相撲の面白さと高い技術が凝縮されていた。大の里はもろ手から一気に走った。最後は体を預けたが、腰が高く覆いかぶさるようになった。逆に若隆景は低い体勢で中に入ってもろ差し。体を入れ替えられても突き落としを食っても必死に耐えて、最後は寄り切りで全勝力士に土を付けた。

 両力士の差は紙一重。若隆景の最後まで崩れなかった下半身。大の里に右上手を取られそうになっても、腰を振って防いだ細かいテクニックも光った。もし取られていたら違う局面になっていた。大の里は終盤になって勝ち急ぎからの腰高が顕著になった。その差が勝敗を分けたと思う。

 この熱戦を2大関がどのような思いで見つめたのか。今場所は“ダメ大関”のレッテルを貼られている。汚名返上のチャンスを生かして場所を盛り上げてほしい。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

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