年金月5万円72歳の紫苑「家は一生かけて一つ買う」「セカンドハウスはお金持ちの特権」だった時代はもう過ぎた?シニアにとって現実的な二拠点生活を考えてみる【2023編集部セレクション】

先日伊豆へ旅行に行ったという紫苑さん。しかし気持ちは旅行以外に向いていて――(写真提供:著者)
2023年下半期(7月~12月)に配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします。(初公開日:2023年07月21日)


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母子家庭で、二人の子どもを育てながらフリーランスで仕事をしてきた72歳のひとりシニア・紫苑さん。そのため年金の額は月に5万円ですが、お金を遣わなくても安心して暮らすための工夫の数々をブログに記すと話題となり、楽しい毎日の様子は新聞やテレビなどでも紹介されるようになりました。その紫苑さんの節約術を日々の暮らしとともに紹介していくのが当連載。第17回のテーマは「二つの家を持つということ」です。

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【写真】旅行先での一枚

「住まいを二つ持つ人」が増えている

先日娘と孫との三人で伊豆に行きました。孫が来年小学校に入学、そうなるとなかなか私とは一緒に遊べない、旅行には行けなくなるとの理由で娘が企画してくれました。

今回はその旅行の話、ではなく二拠点住宅の話題です。

というのも私の周りでは、住まいを二つ持っている人が増えていて……。

ちなみに、あわてて付け加えると、彼らはすごいお金持ちというわけではありません。

たとえば京都に「ときどき移住」している方は横浜住まいの70代。有名な太秦の近くに部屋を借り、月に一度か二度、京都に行き、寺社仏閣巡りやお祭りを楽しんでいます。

その家賃、なんと二万円台。

京都は一年中、いろんな行事があり、行事のある季節のホテル料金は目玉が飛び出るほど高い。その点、「ときどき移住」なら、どんなときでも行くことができます。京都好きが高じて、こんなニュアンスで移住する人は増えているようで、すっかり街に溶け込んだ彼は、催事や仏閣案内のボランティアなどをしているとのことでした。

自分好みにDIYして暮らす人も

もう一人の60代の知人は、東京都心のマンションに住みながら、都心からやや離れた場所にも古い家を安く購入。それをDIYしながら暮らしているそう。

週末や気分転換に使っているようですが、普段の仕事をしやすい場所に家を持ちつつ、週末には好きな環境で暮らそうと二つ目の家を買い、自分好みに修繕しながら暮らす人が私のまわりでどんどん増えています。

その家がある段階まで完成したら、次の人に譲るのを前提に、つまり売ることまで考えて、購入している人までいるようです。また、小さな子どもに合った環境の上を選んで、子どもと一緒にDIYを楽しみ、成長に応じて手放したり、買い直したり。

センスや出来によっては買ったときと同じくらい、あるいはそれ以上の価格で売れることもあるそうで、それもまた楽しみ、励みになっているよう。

二拠点暮らしに興味津々

そんななかで二拠点暮らしに興味を持ちはじめた私は、このたび伊豆に行ったときも、「このあたりの家賃の相場はどのくらいなんだろう」と地元の不動産屋広告を眺めたりしていました(笑)。

現実として、少子高齢化の影響で全国に空き家が増え、大きな問題になっているのは皆さんご存知のことかと。

それだけに「空き家バンク」といった各種支援組織も生まれていますし、場所によっては、シニアであっても、移住者補助やリフォームの一部を負担してくれるような公的制度も存在します。

もちろん「移住」である以上、移住先の地域や住民の方とトラブルを起こさないような法的な手続きや意識、気遣いなどが不可欠にはなりますが、それでも週末、あるいは一人になりたいとき、より環境のよい場所を持っているのは、大いにストレス解消へつながるのでは。家族との軋轢も減る?のかもしれません。

これからの家とは

私が生きてきた時代、基本的に家は一生もので、一つの家を買うため、ローンを払うために定年まで働き続けるのが当たり前でした。週末にセカンドハウスで暮らす、という選択肢は一部のお金持ちだけに許された特権だったように思います。

しかし、私の周りを見る限り、今はそうでもなさそうです。いつかかなえたい夢、というわけでもなく、実際に動き出している方が増えているように実感しています。

旅行とは一味違う形でより少し深く地元とかかわる。それでいて、これからも増えていく可能性の高い空き家を、むしろポジティブに使う人が増えるのはやっぱり良いことだし、使う当人にとっても楽しいことなのではないでしょうか。

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