人工股関節の手術後、学生時代の部活仲間と熱海へ。還暦間近、みんなで赤いアイテムを身に着けて出発。温泉まんじゅう一つではしゃげる、貴重な友人たち

昔の雰囲気が少しでも蘇ったら嬉しいな。そう思って迎えた当日…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは愛知県の50代の方からのお便り。還暦を前に、何か目標を設定しようと思い立ち、「学生時代の部活仲間と熱海へ行く」というイベントを企画。みんなに連絡したところ――。

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還暦記念にぴったりの目標

これからも元気に歩き続けられるようにと、人工股関節の手術を決断した。術後、いつまでも消えない痛みや、うまく歩けるようになるのかなどの不安が頭をもたげ、ついつい暗くなりがちになる。気持ちを鼓舞するために、流行りの自己啓発本を読んでみることにした。

ちょうど親を見送って、実家じまいをしたタイミングでもあり、先のことを考えるいい機会だとも思ったのだ。「やり残したことがないと言える人生」「やめてスッキリする」などのキャッチコピーに惹かれて何冊か読むと、どの本にも「なにか目標を設定するとよい」と書いてある。

そこで、還暦記念にぴったりの目標はなんだろうと考え、「学生時代の部活仲間と熱海へ行く」というイベントを思いついた。18歳で同じ部活に入った8人。卒業後も会ってはいたが、最後に全員が集まったのは30年以上も前になる。

みんな参加してくれるかな……?その不安は、しかし杞憂だった。お誘いの連絡をすると、すぐに全員が行きたいといってくれ、日取りもスムーズに決まったのだ。術後のため杖でゆっくりとしか歩けない私に、旅の計画は任せてくれるという。

還暦レッドでおそろいに

還暦イベントということで、幹事としてひと工夫、提案してみた。魔除けの赤いちゃんちゃんこにちなんで、「なにか赤いものを身に着けてくる」というルールを設けたのだ。みんなノリのよさも当時のままに、面白がってくれた。

こんなことを提案したのは、あの頃が懐かしかったから。部活でいつも一緒だった8人は、試合で着るユニフォームはもちろん、トレーナーやスタジャンなど、あらゆるものをおそろいで着ていたものだ。

昔の雰囲気が少しでも蘇ったら嬉しいな。そう思って迎えた当日、熱海駅に揃った8人は、それぞれ個性が光る赤いものを装着してくれていた。赤い服、赤い靴、赤いバッグ、赤いネックレス。えも言われぬ一体感を取り戻したおしゃべりは、まるで時計の針が逆戻りしたよう。

もちろん、話す内容は変化した。就職、結婚、出産、闘病、転勤、親の看取り、子の巣立ち……と、それぞれ人生の荒波を乗り越えてきたのだ。だが、この年になっても温泉まんじゅう一つではしゃげる、貴重な友人たちに感謝と感動を覚える。


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