女手一つで娘2人を育て上げ、定年を迎えた。65歳、長年の夢だったお遍路に取り組み中
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家族が3人から10人に
20年あまり勤めた職場を定年退職した。33年前、夫が働き盛りに亡くなり、娘2人と、初めて部屋で3人きりになった時のことは忘れられない。あまりの心細さに、いっそ死んでしまいたいと思ったものだ。
しかし落ち込んでばかりもいられない。当時小学生と幼稚園児だった2人を女手一つで育て、ずっと働いてきた。
今、娘たちはよき伴侶を得て、家を出ている。なにかにつけて素敵な花束をくれる長女。いつも私を気遣ってくれる次女。
もうすぐ生まれる5人目の孫を合わせれば、家族は10人にもなる。なんて幸せなんだろう。
遍路めぐりは休み休みで
定年後は少しゆっくりとした時間を過ごしたい。そう思い、長年の夢だった四国霊場八十八ヵ所参りに取り組んでいる。数ヵ寺ずつ分けてめぐる、車でのひとり旅だ。
長い階段を上った先にあるお寺ならではの澄んだ空気を味わい、お坊さんが一心に唱えるお経や響き渡る鐘の音に感じ入る。時には宿泊し、寄り道しながらの珍道中。同じくひとり旅の外国人男性に助けられたり、懐かしい人と偶然再会したり……。やさしさに触れ合う旅に、これまでを労ねぎらわれているような気持ちになる。
まだ65歳、されど65歳。12月にある、夫の三十三回忌法要までに結願したいが、頑張りすぎず休み休み。
心に余裕のあるおばあちゃんになることが、一番の目標だから。
11/15 12:30
婦人公論.jp