堀井美香さんが『あさイチ』に登場。《ご自愛のやり方》を伝授「あんなに濃い時間を過ごしたママ友に、私はお礼をちゃんと言えただろうか」

堀井さん、ふとしたことでママ友たちとの思い出がよみがえってきたそうですが――。(撮影:キム・アルム/写真:『一旦、退社。』より)
2024年10月7日のNHK『あさイチ』のテーマは【ご自愛、してますか?】。自分で自分を大切にする「ご自愛」のやり方をジェーン・スーさんと堀井美香さんが伝授します。堀井さんが新たな一歩を踏み出した時の思いを語った『一旦、退社。』(大和書房)からの記事を再配信します。

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岸田政権が22年10月「その支援に5年で1兆円を投じる」と表明して話題になった「リスキリング」。概ね「別の業務に就くのを目標に、新たなスキルを習得する」といったことを指しますが、先の見えない時代、歳を重ねたのちに新たな道を模索するのは、さほど珍しいことではないのかもしれません。50歳でTBSを退社したフリーアナウンサー・堀井美香さんも、新たな道に進んだ一人。退社前からの記録を綴ったエッセイ『一旦、退社。50歳からの独立日記』が現在、話題となっています。その本によれば、堀井さん、ふとしたことでママ友たちとの思い出がよみがえってきたそうで――。

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【写真】子どものときによく来たという海水浴場での一枚

ママ友たちとのこと。

参議院選挙の投票日、朝早く、ほぼ寝起きのような格好で、夫と息子と三人で近所の小学校へ投票に出かけた。そこは娘が通っていた公立小学校である。

もう選挙でしか来ることもないが、10年前と変わらないグラウンドや校舎を見て、PTA活動のこととか、もうあまり連絡もとらなくなったママ友のことなんかを時々思い出したりもする。

校舎に入ろうとした時、本名で遠くから呼びかけられた。振り向くと、もう何年も会っていない、仲の良かったママがいた。

娘たちが同じ塾に通っていて、送り迎えも一緒にした。あの頃はよく同じメンバーでランチをしたり、長い間学校の前で立ち話をしたりしたが、それぞれが違う中学に入ってからは連絡も次第に途絶えた。

まるで新しくできた友達のように

そのママから、「久々にランチでもしようよ」とお誘いを受けて、本当に久しぶりに仲の良かった四人が集まった。

『一旦、退社。~50歳からの独立日記』(著:堀井美香/大和書房)

小学生だった子供たちはもう社会人になってそれぞれの場所で働いている。

話すことも、子供の勉強や塾の話ではない。50過ぎの私たちが得意とする健康とかアンチエイジングとか、以前は絶対に出てこなかったであろう〝推し〞の話なんかで盛り上がった。

いつも一緒にいたママが大江千里の大ファンだということも、一人のママは革細工が得意で個展を開くほどの腕前だということも、初めて知った。彼女の個展にみんなで行こうということになり、まるで新しくできた友達のようにはしゃいでしまった。

たくさんのママたちに助けられて

私の子育ては見知らぬ街で始まった。頼る人もいない。その上アナウンサーという仕事をしていれば、遠目から珍しそうに見られて距離を置かれる可能性もあった。

知らない土地で安心して暮らすために、地域に自ら馴染むことが必要だった。だから娘が公立の小学校に入った時、PTA役員に真っ先に手を挙げたし、自分から声をかけてママ友をナンパしたりもした。

徒党を組まないママもいるし、ママ友やママグループ自体あまり好きではないという人もいるかもしれない。だが、私の場合は彼女たちがいてくれて本当によかった。

娘の小学校の運動会はたいてい土曜日で、お昼に家族と一緒にお弁当を囲む。私は土曜日が仕事で運動会にはほぼ行けなかった。でもいつも、「うちで一緒にお弁当食べなよ」と言ってくれるママが何人もいた。

小学1年生の娘が「今日はグラウンドでいろんなママが私のとこに次から次へと来て大忙しだったよ」というのを聞いて、どんなに救われたかわからない。きっとたくさんのママ友たちが娘に声をかけてくれたのだろう。

私が具合の悪い時には面倒を見てくれたり、こんなことがあったよと私が知らない子供のことをそっと教えてくれたり。学校で知り合った人だけでなく、娘の塾、息子の野球、私はたくさんのママたちに助けられてきたのだ。

私はママ友たちにお礼をちゃんと言えたのだろうか

何人かとは未だに親しくしているが、ほとんどの人とはもう連絡さえとっていない。

懐かしくてスマホのアドレスに溜まっている100人ほどのママ友欄を見てみたが、顔を思い出せない人すらいる。

あんなに濃い時間を過ごしたのに、同じ街であってもきっとお互い気がつかないのだ。そしてもう約束を取りつけて会うこともしないだろう。寂しいけれどママ友というのはそういうものなのかもしれない。

私はママ友たちにお礼をちゃんと言えたのだろうか。みんな元気にしているだろうか。

もしもう一度会えたなら、子供のことなんか一言も話さずに、自分たちのことだけをベラベラと喋って、労をねぎらいあいたいとも思う。

ママ友の同窓会なんて聞いたこともないけれど、あってもいいかなと思ったりするのだ。

※本稿は、『一旦、退社。』(大和書房)の一部を再編集したものです。

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