52歳のレジェンド ケリースレーターの活躍を振り返る

皆さん、こんにちは。プロサーファーの水野亜彩子です。
今回はサーフィン業界の生きる伝説「ケリー・スレーター」について、お話しをしたいと思います。

コンテストシーンの一時代を築き上げてきたケリー・スレーターが先日西オーストラリア マーガレットリバーで行われたWorld Surf Leauge Champion Tour Western Australia Margaret River Proで*ツアーミッドシーズンインカットのランキング22位を下回ったことによりChampion Tourから脱落することが確定しました。

数々の偉業を残し、ギネスブックにも名を残しているケリー・スレーター。今回はケリー・スレーターが残してきた軌跡をいきたいと思います。

*World Surf Leauge Champion Tour 全10戦の内、前半5戦終了時点のランキングでメンズは36名から22名、ウィメンズは18名から10名にカットされるシステムのこと。

波の無い地域で生まれ育った

ケリー・スレーターは、1972年にアメリカ合衆国フロリダ州ココアビーチで3人兄弟の次男として産まれました。ココアビーチは比較的穏やかな波のことが多い地域。

サーフィンといえば西海岸のイメージがある方も多いと思いますが、フロリダでもWorld Surf Leauge Qualify Seriesが行われたこともあります。とは言ったものの、やはり西海岸の方がサーファーの人口も多く試合数も多くなります。なので東海岸で育ったサーファーが注目してもらう為には、まずは試合で成績を残す、ということが必要な要素になることも。

ケリー・スレーターの他にも2023年World Surf Leaugeワールドチャンピオンを獲得したキャロライン・マークスもフロリダ州出身の選手で、若い頃からコンペティターとして試合を転戦し注目されていました。そういった意味でもフロリダ州出身で活躍している選手は強いハングリー精神をもっているのかもしれません。

10代からコンテストの道へ

WSL/Aaron Hughes

10代ですでに無敵のアマチュア選手として注目を集めており、4年連続で全米チャンピオンのタイトルを獲得。18歳でクイックシルバーと契約を交わします。

その後、19歳でChampion Tourにクウォリファイし、翌年20歳という若さ(最年少)で、世界チャンピオンを獲得します。この記録は歴代最年少記録となり、現在も塗り替えられています。まだ塗り替えられていません。(のちに、ブラジル出身のガブリエル・メディーナ選手も同じ20歳で世界チャンピオンに輝いています。)

また、映画「モーメンタム」や「ブラックアンドホワイト」に出演するなど、サーフィン以外の場でも活躍し、世界中の憧れの存在となりました。

偉業の数々

WSL/Aaron Hughes

史上最年少の20歳で世界チャンピオンを獲得してからもケリー・スレーターの活躍は止まることを知りません。1993年から5年連続世界チャンピオンを獲得。合計11回の世界チャンピオンに輝き、56回のChampion Tour優勝という素晴らしい功績がギネスブックの世界記録に登録されています。

56回のChampion Tour優勝は11カ国6大陸で獲得しており、最も多く優勝をおさめた国はオーストラリアで、そのうちゴールドコーストが13回、ベルズが4回で共に最多優勝記録となっています。

そしてケリー・スレーターがGreatest Of All Time通称、G.O.A.Tと言われる理由はまだあります。それは20歳で最年少世界チャンピオンの功績を保持すると同時に39歳で世界チャンピオンとなり、最年長の世界チャンピオン記録も獲得しているのです。

同じ選手が同時にこの2つの記録を持つことは他のスポーツをみても珍しいことだと思います。

ケリー・スレーターがどれだけトップに君臨しているのかお分かりいただけたかと思います。しかし、彼にはまだ素晴らしい活躍があるのです。

50歳でパイプラインマスターズ優勝

WSL/Aaron Hughes

オアフ島、ノースショアのパイプラインというサーフポイントを舞台にした長い歴史を持つパイプラインマスターズ。ケリー・スレーターが最初に優勝したのが1992年。その後、8度も優勝しパイプラインマスターズでの最多優勝記録を保持していますが、この8度目の優勝はなんと2022年。

最初に優勝してから30年の月日が流れているなか、50歳を目前にしたところで優勝。私もライブ配信でこの試合を観ていましたが、ケリー・スレーターが涙するシーンに本当に感動し、この日のSNSはお祭り騒ぎだったのを覚えています。

サーフィンというスポーツは現役選手の入れ替わりが早く、トップに君臨し続けることが困難です。また、採点競技なのでその時の流行りのサーフィンや、得点に繋がるサーフィンは年々異なります。

その中で勝ち続けるには、自身のトレーニングはもちろん、サーフボードなどの調整も必要になります。様々な要素を常に完璧な状態で結果を出し、トップに君臨し続けることは並大抵のことではありません。

最後に

WSL/Aaron Hughes

現在ケリー・スレーターはコンペティター以外に、サーフブランドやアパレルブランドを手がけたり、World Surf League Champion Tourも行われた世界最高のウェーブプール「サーフランチ」の開発を手がけたりとビジネス面でも様々なことを行っております。

コンペティターとしてのケリー・スレーターが見れなくなるのでは!?と不安になる方もご安心ください。2024年5月31日までパリオリンピック会場となるフランス領ポリネシア タヒチで行われているWorld Surf League Champion Tour SHISEIDO Tahiti Proにも出場しており、素晴らしいライディングで勝ち上がっています。

そして2024年8月20日から8月29日までフィジー共和国で行われるWorld Surf League Champion Tour Corona Fiji Proもワイルドカードで出場予定なので、52歳現役で挑戦し続けるケリー・スレーターの素晴らしいライディングをお見逃しなく!

水野 亜彩子/ Asako Mizuno

幼少期からサーフィンを初め、当時女子最年少15歳でプロサーファーへ。国内外のツアーに参戦。日本代表として世界大会には4度出場。高校生の時にJPSA初優勝。21歳でJPSAツアーランキング2位に輝いた。現在はサーフィンの大会の解説者、選手時代にコンディショニングとして行っていたピラティスのインストラクターの資格を取得してもインストラクターとしても活動。サーフィンの魅力を発信し続けている。

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