「それが生命線」サッカー日本代表はアジア杯の反省を生かせるか。守田英正ら中盤に求められるプレーとは【コラム】

【写真:Getty Images】

●アジア杯の失敗から何を学ぶか

サッカー日本代表は21日、FIFAワールドカップ26アジア2次予選兼AFCアジアカップサウジアラビア2027予選で北朝鮮代表と対戦する。期待外れに終わったAFCアジアカップカタール2023を経て、日本代表はどのような戦いを見せるのか。北朝鮮戦では、守田英正ら中盤の働きがカギを握りそうだ。(取材・文:元川悦子)
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 2026年北中米ワールドカップ(W杯)優勝を目指している日本代表にとって、アジアカップ(カタール)直後の今回のアジア2次予選は出直しの重要な一歩。その相手が北朝鮮となると、いやがおうにも関心が高まってくる。
 
 今日21日のホーム初戦は東京・国立競技場で行われるが、26日に困難の伴う平壌でのアウェイ戦が控えている。それを視野に入れると、相手を打ちのめすほどの圧倒的強さを見せ、勝ち点3を手にしておく必要がある。
 
 しかしながら、ご存じの通り、今回の日本は伊東純也(スタッド・ランス)、三笘薫(ブライトン)の両ウイングに加え、守備の要・冨安健洋(アーセナル)が不在という不安要素を抱えている。
 
 その代役としては、右サイドに堂安律(フライブルク)、左サイドに中村敬斗(スタッド・ランス)、DFには谷口彰悟(アル・ラーヤン)か町田浩樹(ユニオン・サン=ジロワーズ)の出場が有力。森保一監督が「日本にはいい選手が沢山いる。その選手たちが覚悟を持ってファイトし、粘り強く戦うことを表現してくれると期待している」と語った通り、彼らはピッチ上で躍動感あるプレーを見せてくれるのか。そこが1つの注目点だ。
 
 そのうえで、日本はアジアカップで露呈したロングボールの対応、空中戦の弱さといった課題を克服し、主導権を握りながら戦っていく必要がある。フィジカルやバトルの強さを前面に押し出す北朝鮮がイラクやイランのようにロングボールや空中戦を多用してこないとも限らないだけに、同じ失敗を繰り返してはいけないのだ。
 
●「以前より詰められたかなと」
 
 そこで重要になってくるのが、中盤のバランス。アジアカップで敗退した際、守田英正(スポルティングCP)が「もういろいろ考えすぎて頭がパンクというか、もっと『外からこうした方がいい』とか、『チームとしてこういうこと徹底しよう』とか指示や決まりごとがほしかった」と注文を付け、物議を醸すことになったが、どこまで細かいすり合わせができているのか。そこは今後のチームの動向を左右するポイントと言っていい。
 
「守備のところの確認はミーティングで映像を使ってやりました。分かっていたことではありますけど、新しい選手もいますし、佑都(長友=FC東京)君も帰ってきたりしたので、歪みがないように話はしました。
 
 より細かくなった? そうですね。可変だったり、相手が自分たちより多くビルドアップしてきた時の守備の配置、誰がズレるといったところは以前より詰められたかなと。いきなり0が1、1が2になったりはしないですけど、最適解を探っていく段階。今はよくするために動いている段階だと思います」
 
 守田は北朝鮮戦前日練習後に少しスッキリした表情でこう語っていたが、アジアカップ時のモヤモヤや迷いはある程度は解消できた様子。ボランチの相棒になると見られる遠藤航(リバプール)も「彼のアジアカップ後の発言には彼なりの意図があるとは思いますけど、自分たちはいつもディスカッションはしている。僕からしたら『いつも通りの守田』って感じなんで、特に問題ないです」とそこまで深刻には捉えていなかった。短い準備期間ではあったが、2人の中で意思疎通はきちんと図られたと見ていいだろう。
 
 こうした中、改めて彼らに求められるのは、相手が蹴り込んできた時の確実な対応だ。アジアカップではロングボールを入れられた際、横並びになっていた遠藤と守田が後ろに下がりすぎてしまい、彼らの前のスペースが空き、そこでセカンドボールを拾われ、攻め込まれるという形になることが多かった。イラク戦ではその課題からダイレクトに失点につながり、選手間で話し合って修正したはずだったものの、またしてもイランに弱点を突かれる格好になった。その結果、日本は8強で敗れ去ったのである。
 
●「僕がイメージしているのは…」
 
 彼らはその教訓を生かすべき。特にボランチが下がり過ぎず、コンパクトさを保つことは試合を優位に運ぶ上での絶対条件だ。そこは守田も遠藤もよく分かっているはず。田中碧(デュッセルドルフ)ら別のボランチが出場したとしても、間延びするシーンを極力少なくしなければいけない。いい守備組織が構築できていれば、日本がボールを保持する時間も増えるし、チャンスもより多く作れる。そういった展開に持ち込むことが肝要だ。
 
「僕がイメージしているのは、もちろん後ろを固めるのも大切ですけど、やっぱり出どころにどれだけいけるか。そこは結構、話し合った。勝ってる試合はしっかりコンパクトにした中で、やっぱり出どころに行って、相手にいい状態で蹴らせないことを徹底していた。それが生命線でもある。前向きなプレーの選択ができるかというのは、攻守両面において大事なのかなと思います」と遠藤も強調する。まさに全員守備が全員攻撃につながるということだ。森保ジャパンが重視してきた原点に立ち返り、いい守備からいい攻撃につなげることができれば、北朝鮮にそこまでやられることはないはず。アジアカップからの確固たる前進を見せてほしい。
 
 中盤のバランスが改善され、日本がいい形でボールを持てれば、あとは得点を奪うだけということになる。今回はおそらく最前線に上田綺世(フェイエノールト)が入るだろうが、彼を中心としたアタッカー陣はこれまでの戦いからいいコンビネーションができている。特に堂安、久保との関係性は良好で、アジアカップでも決定的なチャンスを作り出していた。彼らが確実にゴールを挙げてくれれば、そこまで苦しむことなく勝利を手にできる。昨年の快進撃を再現するかのような「強い日本」を印象付け、大きな希望を感じさせることができれば理想的だ。
 
「相手も必死で、死の物狂いで倒しにくると思いますし、北朝鮮は僕たちとの試合のために1月下旬ぐらいからキャンプを張ってると聞いた。相当、覚悟を持った戦いになると思います」と守田も警戒心を募らせていた。そういう相手に飲まれることなく、メンタル的にも局面局面のバトルでも相手を上回ることが勝利への第一歩。いずれにしても守田と遠藤という主軸ボランチ陣には、チームを再浮上させるべく、強いリーダーシップを発揮することが重要だ。
 
(取材・文:元川悦子

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