【ベスト8決定版】アジアカップ戦力値ランキング1〜8位。サプライズあるか!? 優勝の本命は?【アジアカップ2023】

【写真:Getty Images】

 AFCアジアカップ2023も決勝トーナメント1回戦までの日程を終えてベスト8が出そろった。勝ち上がった8チームのうち、最も戦力が充実している代表チームはどこなのか。今回は戦力を3項目(攻撃、守備、采配)に分けて数値化し、1~8位をランキング形式で紹介する。

8位:タジキスタン代表
監督:ペタル・シェグルト
FIFAランキング:106位
戦力値平均:5.7(攻撃力4、守備力7、采配6)

 AFCアジアカップ2023における最大のサプライズはタジキスタン代表の躍進だろう。同国代表は決勝トーナメント進出はおろか、アジアカップ出場すら初めての快挙だった。

 躍進の立役者となっているのは、ペタル・シェグルト監督である。アフガニスタン代表やモルディブ代表監督を歴任しているクロアチア人監督は、自ら先頭になってチームを盛り上げた。AFCアジアカップ2023の公式Xが取り上げたことで話題にもなったが、勝利した試合後にはシェグルト監督を中心に「Tajikistan Ba Pesh!(タジキスタン、進め!)」という掛け声で選手やサポーターと一体感を作り上げている。言語や文化が異なる外国人監督がここまで中心となって戦えるのは、選手からの人望が厚いからに他ならない。

 そんな熱血監督の「采配」がタジキスタン代表を決勝トーナメント進出へと導いた。同国代表は4試合を消化した時点でオープンプレーからは1ゴールしか奪えていない。このことからもわかるように決定力に課題を抱えているのだが、その中で彼の交代策がハマった。それはグループリーグ最終節レバノン戦。カウンターからダメ押しゴールを決められるリスクがある中で、3人のFWを投入する大胆な交代策に出ると、80分と90+2分に劇的なゴールを決めて2-1の勝ち越しに成功した。決勝点は彼がリスクを冒して投入したストライカーが決めたものであり、賭けが勝利を手繰り寄せた。

 「攻撃」の戦力値は「4」とかなり低いものになったが、それでもベスト8に進出できたのは、「7」と評価した堅い「守備」があってこそだ。GKのルスタム・ヤチモフは今大会最多の16セーブを記録しながら、許した失点はわずか3のみ。今大会を機にステップアップしてもおかしくない好パフォーマンスで、数々のピンチを救ってきた。UAE代表とのPK戦でも彼がPKを止めて勝ち上がっており、タジキスタン代表のキーマンとしてゴール前に君臨している。

 初のアジアカップで準々決勝進出を果たしたタジキスタン代表だが、他のベスト8進出国と比較をしても明らかに戦力が劣っている。ただ、彼らの自信は日を追うごとに高まっており、「結束力」「采配」「守備力」の3つの力でどの相手にも粘り強く戦えるチームとなっている。最少失点で防ぎ、ワンチャンスをものにすることができれば、次なるラウンドへと進んでもおかしくないだろう。

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7位:ヨルダン代表
監督:フセイン・アモータ
FIFAランキング:87位
戦力値平均:6.3(攻撃力7、守備力6、采配6)

 ヨルダン代表はグループリーグ初戦でマレーシア代表に4-0の快勝、第2戦韓国代表戦で2-2と引き分けたため、第3戦バーレーン代表戦を前に決勝トーナメント進出を決めた。

 グループリーグ3試合と決勝トーナメント1回戦の4試合で9ゴールを決めていることからもわかるようにヨルダン代表は「攻撃」が持ち味のチームだ。[3-4-3]の超攻撃的フォーメーションで戦っており、前線の選手のクオリティは軒並み高い。中でも頭一つ抜けているのがムーサ・アル=ターマリである。

 今季からリーグ・アンのモンペリエでプレーする背番号10はスピードとパワーを兼ね備えたウインガーで、複数の相手選手に囲まれても強引に突破する馬力の持ち主だ。得意のカットインシュートの精度も高く、単独で相手ゴールを脅かせる存在と言えるだろう。

 加えて背番号11のヤザン・アル=ナイマットも好調で、韓国代表戦ではゴール左下に叩き込むボレーシュートを決めたかと思えば、イラク代表戦では相手のミスをかっさらって独走ゴール。いずれのシーンもフィニッシュの上手さが際立っている。戦力値を高めの「7」と設定したのも納得の陣容だ。

 一方の「守備」に関しては“堅守”とは言えず、今大会だけでも5失点を喫している。そもそもフセイン・アモータ監督は攻撃的なサッカーを志向しており、昨年6月の就任から10試合で無失点に抑えられたのはわずか1試合のみ。基本的には打ち合い上等のサッカーで、2-2の韓国代表戦や3-2のイラク代表戦は彼らの真骨頂だと言えるだろう。

 どの相手にも基本的には打ち合い上等で挑むため、彼の「采配」はイラク代表戦のように押し切って勝利を手繰り寄せることもあれば、それが裏目に出るパターンもある。例えば1月9日に非公開で行われた日本代表との強化試合では1-6の大敗を喫した。ややギャンブル的な側面もあるヨルダン代表の攻撃的サッカーはベスト8以降でも通用するのだろうか。

6位:ウズベキスタン代表
監督:スレチコ・カタネッツ
FIFAランキング:68位
戦力値平均:6.3(攻撃力7、守備力6、采配6)

 ウズベキスタン代表は同国最多得点記録保持者である絶対的エース、エルドル・ショムロドフを欠いてAFCアジアカップ2023に臨んでいる。チームの大黒柱が不在という危機的状況だが、現有戦力の頑張りもあって2大会ぶりにベスト8進出を果たした。

 エースの不在の中でも気を吐いているのは昨年行われたU-20アジアカップでウズベキスタン代表を優勝に導き、MVPを獲得したアボスベク・ファイズラエフだ。すでにCSKAモスクワで主力を張る20歳のMFは、タイ代表との決勝トーナメント1回戦でもエリア外から華麗な反転シュートをゴールに叩き込み、その才能をA代表の舞台でも遺憾なく発揮している。

 彼のクオリティのおかげで攻撃の戦力値は「7」を保てているが、当然だがショムロドフ不在の穴は埋めることができていない。特にストライカーの選手があまりゴールに絡めておらず、もう1人の得点源として期待をされていたイゴール・セルゲエフもグループリーグの試合で怪我を負ってしまった。そのためウイングが主戦場のジャロリディン・マシャリポフをストライカーのポジションで起用する強硬策で、決勝トーナメントを戦うことになるだろう。

 一方の「守備力」は開幕前と同じく「6」とした。ベスト8の時点で2失点に留めているが、相手チームのシュートミスにも助けられた場面もあり、相手によっては複数失点を喫してもおかしくない危ない対応があった。ただ、その中でも一際輝いていたのが、リーグ・アンのRCランス所属のCBアブドゥコディル・クサノフである。19歳ながら堂々とプレーしており、3バックの右で的確なカバーリングはもちろん、ビルドアップでも効果的な配球をみせている。

 元日本代表監督のイビチャ・オシム監督の教え子であるスレチコ・カタネッツ監督の「采配」は平均的な「6」とした。リードさえしてしまえば後ろに重心を置いて守備的にも戦えるが、今大会は攻撃的なカードに限りがあるため、リードを奪われると難しい試合展開になるかもしれない。ただ、チームの核に据えていた主力の離脱で大きくプランが崩れた中でも現有戦力で上手くチーム作りを進めており、中でも昨年のU-20アジアカップ優勝メンバーである若手の台頭は心強い限りだろう。準々決勝では開催国カタール代表と対戦するが、完全アウェイの中でも自分たちの時間を作れれば勝機も見出せるかもしれない。

5位:オーストラリア代表
監督:グラハム・アーノルド
FIFAランキング:25位
戦力値平均:6.7(攻撃力6、守備力7、采配6)

 順当にベスト8進出を果たしたオーストラリア代表だが、試合内容はそこまで良いとは言えない。ベスト16進出を果たした2022年のカタールワールドカップで成功を収めた「堅守速攻」のスタイルは変わっておらず、引いた相手を崩すことにはかなり苦戦を強いられた印象だ。

「攻撃力」は開幕前と同じく「6」とした。マシュー・レッキーやアワー・メイビルら怪我人の影響もあって前線のタレント不足は否めず、今大会はストライカーがほぼ機能していない。これまでミッチェル・デュークら3人の選手を最前線で起用したが、4試合を消化した時点で流れの中から1本も枠内シュートを打てていないのだ。

 ほぼFWが機能していないと言っても良い状況で孤軍奮闘しているのが中盤のジャクソン・アーバインである。オーストラリア代表の基本的な攻撃パターンはシンプルなサイド攻撃で、これに対してフィジカル自慢の同選手が2列目、もしくは3列目からボックス内に飛び込むことで攻撃に厚みを与えている。これまでの4試合で放ったシュートの数はチーム内でダントツ1位の12本で、同じく最多の2ゴールを記録している。

 中盤に司令塔タイプの選手がおらず、基本的にはサイドからのクロスしか攻撃パターンがない中で、オーストラリア代表の武器となっているのがセットプレーだ。身長198cm、体重101kgのCBハリー・サウターのフィジカルはアジアレベルでは反則級で、決勝トーナメント1回戦インドネシア代表戦でも1ゴールを記録。同選手はオーストラリア代表通算26試合で11ゴールとストライカー顔負けの数字を残しており、フィジカルはどのチーム相手にも有効だろう。

 一方の「守備」はこちらも開幕前と同じく「7」とした。今大会は4試合で2失点と、失点こそあまり喫していないが、“鉄壁“というほど守備が堅いチームではない。CBのサウターとキー・ロウルズのコンビは堅いが、チームとしてサイド攻撃を狙うため両SBの裏のスペースが空いているケースが多い。ここまでは相手のシュートミスに助けられている感も否めないだろう。

 全くもってベストなメンバーと言えない中で、ベスト4以上に進出するためにはグラハム・アーノルド監督の「采配」が欠かせない。その中でカギを握りそうなのが、従来は不動の左WGであるクレイグ・グッドウィンを“いつ“起用するかだ。このウインガーはグループリーグ第2戦と第3戦を負傷のため欠場し、インドネシア代表との決勝トーナメント1回戦で途中出場から復帰を果たした。すると、たった数分で2ゴールに絡む活躍を見せ、指揮官は今後も同選手をスーパーサブで起用する可能性を示唆している。この”ジョーカー“を先発に戻すのか、それとも途中から起用するのか、アーノルド監督の「采配」がオーストラリア代表の躍進に大きな影響を及ぼしそうだ。

4位:カタール代表
監督:ティンティン・マルケス
FIFAランキング:58位
戦力値平均:7.7(攻撃力9、守備力7、采配7)

 昨年12月に事実上の解任という形でカルロス・ケイロス監督が辞任したカタール代表は、ティンティン・マルケス新監督の下、急ピッチで代表チームを仕上げた。急造チームなため懸念事項もあったが、ベスト8までは危なげなく突破しており、前回大会王者らしい支配的なサッカーでこれまでの相手を圧倒してきた。

 アジアで最高レベルの「9」とした「攻撃」は、前回大会で日本代表も苦しめたアルモエズ・アリとアクラム・アフィーフを中心に抜群の破壊力を誇る。特に今大会で際立つのが背番号10を着用する後者の活躍だ。2列目でかなりの自由を与えられているアフィーフは代表と所属するアル・サッドで好連係を築くアリとの相性の良さで相手チームを粉砕。定期的にポジションを入れ替えながら空いたスペースに走り込み、並みのDFでは追いつけないスピーディーな攻撃であっという間にゴールを仕留めている。

 一方の「守備」は開幕前より1アップの「7」とした。中でも約2年前からカタール代表の正GKを務めるマシャアル・バルシャムは絶好調で、4試合を消化した時点でのセーブ率は驚異の92%を記録。2020年の東京オリンピックの走高跳の金メダリストを兄に持つ同選手は、自慢の身体能力を武器にスーパーセーブを連発している。

 そして昨年11月にカタールへと帰化したばかりのブラジル出身DFルーカス・メンデスの存在も忘れてはならない。かつてマルセイユで主軸を務めた経験もある同選手は、マルケス監督のアル・ワクラ時代の教え子で、今大会を前に100試合以上共闘した経験があった。このCBを守備の中心に据えたことで、チーム発足から日が浅くても最終ラインは組織的に動けている。彼のカタール代表入りはチームにとって大きくプラスに働いた。

 短期間でチームを作り上げることは難しいが、マルケス監督は教え子やかつては敵として見ていた選手の特徴を把握していた。そのためもあってかすぐに、自慢の攻撃陣を活かすチームの最適解を見出し、状況によっては4バックと3バックを使い分ける柔軟な「采配」でカタール代表を短期間で強化した。急造チームとは思えない高い完成度を誇る開催国は、2大会連続での栄冠にたどり着けるのだろうか。

3位:韓国代表
監督:ユルゲン・クリンスマン
FIFAランキング:23位
戦力値平均:7.7(攻撃力9、守備力8、采配6)

 プレミアリーグ得点王経験者であるソン・フンミンや、昨季セリエAでベストイレブンに名を連ねたキム・ミンジェら世界的なタレントを擁する韓国代表は、戦力的に見れば間違いなく優勝候補に名を連ねるだろう。しかし、蓋を開けるとグループリーグでヨルダン代表とマレーシア代表に引き分け、決勝トーナメント1回戦でもサウジアラビア代表とPK戦までもつれ込む展開に。記録上は3試合連続でのドローとなっている。

 「攻撃」の戦力値は開幕前と同じく「9」とした。先述したソン・フンミンを筆頭に、今季プレミアリーグで二桁ゴールを記録しているファン・ヒチャンやパリ・サンジェルマンでプレーするイ・ガンインら欧州トップリーグの第一線で活躍する選手が名を連ねている。ファン・インボムも好調で、オフェンス陣のタレント力は今大会屈指だろう。

 しかし、ファン・ヒチャンは左臀部の筋肉疲労のため開幕から2試合を欠場。直近の2試合で復帰を果たしたが、両足にテーピングを巻いており、まだベストなコンディションではなさそうだ。彼が前線にいるかどうかで決定力は大きく変わってくるため、先発で起用できないのはチームとして大きな痛手だ。

 一方の守備力は開幕前と比較すると1ダウンの「8」とした。キム・ミンジェという世界的なDFがいる中で、グループリーグの3試合ではベスト16以上のチームでは最多タイの6失点を献上している。最終ラインとボランチの間のスペースを使われて失点をするケースが多く、チームとしての守備が機能していない場面が多く見られた。

 グループリーグ最終戦でマレーシア代表に3失点を喫する緊急事態を受けて、ユルゲン・クリンスマン監督は自らの哲学を捨てたようだ。韓国代表の就任会見で「1-0で勝つことより4-3での勝利を好む」と発言していたドイツ人指揮官だが、サウジアラビア代表戦との決勝トーナメント1回戦では就任後初めて[3-4-2-1]のシステムを採用。守備時は5バックで守り、ワントップのソン・フンミンのスピードを活かす“堅守速攻”のスタイルに変えたのだ。

 このシステム変更が功を奏したのか、韓国代表の「守備」は大幅に改善された。相手の前線の選手に対しては3バックのうち誰か1人のCBがハードに潰すことで起点を作らせず、そこからカウンターを始める狙いも伺えた。一方で、選手の自由度が高い「攻撃」はほぼ機能せず、急造だった影響もあってかカウンターの精度がかなり低かった。結果的にサウジアラビア代表戦でゴールを奪ったのは、1点を追いかける展開で4バックに戻してからのパワープレーであり、チームとしての約束事が少ない分、選手の個人能力任せなのは変わっていない。

 攻撃的に戦うと守備が緩くなり、守備的に戦うと攻撃が機能しなくなる。クリンスマン監督の「采配」はかなり偏っており、現時点ではバランスの良い戦い方を見出せていない。ただ、崩壊していた守備を急造ながら再建したのは評価できる点だ。ベスト8以降はどちらの戦い方で勝負に出るのだろうか。

2位:イラン代表
監督:アミール・ガレノエイ
FIFAランキング:21位
戦力値平均:8.0(攻撃力9、守備力7、采配8)

 AFCアジアカップ2023に出場しているチームの中で最も成熟しているのはイラン代表で間違いないだろう。2022年に行われたカタールワールドカップとメンバーを比較しても、26人中19人が一緒で、長らく同じメンバーでの戦いを続けている。

 この継続路線が功を奏して、ワールドカップ後に発足したアミール・ガレノエイ体制では、15試合で13勝2分と無敗で今大会のベスト8まで進出している。新監督のもとでは、未だに彼らを倒したチームはない。

 そんな彼らの強みはアジア屈指のタレントが揃う「攻撃力」である。ポルトガルリーグで2度の得点王を獲得したメフディ・タレミを筆頭に、ロシアリーグで得点王経験のあるサルダル・アズムン、オランダ1部のエールディビジで得点王経験があるアリレザ・ジャハンバフシュらの破壊力は抜群だ。

 この強力FW陣に加えて中盤では強烈なミドルシュートが武器で、プレミアリーグのブレントフォードで活躍するサマン・ゴドスを起用。超攻撃的な選手を並べる“ファイヤーフォーメーション”で、グループリーグを勝ち上がった。クロスに対して何人もの選手がボックス内に飛び込むなど、かなり前掛かりな戦いをするため、開幕前と比較をすると、「攻撃」の戦力値を1アップの「9」とした。

 一方で「守備」の戦力値は「7」としている。かつてのイラン代表は堅守速攻のイメージが強かったが、現在は先述した通り持ち味である「攻撃」を全面に押し出すスタイルで戦っており、チームとして「守備」の比重は大きくない。ただ、シリア代表との決勝トーナメント1回戦のPK戦にて見事なシュートストップをみせたGKアリレザ・ベイランバンドを筆頭に経験豊富な守備陣がいるため、そう簡単に失点をすることはないだろう。

 優勝を目指すガレノエイ監督は合流直後のアズムンをグループリーグの第1戦と第2戦でスタメンから外すなど、決勝トーナメントを見据えた「采配」を振るって計画通りにことが進んでいたが、シリア戦の途中でそれが破綻してしまった。それがエースのタレミの退場である。81分に1枚目のイエローカードを貰っていた同選手は、後半アディショナルタイムに相手のカウンターを阻止するべく後ろから掴んで倒してしまい、この試合2度目の警告を受けてしまったのだ。

 これによりイラン代表はフィニッシャーとしても、チャンスメイカーとしても有能なエースを日本代表との準々決勝で失うことになる。奇しくもタレミは前回大会でも日本代表戦を出場停止処分のために欠場しており、2大会続けてイラン代表の命運をチームメイトに委ねることになった。この緊急事態をガレノエイ監督はどう乗り切るのだろうか。悲願の優勝に向けて、正念場が訪れている。

1位:日本代表
監督:森保一
FIFAランキング:17位
戦力値平均:9.3(攻撃力10、守備力9、采配8)

 ベスト8が揃った時点でも、日本代表がアジアカップ戦力値ランキングで1位に立った。これまでの4試合全てで失点を喫するなど、不安定な部分もあるが、戦力は他チームと比較をしても圧倒的だ。

 アジアで最高値となる「10」とした「攻撃」に関しては、最高の戦力が揃っている。今大会4試合で4ゴールと日本代表のエースとして存在感を示す上田綺世を頂点に、日本に留まらず、世界が注目する存在になりつつある久保建英や三笘薫ら強烈な個性を放つ2列目の選手のクオリティは抜群だ。三笘に関しては怪我が心配されたが、バーレーン代表戦で復帰。いきなり相手守備陣を得意のドリブルで翻弄してレベルの違いを見せつけた。

 彼ら以外にも初戦のベトナム代表戦で2ゴールを決めた南野拓実や攻守に効いている堂安律、抜群のシュートセンスを誇る中村敬斗らタレントが揃っており、彼らの持ち味が発揮しやすいポジションで起用すれば、誰が出てもある程度の結果は残せるだろう。

 「9」とした「守備」はディフェンスリーダーの冨安健洋と主将の遠藤航を中心に高いレベルにある。冨安は最終ラインを統率するのに欠かせない存在で、対人守備はもちろん、巧みなラインコントロールで相手FWを封じている。遠藤も広いカバーエリアで相手の攻撃を遅らせており、名門でプレーする彼らを軸に据えて強度の高い守備を保つことができている。

 史上最強とも言われる、今大会の日本代表の強みは選手層の厚さだろう。冨安を筆頭に代えの効かない選手もいるが、絶不調の右SB菅原由勢の代わりに抜擢された毎熊晟矢がハイパフォーマンスをみせるなど、誰かの穴は誰かが埋める好循環が生まれている。選手の市場価値が2位の韓国代表に1.6倍の差をつけた3億1840万ユーロ(約446億円)であることからも、多くの優秀な選手を抱えていることが想像できるだろう。

 間違いなくアジアNo.1の戦力を誇る日本代表だが、この充実した戦力で優勝を目指すには森保一監督の「采配」が欠かせない。カタールワールドカップでも後半にギアを上げるなど、時間帯で勝負する同監督は、怪我明けながら三笘という最高のジョーカーを手にした。復帰直後である彼のコンディション的に先発で起用するのは考えにくく、今大会に関してはワールドカップと同じく、相手が疲れてきたタイミングで日本の韋駄天を使うことになると予想する。

 しかし、森保監督の「采配」はグループリーグでの戦いを含めて1ダウンの「8」とした。その理由はハーフタイムまでの修正力の無さで、どんなに上手くいっていなくても、とりあえずハーフタイムまでは現状の形で戦うことが多い。それが裏目に出たのが第2戦のイラク戦で、ハーフタイムまで2点のビハインドを負ってしまった。

 最悪スコアレスでもPK戦の結果次第では次の戦いに進出できる決勝トーナメントでは、状況によって対戦相手が露骨に守備的に戦うこともあるだろう。そうした難しいケースで、森保監督が「采配」で試合を動かすことはできるだろうか。タレントは好守に揃っているだけに、指揮官に掛かる責任は重たい。

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