ダークホース!?アジアカップ2023戦力値ランキング9~16位。サッカー日本代表のライバルは何位【アジアカップ2023】

【写真:Getty Images】

 2024年1月12日にAFCアジアカップ2023がカタールで開幕する。出場する24ヶ国のうち、最も戦力が充実している代表チームはどこなのか。今回は戦力を3項目(攻撃、守備、采配)に分けて数値化し、9~16位をランキング形式で紹介する。

16位:中国代表
監督:アレクサンダル・ヤンコビッチ
FIFAランキング:79位
戦力値平均:5.3(攻撃力6、守備力5、采配5)

 かつてはアジアカップでも上位争いを演じていた中国代表だが、近年は長い低迷期を抜け出せずにいる。その象徴が今大会直前に行われた香港代表との一戦だろうか。1-2の敗戦を喫し、39年ぶりに同国代表に敗れる屈辱を味わった。

 現在は2018年から年代別代表を率いていたアレクサンダル・ヤンコビッチが昇格する形でA代表を指揮しているが、若手選手の突き上げは少ない。タジキスタン代表とのAFCアジアカップ2023の初戦も平均年齢は30.4歳とベテランに頼りっぱなしなのが現状だ。

 攻撃陣を牽引するのはエスパニョールでもプレー経験があるウー・レイ(上海海港)だ。昨季も国内リーグで18ゴールを決めて得点王に輝くなど32歳となった今も衰えていない。ブラジルから帰化したエウケソン(成都銭宝)が今大会のメンバーから外れた中で、この点取り屋にかかる期待は大きい。

 しかし、チームとしては深刻な得点力不足に陥っており、2023年に行われた11試合での複数得点は4試合のみ。アジア杯の初戦もFIFAランキングで大きく下回るタジキスタン代表相手にゴールを奪えなかった。そのため「攻撃力」の戦力値は「6」と平均値に留まった。

 一方の「守備力」も強みとは言えず、こちらの「戦力値」は「5」とした。今大会唯一の帰化選手であるティアス・ブラウニング(上海海港)を中心とした5バックで戦っているが、あっさりと失点することも多い。何より前線からの守備がハマっておらず、タジキスタン代表戦では倍となる20本ものシュートを打たれた。

 こうした現状を踏まえるとアレクサンダル・ヤンコビッチ監督の「采配」は「5」で妥当だろう。アジア杯の開幕直前に行われたオマーン代表戦と香港代表戦での連敗、そして大会初戦のタジキスタン代表戦のスコアレスドローを見る限り、チームの状態は最悪で、屈辱のグループステージ敗退の可能性もあるかもしれない。

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15位:タイ代表
監督:石井正忠
FIFAランキング:113位
戦力値平均:5.3(攻撃力5、守備力5、采配6)

 かつて鹿島アントラーズや大宮アルディージャを指揮した石井正忠監督が率いるタイ代表は、AFCアジアカップ2023に向けてベストメンバーを集めることができなかった。

 特に深刻なのが「攻撃力」で戦力値は「5」とした。ベストな布陣を組めれば2段階上の「7」の評価になってもおかしくはないが、かつてJリーグでもプレーしたティーラシンとチャナティップの2人の攻撃の柱が負傷離脱。エカニット・パンヤ(浦和レッズ)は所属クラブのプレシーズンに参加するために自ら代表を辞退し、大幅な戦力ダウンを余儀なくされた。

 本来のタイ代表は彼らの「攻撃力」が強みのチームで、「守備力」が高いわけではない。2023年は15試合で26失点を喫しており、戦力値は「5」とした。元日に行われた日本代表との試合でも、前半は無失点に抑えたが、後半だけで5失点を喫して大敗を喫した。この守備陣には一抹の不安が残る。

 この苦しい状況でキーマンとなりそうなのが昨年11月22日に監督に就任したばかりの石井監督だ。アレシャンドレ・ペルキング前監督のもとで振るわなかったタイ代表の再興を任された日本人指揮官は、ブリーラム・ユナイテッドを国内3冠に導いた経験があるなど、国内での評価も高い。

 今大会に向けてほぼ準備期間がない中で、結果を残せるかは未知数だが、2016年のクラブワールドカップで鹿島アントラーズを準優勝に導いた経験や、先述したブリーラム・ユナイテッドでカップ戦を制した経験があるなどトーナメントでの実績は豊富だ。主力が不在の中で、2大会連続の決勝トーナメント進出は彼の手腕に懸かっていると言ってよいだろう。

14位:ベトナム代表
監督:フィリップ・トルシエ
FIFAランキング:94位
戦力値平均:6.0(攻撃力6、守備力5、采配5)

 今大会の日本代表の初戦の相手となったベトナム代表の強さに驚いたファンも多いのではないだろうか。特に前半はかつて日本代表を率いたフィリップ・トルシエの策に苦しみ、一時はセットプレー2発で逆転を許した。

 今大会に臨むベトナム代表は全くもってベストメンバーではない。正GKのダン・バン・ラムや現代表で最多得点を記録しているエースのエン・ティエン・リンら各ポジションの主軸たちが怪我のために出場が叶わなかった。

 この危機的状況でプラスに働いたのが、トルシエ監督がU-23代表を兼任していたことである。日本代表戦でサプライズとなった19歳のグエン・ディン・バックや20歳のグエン・タイ・ソンら若手選手が離脱者の穴を埋めた。

 ベトナム代表は昨年10月に行った中国代表、ウズベキスタン代表、韓国代表との3連戦で無得点に終わるなど、爆発的な「攻撃力」があるチームではないが、それでも戦力値は「6」とした。それは日本代表戦でもみせたセットプレーの上手さだ。いずれも偶発的なものではなく、事前に用意していたものがハマった形であり、オープンプレーから崩すことが難しくてもゴールを奪えるのは彼らの魅力だと言えるだろう。

 一方の「守備力」は「5」とやや低くした。日本代表戦でも対ストライカーに対しては執拗なマークでほぼ完璧に対応していたが、2列目からの攻撃には苦戦。もともと格上との対戦で大量失点をすることも珍しくなく、本来であれば守備の要と正GKの不在でさらに崩壊してもおかしくはなかった。それでも今大会が代表デビューのチェコ出身GKグエン・フィリップがその穴を埋めており、戦力ダウンは最低限に留めている。

 そして日本代表を苦しめたトルシエ監督の「采配」は「5」とした。アジアカップ本番では日本代表相手にサプライズを起こしたが、昨年の戦いぶりには国内から多くの批判を寄せられていた。その理由の一つがメンバーを固定せず、方向性が見えない戦い方だったのだが、今大会で結果を残せば彼への評価も変わってくるだろう。

13位:バーレーン代表
監督:フアン・アントニオ・ピッツィ
FIFAランキング:86位
戦力値平均:6.0(攻撃力7、守備力5、采配6)

 バーレーン代表は2019年に行われた前回大会でベスト16入りを果たすなど着実に力をつけてきている。

 現在の代表チームを率いるのは現役時代にラ・リーガで得点王に輝いた経験があるフアン・アントニオ・ピッツィで、選手としてだけでなく監督としての経験も豊富だ。チリ代表を率いた2016年にはコパ・アメリカ優勝、サウジアラビア代表を率いた2018年には、ワールドカップで同国に24年ぶりの勝利をもたらしている。

 バーレーン代表の強みは戦力値で「7」とした「攻撃力」だろう。韓国代表とのAFCアジアカップ2023の初戦でもコンビネーションで崩しシーンが見られるなどタレントが豊富で、前線には海外でプレーする選手も多い。その中でも注目はアリ・マダン(アジュマーン/UAE)で、俊敏性とテクニックを活かしたドリブルでサイドからチャンスを作るだけでなく、自らゴールをこじ開ける個人技の持ち主だ。

 ヨーロッパで初めてプレーしたバーレーン人選手として知られるストライカーのユスフ(ムラダー・ボレスラフ/チェコ)は、194cmという高身長を活かすためにスーパーサブとして起用されており、ベンチにも強力なカードを持っている。

 一方の守備は強みとは言えず、「守備力」の戦力値は「5」とした。相手が格下であれば支配的なサッカーができるが、格上相手となれば守り切るディフェンス力はない。致命的なのがDF陣のボールウォッチャー癖で、サイドから揺さぶられると簡単に失点を喫してしまうケースが多い。

 先述したフアン・アントニオ・ピッツィ監督の「采配」は平均値である「6」とした。これまでの実績は素晴らしいが、格上相手への具体的なプランが見えず、あっさりと負けてしまう試合が多い。グループステージを突破するには対強豪への対策が重要で、それが発揮できなければ難しい大会となってしまうかもしれない。

12位:シリア代表
監督:エクトル・クーペル
FIFAランキング:91位
戦力値平均:6.0(攻撃力6、守備力6、采配6)

 シリア代表は昨年の11月に行われたワールドカップ二次予選で日本代表に0-5の完敗を喫した。それからAFCアジアカップ2023開幕まで2ヶ月しか経過していないが、この短期間でエクトル・クーペル監督はチームを大きく変革した。

 今大会に向けての大きなサプライズとなったのが主将を務めるほど代表の主軸だったオマル・アル=ソーマ(アル・アラビ/カタール)の選外だ。クーペル監督のこの決断には多くの批判が集まった。

 一方でアルゼンチン人指揮官は自らのコネクションを活かして多くの選手をシリア代表に帰化させている。今大会に向けては3人のアルゼンチン出身の選手が代表メンバーに名を連ね、[4-4-2]の中盤4枚のうち3人が彼らで形成される。その中でも注目を集めているのがジャリル・エリアス(ジョホール/マレーシア)だ。昨年末まで所属していたサン・ロレンソで副主将を務めていたほどの実力者で、今大会に向けて新たにシリア代表に加わったばかりの即戦力である。

 エースのアル=ソーマに代わる得点源として期待されているのが、コロンビア出身のパブロ・サブバッグ(アリアンサ・リマ/ペルー)である。エリアスと同じように今大会に向けて自らのルーツであるシリア代表を選択した形だ。一時は代表チームから追放されていたオマル・フリービーン(アル・ワフダ/UAE)も復帰を果たし、アル=ソーマがいなくても強力な攻撃陣を組むことに成功。そのため「攻撃力」の戦力値はエース不在でも「6」とした。

 そしてクーペル監督はDFにも新たな選手を帰化させた。今大会に向けて初招集されたアイハム・ウスウ(ヘッケン/スウェーデン)は、早速ウズベキスタン代表戦でスタメン出場を果たし、無失点に貢献した。スウェーデン出身の同選手はU-21代表まで主将を務めるほど期待をされていた存在で、2022年には22歳の若さでA代表デビューを飾っていた。こちらも即戦力を加えたことで、「守備力」の戦力値も「6」としている

 かつてバレンシアをUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝に導いた68歳の名将は、選手の起用が流動的なことで知られている。今大会に向けて多くの選手を帰化させたことで、選手層にも厚みが増した。現状では「6」としたが、彼の「采配」次第ではサプライズを起こす可能性もあるかもしれない。

11位:オマーン代表
監督:ブランコ・イバンコビッチ
FIFAランキング:74位
戦力値平均:6.3(攻撃力6、守備力7、采配7)

 オマーン代表は2020年1月から率いるブランコ・イバンコビッチ監督のもとで強化に成功してきた。このクロアチア人指揮官は、2010年代の後半までFIFAランキング100位以下だった同国代表を現在は74位まで押し上げている。

 特に2023年はオマーン代表にとって充実した1年だった。1月に開催された中東8ヶ国で行われるガルフカップではカタール代表やサウジアラビア代表を差し置いて準優勝。16試合で9勝2分4敗と高い勝率を誇った。

 この躍進の原動力となっているのが戦力値で「7」とした堅い「守備力」で、複数失点を喫することは稀だ。今大会直前に行われた中国代表とUAE代表の2連戦はいずれも無失点で勝利し、特に1-0で勝利したFIFAランキングでは格上のUAE代表戦は彼らの真骨頂だと言えるだろう。

 一方の「攻撃力」は「5」と彼らの強みではない。ただ、得点力不足を補うだけの堅守があるため大きな懸念点とはなっておらず、「1点差で勝ちきる力」こそオマーン代表の強さだ。先制点を手にすることが出来れば、割り切った戦いもできるため、トーナメントで強さを発揮しやすいチームとなっている。

 その中で欠かせないのが「7」としたブランコ・イバンコビッチ監督の「采配」だ。途中出場の選手が決勝点を決めることも少なくなく、状況に応じて最適な手を打ってくる。他国と比較をすると派手なタレントはいないが、就任4年目を迎えた指揮官のもとで成熟したチームに成長。格下、格上関係なく相手を苦しめるサッカーができるため、グループステージで対戦する強豪サウジアラビア代表も侮れない相手になるだろう。

10位:ウズベキスタン代表
監督:スレチコ・カタネッツ
FIFAランキング:68位
戦力値平均:6.3攻撃力7、守備力6、采配6)

 ウズベキスタン代表を率いるのは、前回大会でイラク代表を史上初の決勝トーナメント進出に導いたスレチコ・カタネッツである。現役時代はユーゴスラビア代表にて、イビチャ・オシム監督のもとでプレーした経験を持つ。

 カスタネッツのもとでウズベキスタン代表はアジア屈指のチームへと成長しており、昨年9月には強豪メキシコ代表と3-3の打ち合いを披露。ロシア代表やベネズエラ代表など格上のチームとも五分の戦いをみせ、昨年11月に行われたワールドカップ二次予選ではイラン代表と2-2の引き分けの試合を演じた。

 この勢いのままAFCアジアカップ2023の躍進も期待されたウズベキスタン代表だが、大会1ヶ月前に激震が走った。エースで同国史上最多得点記録を保持するエルドル・ショムロドフ(カリアリ/イタリア)が12月のリーグ戦で負傷してしまった。結果的にショムロドフは大会に間に合わず、エース不在で今大会に臨まなければいけなくなってしまった。

 エース不在の影響で本来は「8」としたかった「攻撃力」を1ダウンの「7」とした。この危機的状況で活躍が期待されているのが、昨年行われたU-20アジアカップでウズベキスタン代表を優勝に導き、MVPを獲得したアボスベク・ファイズラエフ(CSKAモスクワ/ロシア)だ。2023年夏に移籍したロシア屈指の強豪でも主力に定着しており、自慢のドリブル突破から多くのチャンスを演出することが期待されている。

 一方の「守備力」と「采配」は平均値の「6」とした。複数失点をすることは稀だが、堅守というほど守備が持ち味ではない。格下シリア代表との今大会初戦では、懸念していたエ-ス不在の影響が出て無得点に終わった。勝ち上がるためにはカスタネッツ監督の「采配」と、オストン・ウルノフ(無所属)やイゴール・セルゲエフ(パトゥム・ユナイテッド)ら代役ストライカーの活躍が必須だろう。

9位:ヨルダン代表
監督:フセイン・アモータ
FIFAランキング:87位
戦力値平均:6.3(攻撃力7、守備力6、采配6)

 ヨルダン代表は近年力をつけているチームの一つだ。ワールドカップ出場こそないが、アジアカップでは直近3大会のうち2度ベスト16以上に進出している。

 その中でも「7」とした攻撃力はヨルダン代表の最大の武器だ。背番号10を着用するムーサ・アル=ターマリ(モンペリエ/フランス)はヨルダン人史上初めてリーグ・アンのクラブと契約した選手で、不動のレギュラーとしてプレーしている。相手守備陣を単独で破壊できるドリブル突破とカットインシュートのクオリティはリーグ・アンでもトップクラスで、今大会屈指のウインガーと言えるだろう。今大会開幕戦のマレーシア戦では2ゴールを決めて実力を見せつけた。

 一方で「6」とした「守備」には課題を残している。2023年9月にフセイン・アモータ監督が就任してから初の無失点となったのが、先述したマレーシア戦で、それまでは毎試合のように失点を繰り返した。0-6で敗れた初陣のノルウェー代表戦と比較をすると失点数は減っているが、1月9日に行われた日本代表との強化試合でも1-6で敗れている。

 あまりにも失点が多いためアモータ監督の手腕には疑問が持たれている。就任から7試合未勝利で、AFCアジアカップ2023初戦のマレーシア戦が就任後初勝利だった。アル=ターマリというヨルダン史上最高のタレントがいるため、2011年大会以来のベスト8進出も夢ではないが、それはモロッコ人指揮官の「采配」に懸かっているだろう。

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