優勝候補はどこだ!? アジアカップ2023戦力値ランキング1~8位。サッカー日本代表の順位は?【アジアカップ2023】

【写真:Getty Images】

 現地時間2024年1月12日にAFCアジアカップ2023がカタールで開幕する。出場する24ヶ国のうち、最も戦力が充実している代表チームはどこなのか。今回は戦力を3項目(攻撃、守備、采配)に分けて数値化し、ランキング形式で紹介する。

8位:オーストラリア代表
監督:グラハム・アーノルド
FIFAランキング:25位
戦力値平均:6.7(攻撃力6、守備力7、采配6)

 2022年に行われたカタールワールドカップでベスト16入りを果たしたオーストラリア代表は、18年夏に監督に就任したグラハム・アーノルド監督が引き続き指揮を執っている。しかし、当時と比較をして上積みができているかどうかを問われれば、答えは「No」だろう。

 特に影響が大きいのが中盤で、功労者たちが相次いで30代前半の若さで代表を離れた。一昨年のワールドカップも不動のレギュラーでプレーしていたアーロン・ムーイや元セルティックMFトム・ロギッチが相次いで現役を引退。その中でも“青天の霹靂”だったのが、昨年12月20日に発表されたマッシモ・ルオンゴ(イプスウィッチ・タウン)の代表引退だ。

 母国開催のAFCアジアカップ2015で大会MVPを受賞していた同選手は、所属クラブでの好調ぶりから昨年10月に約4年半ぶりに代表復帰を果たして試合にも出場していた。しかし、プレミアリーグ昇格争い中のイプスウィッチに集中するため代表引退を決断。多くの中盤の選手が去った中でルオンゴには救世主的な役割が期待されていたが、そんな彼もオーストラリア代表から離れてしまった。

 こうした背景もあって大幅な戦力ダウンは避けられない状況に。中でも攻撃力は「6」と、ハリー・キューウェルやティム・ケイヒルがいた時代と比較をすると圧倒的にタレントが不足している。今大会は怪我にも悩まされており、マシュー・レッキー(メルボルン・シティ)とアワー・メイビル(グラスホッパー)、ジェイミー・マクラーレン(メルボルン・シティ)らが離脱中。そのため前線はかなりの経験不足で、計9人の出場試合数を見てみると、WGとストライカーのうち5人が1桁、もしくは未出場の選手たちで構成されている。今大会で背番号10を着用するクシニ・イェンギ(ポーツマス)も2試合の経験しかない。

 それでも「攻撃力」を「6」としたのは圧倒的なセットプレーの強さから。身長198cm、体重101kgのCBハリー・サウター(レスター)のフィジカルはアジアレベルでは反則級で、直近のワールドカップアジア二次予選でも2試合連続ゴールを記録。同選手はオーストラリア代表通算22試合で10ゴールと誰よりもハイペースで得点を重ねており、今大会のFWでは最も経験があるミッチェル・デューク(FC町田ゼルビア)と並ぶ得点源となっている。

 「守備力」はセットプレーでも輝くサウターを中心に堅く、ワールドカップ後の9試合で8失点と、「7」の戦力値に相応しい堅守を誇る。しかし、不安材料なのがGKだ。オーストラリア代表通算85試合の出場を誇るマシュー・ライアン(AZ)が本来の正GKだが、同選手は所属クラブでのトレーニングで頬骨を骨折してから代表に合流。現在は練習でフルメニューをこなすほど回復をしているそうだが、アーノルド監督は初戦のインド戦の出場を「微妙」と発言している。代役が通算2試合と1試合出場のジョー・ガウチ(アデレード・ユナイテッド)とローレンス・トーマス(ウェスタン・シドニー)では心もとない。

 相次ぐ引退と怪我人の影響で、ベストな陣容を揃えることができていないオーストラリア代表が勝ち上がるにはアーノルド監督の「采配」に懸けるしかない。カタールワールドカップでは堅守速攻のスタイルでチュニジア代表とデンマーク代表に1-0で勝利したが、ブロックを構えてくる格下との試合もあるアジアカップでこの戦いがどこまで通用するかは未知数だ。特にカウンターで生きるレッキーとメイビルの不在の影響は大きく、苦戦を強いられても不思議ではない。

<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/13/post527255/" target="_blank" rel="noopener">優勝候補はどこだ!? アジアカップ2023戦力値ランキング1~8位</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/13/post527255/8/" target="_blank" rel="noopener">優勝候補はどこだ!? アジアカップ2023戦力値ランキング1位</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/13/post527255/7/" target="_blank" rel="noopener">優勝候補はどこだ!? アジアカップ2023戦力値ランキング2位</a>

7位:イラク代表
監督:ヘスス・カサス
FIFAランキング:63位
戦力値平均:6.7(攻撃力7、守備力6、采配7)

 AFCアジアカップ2023で日本代表と同組のグループDに属するイラク代表は着実に力をつけている。その原動力となっているのが、2022年11月から監督を務めるヘスス・カサスの存在だ。同氏は長くバルセロナでアナリストを務めた経験から分析力が高いことで知られ、これが評価されてルイス・エンリケがスペイン代表監督に就任した際にはアシスタントコーチとして招かれた実績がある。

 このスペイン人指揮官のもとでイラク代表は、昨年1月に開催された中東8ヶ国で行われるガルフカップを制覇。2022年のカタールワールドカップにも出場したサウジアラビアやカタールなどの強豪国を倒しての優勝であり、新体制では14試合で9勝1分4敗と高い勝率を誇っている。

 躍進に繋がっているのが「7」と高評価の「攻撃力」だ。昨年1年間で6ゴールを決めたエースのアイマン・フサイン(アル・クウワ・アル・ジャウウィーヤ)やフットボールリーグ2(イングランド4部相当)で得点王争いを演じている21歳の若武者アリ・アル=ハマディ(AFCウィンブルドン)を筆頭に、ゴール前で仕事ができるストライカーのクオリティが高い。

 彼らに加えて、昨年10月にイラク代表入りを決断したスウェーデン生まれのダニーロ・アル・サイード(サンデフィヨルド)の存在は大きいものになりそうだ。左WGが本職の同選手は、2023シーズンにエリテセリエン(ノルウェー1部)で11得点2アシストという好成績を残している。WGの火力に課題を残していたポジションに現れた“新戦力“のおかげで、さらに強力な攻撃陣を形成することに成功した。

 一方で「攻撃力」より低い「6」となった「守備力」にはわずかな懸念がある。PKストップも得意な主将のGKジャラル・ハッサン(アル・ザウラー)は非常に安定しているが、CBには一抹の不安があり、本職左SBのアリ・アドナン(メス・ラフサンジャーン)とレビン・スラカ(ブロマポイカルナ)のコンビは昨年10月に組み始めたばかり。現体制となってからの1試合最多失点は2と守備が弱点のチームではないが、バックラインの完成度には多少の不安が残る。

 代表チームを成長させているカサス監督の采配は「7」と、こちらも評価が高い。基本戦術は[4-2-3-1]だが、この形にこだわることなく、早い時間帯から先手の交代策を打ってくるのが特徴だ。1点が欲しい場面ではストライカー2人を投入する2トップ、リード時はCBを1枚追加して迷わず5バックにするなど臨機応変なアイデアを持っている。昨年のガルフカップは彼の采配が優勝に直結するほど効果的だった。

 現体制で3得点3アシストと多くのゴールに絡んでいた中盤のキーマンであるアムジャド・アトワン(ザーホー)の欠場は大きな痛手だが、現体制で先制した試合での勝率はPK戦も含めると100%とチームとして勝ち方を知っている。グループD第2節で対戦する日本代表も侮れない相手になるだろう。

6位:UAE代表
監督:パウロ・ベント
FIFAランキング:64位
戦力値平均:7.0(攻撃力6、守備力8、采配7)

 2022年2月から指揮を執ったロドルフォ・アルアバレーナ監督のもとで、UAE代表は4勝3分7敗と大きく負け越していた。中でも酷かったのが昨年1月に開催された中東8ヶ国で行われるガルフカップで、バーレーン代表とクウェート代表に敗れたことでまさかのグループステージ敗退を喫した。

 この不甲斐ない結果を受けてUAEサッカー協会は監督交代を試み、2023年6月にカタールワールドカップで韓国代表を率いたパウロ・ベントを新監督に招聘。直近の1月6日に行われたオマーン戦こそ敗れたが、それまでの6試合で全勝とUAE代表は監督交代で生まれ変わった。

 この躍進の原動力となっているのが戦力値で「8」とした高い「守備力」だ。ベント政権での7試合では3失点しか喫しておらず、複数失点のケースがない。この堅守に欠かせないのが「共有力」である。最終ラインの平均年齢は22歳から26歳で構成されており、年代別代表から一緒にプレーしてきた選手たちがそのままA代表の主力に定着している。日本代表や韓国代表のように欧州の最前線でプレーしている選手はいないが、何年も同じメンバーで戦ってきたからこそ生まれる「連係」で堅い守備を築き上げた。

 限られた戦力で最高の働きをみせるディフェンスに対して、「攻撃力」の戦力値は「6」とした。UAE代表の最多得点記録(85ゴール)保持者である33歳のベテランFWアリ・マブフート(アル・ジャジーラ)は健在で、今季もリーグ戦10試合で8ゴール5アシストと大活躍中だ。それでも平均値に留まったのはタレントを持て余しているからだ。

 2020年にブラジルから帰化したファビオ・リマ(アル・ワスル)はUAE国内でマブフートと双璧となっている。現在8シーズン連続でリーグ戦2桁ゴールを達成中で、市場価値はUAE国籍の選手でダントツ1位の600万ユーロ(約8.4億円)を記録。しかし、このリーグ屈指のアタッカーは現在3試合連続でベンチと出番がなく、ベント監督の中で序列が低くなってしまっている。

 現状ではリマを自らの戦術にフィットさせることができていないポルトガル人指揮官だが、「采配」は「7」と高く評価した。先述した通り、FIFAランキングで下回るチームに敗れるなど近年苦しんでいたUAE代表を蘇らせた手腕はさすがで、何よりも前職の韓国代表での実績が優れた監督であることを証明している。ベントは頻繁に監督交代することで知られる韓国代表で、史上初めてワールドカップからワールドカップまでの4年間を務めあげた。これは快挙に等しく、UAE代表でも同じように長期的な観点から強化が期待されている。その中で最初に迎える国際大会で、ベント監督率いるチームは目に見える結果を残せるだろうか。

5位:カタール代表
監督:ティンティン・マルケス
FIFAランキング:58位
戦力値平均:7.3(攻撃力9、守備力6、采配7)

 開催国カタールは2022年に行われた自国開催でのワールドカップにて屈辱のグループステージ敗退を喫した。AFCアジアカップ2019では日本代表を下して優勝という最高の結果を残していただけに、同国史上初のワールドカップは悔しいものになったに違いない。

 その後カタールはブルーノ・ピニェイロ暫定政権を経て、23年2月にポルトガル代表とイラン代表で計3回のワールドカップ出場経験があるカルロス・ケイロスを新監督に招聘している。しかし、イラン代表に0-4のショッキングな敗戦を喫するなど結果を残せず、ワールドカップのアジア二次予選が始まった直後の昨年12月に事実上の解任という形でカタール代表監督の職を辞した。

 急転直下の監督交代となったため、後任に就任したティンティン・マルケスは、ほぼぶっつけ本番で自国開催のAFCアジアカップ2023に臨むこととなった。その中で「采配」を「7」としたのは、彼が2018年1月から2023年12月までアル・ワクラの監督を務めていた経験からくるものだ。カタール代表の大半の選手をこれまで「敵」として見ていたスペイン人指揮官は、選手の個性を理解している。準備期間はほぼないため、自らの戦術的な色を濃く出すというよりは、選手の能力が最大限に発揮されるシンプルなものになると予想する。

 その中でチーム最大の武器となるのがアジアトップクラスの「攻撃力」だ。今大会屈指と予想し、戦力値は全チームで2位タイの「9」をつけている。中でも注目なのが前回大会の得点王アルモエズ・アリ(アル・ドゥハイル)である。27歳にしてカタール代表の最多得点記録を更新し続ける男は、2019年大会の決勝で日本代表を大いに苦しめた。抜群の身体能力で強引にゴールを決めきる力を持っている彼を筆頭に、2019年のアジア年間最優秀選手に輝いたアクラム・アフィーフ(アル・サッド)ら好タレントがひしめく。

 一方「守備力」の戦力値は「6」と平均的なものとした。マルケス新監督がどれだけ守備を立て直すことができるかどうかは未知数だが、2023年に行われた17試合で無失点が5試合しかなかったことを踏まえると、決してディフェンスが得意なチームとは言えないだろう。その中でカギを握りそうなのが、昨年11月にカタールへと帰化したばかりのブラジル出身DFルーカス・メンデス(アル・ワクラ)である。かつて名門マルセイユで主力を務めた時期もある同選手は、マルケス監督のもとで100試合以上プレーしたことがある教え子で、弱点の守備を補う存在として今大会のキーマンとなる可能性が高い。

 カタール代表はマルケス監督就任後にカンボジア代表、ヨルダン代表と強化試合を行ったが、いずれも非公開での試合だったため具体的にどのようなサッカーで戦うかは未知数だ。相手からすれば対策がしづらい状況の中で、アジアカップ2連覇を成し遂げることができるのだろうか。

4位:サウジアラビア代表
監督:ロベルト・マンチーニ
FIFAランキング:56位
戦力値平均:7.7(攻撃力8、守備力7、采配8)

 近年、サッカー界で最も話題を集めているアジアの国はサウジアラビアではないだろうか。

 2022年のカタールワールドカップで後に優勝するアルゼンチン代表を倒したかと思えば、2023年夏にはクリスティアーノ・ロナウドやネイマール、カリム・ベンゼマ、サディオ・マネらスター選手たちが続々と国内リーグへと移籍。しまいには、空席だった代表監督の座に2021年にイタリア代表をユーロ(欧州選手権)王者に導いたロベルト・マンチーニを招聘した。

 激動の数年間を歩んでいるサウジアラビアだが、意外にも代表チームの強化は進んでいない。むしろ、スター選手たちの続々の到来により、サウジアラビア代表の選手たちの出場機会が損なわれる事態に発展している。カタールワールドカップで正GKを務めたムハンマド・アル=オワイス(アル・ヒラル)と2番手のムハンマド・アル=ルバイエ(アル・アハリ)はそれぞれモロッコ代表GKボノとセネガル代表GKエドゥアール・メンディにポジションを奪われた。代表の主将を務めていたサルマン・アル=ファラジュ(アル・ヒラル)までもそのあおりを受けて、セルビア代表MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチとポルトガル代表MFルベン・ネベスに出場機会を譲っている。

 ロベルト・マンチーニ監督は出場機会を得られていないかつての主力たちを今大会のメンバーから外した。中にはセルビア代表FWアレクサンダル・ミトロビッチにポジションを奪われたFWサレー・アル・シェフリ(アル・ヒラル)のように駒不足から、出場機会がほとんどなくても呼ばざるを得ない選手たちもいる。そのためカタールワールドカップ時と比較をすると、戦力はダウンしたと言って良いだろう。

 そんな状況でも戦力値の「攻撃力」は「8」と高い数値を維持することができている。カタールワールドカップでアルゼンチン代表相手に衝撃的なカットインシュートを沈めたサレム・アル・ドサリ(アル・ヒラル)は、サウジアラビア人選手ではトップの9ゴールを決めており、所属クラブと代表チームの両方で得点を量産中だ。サウジアラビア代表で最も市場価値が高い(400万ユーロ/約5.6億円)のフィラス・アル=ブライカン(アル・アハリ)はブラジル代表FWロベルト・フィルミーノからポジションを奪い返し、その勢いのままサウジアラビア代表でもスタメンに定着しようとしている。

 一方のディフェンスは2人のGKが今大会のメンバーを外れた以外は、ほとんどカタールワールドカップの時と顔ぶれは変わらない。しかし、2023年の強化試合は1分5敗と散々な結果に終わり、5試合で複数失点を喫するなど、戦力値で「7」とした「守備力」には怪しさが残る。11月のワールドカップアジア二次予選では格下のパキスタン代表とヨルダン代表相手に2試合連続で完封勝利を収めたが、戦力が拮抗している、もしくは格上相手との対戦となると守備でボロが出るかもしれない。

 マンチーニは本来の代表のベストメンバーを使えないという困難な状況で今大会に挑まなければいけない。ユーロという国際大会でのトーナメントで優勝した実績から「采配」を「8」としたが、実際にベンチメンバーを含めたスカッドがどこまで使えるかは未知数な部分が多い。当初、今大会に向けて招集したメンバーの中でも何人か怪我人が出るなど戦力的に厳しく、逆にこの状況でも結果を残すとなれば、マンチーニの評価はさらに高まることだろう。

3位:イラン代表
監督:アミール・ガレノエイ
FIFAランキング:21位
戦力値平均:7.7(攻撃力8、守備力7、采配8)

 イラン代表はカルロス・ケイロス監督が率いた2022年のカタールワールドカップでウェールズ代表に1勝するも、結果的にグループステージ敗退となった。同大会限りでポルトガル人指揮官はチームを去り、後任にはアミール・ガレノエイが就任した。

 およそ12年ぶりの自国出身の監督のもとでも代表メンバーは大きく変わっておらず、基本的には継続路線となっている。実際にカタールワールドカップと今回のAFCアジアカップ2023のメンバーを比較してみても26人中19人が一緒だ。そのため新体制発足時からチームとしての完成度は高く、就任から11勝2分とワールドカップから唯一無敗でアジアカップを迎える。

 そんなイラン代表の強みはタレントが揃うアジア屈指の攻撃陣で、戦力値は「8」とした。メフディ・タレミ(ポルト)、サルダル・アズムン(ローマ)、アリレザ・ジャハンバフシュ(フェイエノールト)はそれぞれポルトガル、ロシア、オランダの1部リーグで得点王を獲得した経験がある、彼ら3人とも今季は所属クラブであまりゴールを決めることができていないが、タレミとアズムンは代表で絶好調。前者は2023年の11試合で12得点3アシスト、後者は7試合で8得点4アシストと両者ともに出場した試合数より多いペースでゴールを量産している。

 一方の「守備力」の戦力値はオフェンスより低い「7」としている。かつてのイラン代表は堅守が印象強く、前回大会も準決勝で日本代表に0-3で敗れこそしたが、それまでの5試合で無失点とディフェンスが強みのチームだった。現在も守護神アリレザ・ベイランバンド(ペルセポリス)を筆頭に当時と変わらないメンバーが名を連ねているが、格下にもあっさりと失点するケースが目立つ。しかし、複数失点は稀で、致命的な弱点とはなっていないが、現状は「守備力」が強みとは言えない。

「采配」を「8」としたガレノエイ監督の手腕は見事だ。タレントがいる攻撃陣を活かすサッカーができており、それがワールドカップ後からの13試合連続での無敗に繋がっている。前評判が高かった前回大会に続き、今大会も優勝候補の一角として期待してよいだろう。

2位:韓国代表
監督:ユルゲン・クリンスマン
FIFAランキング:23位
戦力値平均:8.0(攻撃力9、守備力9、采配6)

 韓国代表は2022年に行われたカタールワールドカップでグループステージを突破。決勝トーナメント1回戦でブラジル代表に1-4の大敗を喫したが、2010年の南アフリカ大会以来のベスト16入りを果たした。

 この快挙に導いたパウロ・ベント監督は大会終了後に退任し、後任にはドイツ代表とアメリカ合衆国代表を率いた経験のあるユルゲン・クリンスマンが就任。「アジアカップで優勝したい」と明言したドイツ人指揮官だが、就任から5試合連続で未勝利と結果を残せず、国内メディアから強い批判を浴びた。その後は6連勝と立て直しているが、完全にネガティブな意見を取り除けているわけではない。

 韓国メディアがこれだけ監督に対して批判をするのは、選手に対する絶対的な信頼への裏返しである。「攻撃力」と「守備力」の戦力値をそれぞれ「9」としたようにタレントはアジア随一だ。まずは攻撃陣に注目すると、プレミアリーグでアジア人史上初めて100ゴールを達成したソン・フンミン(トッテナム)を筆頭にファン・ヒチャン(ウルブス)やイ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)ら欧州トップリーグの第一線で活躍する選手が名を連ねている。

 しかし、この「攻撃力」の戦力値「9」が本番で発揮できるかどうかわからない。今季プレミアリーグで10ゴールを決めているファン・ヒチャンが左臀部の筋肉疲労のため開幕から数試合を欠場する恐れがあり、背番号10のイ・ジェソン(マインツ)も10日のトレーニングで打撲の怪我を負った。クリンスマン監督のチームは強力FW陣に自由を与えることで攻撃を成立させており、仮にこの主力2選手のコンディションが整わないとなれば、主力と控えの能力に差がある分、攻撃の質も落ちる。そのため「9」ほどの「攻撃力」が発揮されないというケースも大にして考えられる。

 一方の守備はアジア史上最高のCBという呼び声もあるキム・ミンジェ(バイエルン・ミュンヘン)を軸に、Kリーグ王者のCBコンビで元Jリーガーのチョン・スンヒョン(蔚山現代)やキム・ヨングォン(蔚山現代)の両名も健在だ。特にキム・ミンジェはフィジカルと守備の技術がアジアの中では頭一つ抜けており、1人でピンチの芽を摘むことができるクオリティの持ち主だ。その市場価値はアジア人選手で日本代表MF久保建英(レアル・ソシエダ)に並んで1位タイの6000万ユーロ(約84億円)と実力は折り紙つきだ。

 アジアでもトップクラスの戦力を抱えながら今回のランキングで2位に留まったのは、「6」としたクリンスマン監督の「采配」で多くの不安を抱えているためだ。このドイツ人指揮官はアメリカ合衆国を率いた2014年のブラジルワールドカップでベスト16に導いたが、これは戦術的に優れていたというよりも、自らのネームバリューを駆使して二重国籍の選手を軒並み代表に連れて来たマネジメント面での活躍だった。ピッチ上において、攻撃面に関しては放任主義なため、優勝できるかどうかは選手たちのコンディションに懸かっている。

1位:日本代表
監督:森保一
FIFAランキング:17位
戦力値平均:9.3(攻撃力10、守備力9、采配9)

 日本代表がアジアカップ戦力値ランキングで1位に立った。英ブックメーカー『William Hill』での優勝オッズは1位の3倍。市場価値でも2位の韓国代表に1.6倍の差をつけた3億1840万ユーロ(約446億円)でダントツトップと、AFCアジアカップ2023に出場する他国と比較をしても群を抜いた戦力を持っている。

 ただ、個人の能力が高いだけでなく選手層に厚みがあるのも特徴で、今回の代表メンバー26名のうち21名が海外クラブに所属をしている。ベスト16入りを果たしたカタールワールドカップの時と比較をしても現在のメンバーの方が強力だと言い切れるだろう。

 それは直近の成績に表れており、日本代表はワールドカップ後の11試合で9勝1分1敗と好成績を残している。それも現在は怒涛の9連勝中で、その中にはドイツ代表やトルコ代表、チュニジア代表などワールドカップやユーロ(欧州選手権)に出場するクラスの相手がいたが、圧倒した試合をみせることができている。

 その原動力となっているのが、アジアで最高値となる「10」をつけた「攻撃力」だ。特に二列目のメンバーは豪華で、ラ・リーガで圧巻の活躍を披露する久保建英(レアル・ソシエダ)や三笘薫(ブライトン)、伊東純也(スタッド・ランス)、堂安律(フライブルク)、南野拓実(モナコ)ら誰をスタメンに起用しても遜色ない選手たちが集まった。

「守備力」も「9」と、こちらも今回のランキングでトップタイに立った。冨安健洋(アーセナル)や板倉滉(ボルシア・メンヒェングラートバッハ)、遠藤航(リバプール)、守田英正(スポルティングCP)と確固たるセンターラインが確立されており、欧州で評価を高める町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)らのような実力者をサブに置けるのは心強い。

 懸念点があるとすれば、怪我明け、もしくは現在進行形で離脱をしている選手が多いことだ。三笘や久保、冨安、板倉、伊藤洋輝(シュトゥットガルト)、旗手怜央(セルティック)らのコンディションが万全であればダントツで優勝候補だろうが、勝ち進めば進むほど、彼らがどの程度プレーできるかによって結果が変わってきそうだ。

 優勝を目指す上で重要となるのが、森保一監督のマネジメントと「采配」で、直近は現戦力の長所を活かすシステムで戦うことができているため、戦力値は「9」とした。怪我明けの選手が多いため、誰をどの試合で、どの状況で起用するかはトーナメントを勝ち上がる上で欠かせない。また累積警告のことも考えた采配を下す必要がある。日本代表が2011年大会以来のアジア王者に返り咲くには、森保監督の「采配」が欠かせない要素となるだろう。

<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/01/post526100/" target="_blank" rel="noopener">英国人が見たサッカー日本代表対タイ戦「佐野海舟は…」「伊藤涼太郎らしい…」「日本のランパード!」</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/japan-schedule-samurai-blue/" target="_blank" rel="noopener">日本代表、アジアカップのTV放送・配信予定・キックオフ時間は?</a>
<a href="https://www.footballchannel.jp/2024/01/01/post526165/" target="_blank" rel="noopener">サッカー日本代表、予想スタメン&フォーメーション。アジアカップの最新序列&ベストメンバーを考察</a>

ジャンルで探す