「王道型としては腰引け」サッカー日本代表の勝利が参考にならない“例外”である理由【西部の目/アジアカップ2023】

【写真:2024 Asian Football Confederation (AFC)】

 サッカー日本代表は24日、AFCアジアカップカタール2023グループステージ第3節でインドネシア代表と対戦し、3-1で勝利した。前節のショックを払拭する勝利だったが、日本代表の課題が解消されたとは言い切れない、“例外的な”勝ち方だったともいえる内容だった。(文:西部謙司)

●強豪の“王道的な戦い方”で勝利

 前半のスコアは1-0。日本代表は77%もボールを保持し、7本のシュートを放った。そしてインドネシア代表のシュートはゼロだった。

 森保一監督のモットーは「良い守備からの良い攻撃」で、その逆ではない。ただ、この試合に関しては「良い攻撃からの良い守備」ができていた。77%も保持できれば、相手はほとんど反撃ができない。「良い守備」というより、守備機会そのものが少なくなる。

 圧倒的なボール保持と相手陣内への攻め込みに続く、ハイプレスによる早期のボール回収という流れは、強豪チームの王道的な戦い方だ。スコアが大差になるとは限らないが、この戦い方をしているかぎり勝つ確率は相対的に相手より高くなるとされている。

 前半のうちに上田綺世のPKからのゴールで先制できたので楽な展開になった。後半には相手が出てきたところをカットしてカウンターを仕掛け、堂安律のラストパスから上田が2点目。さらにカウンターの機会が増え、伊東純也のクロスから上田のシュートがDFに当たってゴールイン。アディショナルタイムにロングスローから失点したのは残念だったが、3-1で勝利。2位通過でラウンド16へ進んだ。

●この勝利は「今後の参考にはならない」

 この試合で「良い攻撃からの良い守備」が実現したのは、多分に相手との力関係によるものだ。インドネシア代表は5-3-2または5-4-1のブロックで迎撃しようとしたが、引きすぎてしまった。さらにイラク代表のような強力なターゲットマンもいないため、日本代表の守備ブロックをスキップするロングボールによる反撃も有効ではなかった。

 ラウンド16からのノックアウトステージでは、イラク代表のように日本代表に「良い守備」をさせない戦法を相手が仕掛けてくる可能性がある。そのときに、いかに修正して「良い守備」を実現できるかがポイントになりそうだが、インドネシア代表戦の再現は難しいだろう。現在の日本代表は基本的に相手にボールを持たせたほうが良いプレーができる体質だからだ。

 インドネシア代表戦でも、8割近く保持していたわりにはそこまで多くの決定機を作れていない。崩せるようになったのは後半に相手が前に出てきて、カウンターアタックを打てるようになってからだった。

 また、押し込んでからのハイプレスも敵陣で奪いきる構造になっておらず、ミドルプレスを再構築できるようにしている。これは「良い守備」が前提の日本代表の戦い方としては理にかなっているのだが、王道型として押し切るには腰の引けたハイプレスであり、間延びした瞬間にロングボールで反撃される要因にもなっている。

 インドネシア代表戦の勝利は王道型だったが、アジアでも保持とハイプレスで押し切れる力は現在の日本代表にはなく、それが得意でもない。前回大会の「塩試合」を思い出し、「良い守備からの良い攻撃」に徹するのが上策と思われる。インドネシア代表戦の勝利は、日本代表が課題を克服したというより、力量差ゆえの例外的な勝ち方であり、あまり今後の参考にはならないだろう。

(文:西部謙司

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