【遠藤航・分析コラム】「完璧に近い出来」だった要因は? リバプールに安定感をもたらす遠藤の意識

【写真:Getty Images】

●フル出場の遠藤航がリバプールの勝利に貢献

 プレミアリーグ第19節、バーンリー対リバプールが現地時間26日に行われ、0-2でアウェイチームが勝利した。この試合で遠藤航は攻守に躍動。保持も被保持も安定感が抜群で、特に守備に関しては非の打ち所がないほど完璧に近かった。その中で大きな光っていた遠藤の意識とは?(文:安洋一郎)

<a href="https://www.footballchannel.jp/2023/12/27/post525463/4/" target="_blank" rel="noopener">【動画】遠藤航が躍動!バーンリー対リバプール ハイライト</a>

 リバプールの遠藤航の評価が上がり続けている。

 前節アーセナル戦で加入後ベストに近いハイパフォーマンスを披露した日本代表MFは、今節バーンリー戦もアンカーのポジションでフル出場。試合を決定づける2得点目は、彼の勇気を持って前に出た守備から生まれており、勝利の立役者の一人となっている。

 彼の評価が高まったマンチェスター・ユナイテッド戦とアーセナル戦は、攻守の切り替えの部分が生命線になる試合で、遠藤からすれば「奪ってすぐに繋ぐ」というシンプルな役割を徹底すればチームに貢献できる展開だった。

 一方で、今節バーンリー戦のように70%近くボールを保持するような展開になると、アンカーの選手の役割は複雑になる。特に自陣からのビルドアップにおけるタスクは多く、第16節クリスタル・パレス戦では彼がボールを持った瞬間を狙われて、何度もロストを繰り返してしまった。

 ボールを保持する展開ではそこまで遠藤が持ち味を発揮できない試合が多かった中で、なぜこの試合では攻守に躍動できたのだろうか。

●遠藤航の保持でのプレーが安定していた理由

 [4-3-3]のアンカーのポジションに入った遠藤からすると、[4-4-2]で構えるバーンリーはプレーしやすい相手だった。というのも、盤面での嚙み合わせ的に、日本代表MFは相手のツートップとボランチの間にあるスペースにポジションをとることができたためである。

 特に前半、バーンリーのツートップは遠藤へのパスコースを消しながらリバプールのCBにプレスをかけたが、何となく寄せるだけで強度が低かった。それは遠藤にパスが入ったときも同じで、ツートップで挟んでいたケースでも彼に対してチャージをかけることはなかった。

 ボランチも前線の動きに合わせて連動して前に出てくることもなかったため、遠藤はかなり緩いプレッシャーの中でプレーすることができていた。それを代表するシーンが自らシュートを放った40分の場面だろう。

 最終ラインに降りたトレント・アレクサンダー=アーノルドから、相手のツートップとボランチの間でパスを受けた遠藤はすぐにターンしてモハメド・サラーにパスを出した。この時に相手のボランチの選手は遠藤にパスが渡ってから距離を詰めはじめている。これだけ自由な時間があれば、日本代表MFも余裕を持ってプレーすることができ、正確な判断とパスで味方に繋ぐことができた。

 82分にも同じような場面があった。遠藤にボールが出た後にバーンリーの選手は誰も寄せることができず、ノープレッシャーの中で前方にいたドミニク・ソボスライへとパスが通ってシュートに繋がった。

 遠藤のアイデアや基本技術の高さがこれらのチャンスを演出したことは間違いないが、相手の曖昧な守備が彼の保持でのプレーを助けた側面もあった。87分には横パスを奪われて大ピンチを迎えるなど、まだ完璧とは言えないが、以前よりは落ち着いてプレーできていることは間違いないだろう。

●遠藤航の守備が安定していた理由

 一方の守備に関しては非の打ち所がない完璧に近い出来だった。

 それを可能にしたのが「スペースを埋める意識」の高さだ。遠藤は周りの選手の動きに合わせて細かくポジションを変えることで、アンカーの周りに空きがちなスペースを事前に埋めていた。

 この意識は遠藤自身だけでなく、リバプールの守備の安定感にも繋がっている。

 右SBのトレント・アレクサンダー=アーノルドが、遠藤のポジションであるアンカーの位置に上がれば、代わりに最終ラインまで落ちて一時的に4バックを形成。右CBのジャレル・クアンサーがドリブルで前方に持ち運んだ際には、彼が空けたスペースに降りてカウンターを受けた際のリスク管理を行うなど、周りの動きに合わせてのポジションの微調整を徹底していた。

 このポジション調整により、味方選手との距離感を一定に保つことが可能となる。これを行うことで、チームとしては避けたい「中盤が間延びする現象」や「あっさりとカウンターを食らうこと」が起きにくくなり、多くの局面でチームとしてセカンドボールを回収することができていた。

 90分のゴールシーンも遠藤のスペースを空けない意識が強く出た場面だった。モハメド・サラーとの相手選手との競り合いのこぼれ球に対して、自らの前方に誰もいないと見るや、迷わずルーズボールに対して全速力で詰めた。

 ここで遠藤が前に出ていなければ中盤に大きなスペースが生まれ、カウンターを食らいかねない場面だったが、自らが最終ラインに降りていた状況とは違って味方選手が後方にいたことから、迷わず出足の鋭い守備を行うことができた。

 この試合での遠藤はオフザボールでの判断が抜群だった。常にチームのサッカーが成立するように自らのポジションを調整しており、バランサーとして最高の役割を実行していた。

 試合後にユルゲン・クロップ監督も「彼がどれほど良いかを示すのに少し時間がかかったが、今ではそれを見ることができて本当にうれしい」と語るなど、遠藤は着実にプレミアリーグへ適応している。1月から2月にかけて最大1ヶ月ほどアジアカップで離脱する可能性が高いが、このパフォーマンスを維持することができれば、リバプールで絶対的なポジションを確立することができるかもしれない。

(文:安洋一郎)
【了】

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