【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったのか? 前後半で別人。遠藤を輝かせる“得意の形”とは

【写真:Getty Images】

●日本代表から復帰の遠藤航が勝利に貢献

 プレミアリーグ第24節、リバプール対バーンリーが現地時間10日に行われ、3-1でホームチームが勝利した。この試合で遠藤航のパフォーマンスは前半と後半で“別人“のようだった。後半のパフォーマンスは凄まじく、勝利に直結する活躍を披露している。試合の中で見られた”ある変化“が日本代表MFを輝かせた。(文:安洋一郎)

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 前節アーセナルに1-3で敗れたリバプールが本拠地アンフィールドで見事なリアクションをみせた。降格圏に沈むバーンリー相手に3-1の完勝を収めている。

 この試合で一つのトピックとなったのが、AFCアジアカップ2023でチームを離れていた遠藤航の復帰だ。元日に行われたニューカッスル戦以来のメンバー入りとなった日本代表MFは、ソボスライ・ドミニクが負傷離脱していることもあり、早速スタメンに名を連ねた。

 復帰戦のパフォーマンスについて、結論から述べると、前半と後半で遠藤は“別人”のようだった。

 前半も特別悪いわけではなかったが、イエローカードを貰ったシーンや失点シーンでの対応など、やや不安定な一面もあったのは確かだろう。一方の後半は攻守に効いている場面が多く、52分の勝ち越しゴールの場面では良い守備から得点に関与。そのほかミスも少なく、後半のパフォーマンスが安定していたのは明らかだった。

 なぜ、遠藤は前半よりも後半の方が機能したのだろうか。

●なぜ前半の遠藤航はあまり機能しなかったのか

 前半に遠藤が苦戦を強いられるシーンが多かったのは、彼個人の問題というよりも、バーンリーの狙いがハマったのが大きい。

 ヴァンサン・コンパニ監督が率いるチームは縦にも横にも中盤をコンパクトにすることで、リバプールの中央からのビルドアップに対して高い位置でボールを奪うことができていた。その結果、バーンリーがカウンターからチャンスを作る機会が増え、遠藤からすると得意とは言えない後ろ向きの守備で後手に回る回数が多かった。

 遠藤はアーセナルのデクラン・ライスをはじめとする1人で守備の問題を解決してしまうような“無理が効くディフェンス”ができる選手ではなく、制限が掛かった上での“予測の守備”が得意な選手だ。

 カウンターの起点となる選手にプレスが掛からなければ、後ろから連動した守備をするのは難しい。前半の遠藤のプレーがあまり効果的に見えなかったのは、チームとしてよりも、彼個人でカウンター対応を余儀なくされたシーンが多かったからだろう。

 チームとしてもカウンターからピンチを招き、セットプレーで追いつかれて1-1で折り返すなど前半はあまり良くなかった。この難しい状況をリバプールはチームとしてどのように打開したのだろうか。

●遠藤航の持ち味が後半に発揮された理由

 後半開始と同時にリバプールは、前半に膝を痛めた右SBのトレント・アレクサンダー=アーノルドに代わって、ハーヴェイ・エリオットを投入した。

 この交代策でリバプールはシステムを前半の[4-3-3]から[4-2-3-1]へと変更。エリオットをトップ下、アレクシス・マック・アリスターをダブルボランチの一角、カーティス・ジョーンズを右SBのポジションに移している。

 このシステム変更で勝負が決したと言っていいだろう。前半はバーンリーのプレスに苦しんだリバプールだったが、後半はマック・アリスターのポジションを下げることで最終ラインからのビルドアップの出口を増やすことに成功。トップ下のエリオットも効果的に下がってボールを受けることで、相手のプレスに対して局面ごとに数的優位を作り出した。

 これにより不用意なボールロストが減ったことで、前半にリバプールゴールを脅かしたバーンリーのカウンターは激減。遠藤が得意ではない後ろ向きの守備をしなければいけない場面が減り、ユルゲン・クロップ監督のチームらしい前線からの連動したプレスも復活。隣にマック・アリスターがいることで日本代表MFの守備範囲も狭まり、得意な制限が掛かった上での前向きの守備ができるようになった。

 その結果、遠藤はチーム最多タイとなる4つのタックルを成功させ、高い位置から攻撃の起点となった。先述した通り、52分の勝ち越しゴールの場面も遠藤が得意とする守備から生まれたものであり、勝利に直結する重要な役割を果たした。

 いかに遠藤のタスクをシンプルにして、彼の得意とする形に持っていけるかが重要だということが、この試合の前半と後半の比較で明らかとなった。

 思い返せば、遠藤が輝いた昨年末のマンチェスター・ユナイテッド戦とアーセナル戦のどちらも、高い位置で前向きの守備ができていた試合だった。バーンリー戦の後半は、この2試合と同じような形で前から相手に圧力を掛けてボールを奪えており、守備の型がハマれば随所に彼の強さであるデュエルが発揮されることが改めて証明された。

(文:安洋一郎)

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