「真のMVPを決めるならジャッジが大谷翔平に勝つ」全米でもうひとつのMVP論争が勃発…打撃部門のデーター比較と守備貢献のあるなしの違い

 ドジャースの大谷翔平(30)が満票で2年連続3度目のナ・リーグのMVPに選ばれ、ア・リーグのMVPも同じく満票でアーロン・ジャッジ(32)が受賞したが、全米では「真のMVPは誰だ?」との論争が広がっている。その中で、元サイヤング賞投手のジェイク・ピービー氏(43)と、ツインズなどで強打の三塁手としてプレーしたトレバー・プルーフ氏(38)が「ジャッジが大谷に勝つ」との持論を展開させた。ワールドシリーズで対戦した2人は互いをリスペクトしている。

DHの準備は多くの選手ができることだ

 真のMVPは誰か?
 予想通りに両リーグのMVPは大谷とジャッジが満票で選ばれたが、「もしメジャーリーグ全体で選べばどちらがMVPか」との論争が全米で勃発した。
「前人未到の『50―50』を成し遂げた大谷だ!」「いや主要打撃3部門で上回っているジャッジだろう!」と意見は分かれているが、パドレス時代の2007年に最多勝&最高防御率&最多奪三振の投手3冠でサイヤング賞に選ばれているピービ―氏がハッキリとジャッジに軍配を上げた。MLBネットワークの番組内でこう発言した。
「158試合に出場するのは、外野手として、チームを支えて、毎日、グラウンドで全力を尽くしている証拠だ。DHの価値は否定しないが、(大谷は)4打席と走塁の準備をこなすだけで、それは多くの選手ができること。毎日、外野手として投手を支え、打球を追いかけるのとは違う。ジャッジは1イニングも休むことなく、センターを守り続けて活躍した。私の意見としては総合的なMVPはジャッジだ」
 ピービー氏が、大谷ではなく、ジャッジを真のMVPとした理由は、やはり守備の貢献の部分。大谷は全試合DHで、ジャッジはセンターを守った。守備も含めた総合的なチーム貢献度の指標とされるWARもジャッジがメジャートップの「10.8」で大谷は「9.2」だった。
 ビーピー氏は、さらに「彼は偉大なるヤンキースOBのジョー・ディマジオヨギ・ベラミッキー・マントルロジャー・マリスアレックス・ロドリゲスらに肩を並べたと思う。ヤンキースで複数回MVPを獲得した数少ない選手だ」と、レジェンドの名前を出して最大級の称賛の言葉をジャッジへ送った。
 現役時代にツインズなどで三塁手としてプレーし、5年連続で2桁本塁打を放っているプルーフ氏も、JMベースボールのポッドキャスト番組に出演して、こう持論を展開させた。
「もしMLB全体のMVPを選ぶのであれば、今年はジャッジがショウヘイに勝つと思う。『50-50』は、人々の頭の中にとても大きなこととして占められているが、オフェンス面の全体を見ても、私はジャッジに票を入れるだろう。そして彼が守備をしているという事実も明らかに何らかの重要性を持っている」
 プルーフ氏は、打撃部門だけの勝負でも「ジャッジが勝つ」と主張した。
 今季の2人の打撃成績を比較してみる。

 

 

 まず出場試合数、打席数、打数、安打数は、大谷が159試合、731打席、636打数で197安打、ジャッジが158試合、704打席 559打数で180安打。すべて大谷が上だ。ただ主要3部門になると、打率は大谷が.310でジャッジは.322、本塁打は大谷が54本でジャッジは58本、打点は大谷が130でジャッジは144打点となっている。他に大谷がジャッジを下回っているのが、長打率、OPS、四死球数、出塁率、得点圏打率の5部門。長打率は大谷が.646でジャッジは.701、OPSは大谷が1.036でジャッジは1.159、四球数は大谷が81でジャッジは133、死球数も大谷が6でジャッジが9、出塁率は大谷が.390でジャッジは.458、得点圏打率も大谷が.283で、ジャッジは.336だ。
 プルーフ氏は、さらに「野球選手ということで話せば、ジャッジのような選手はいないと思う。クリーンな経歴で、オフェンス面で私は3-4-6の選手を気に入っている。つまり打率.300、出塁率.400、長打率.600をクリアする選手のことで、これを毎年続けていければ神だ。ジャッジは彼のキャリアを通じてこれをやってきている」とした。
 一方で大谷がジャッジを上回っているデーターもある。盗塁は大谷が59でジャッジは10、得点は大谷が134でジャッジが122、犠飛は大谷が5でジャッジが2、併殺打は大谷が7でジャッジが22もある。また三振数も大谷が162でジャッジが171で打線のつなぎ、得点への貢献度で言えば大谷が勝っている。
 プルーフ氏は、ワールドシリーズで始球式を務めたヤンキースの“レジェンド”デレク・ジーター氏とジャッジの比較も行っている。
「ジャッジはジーターよりも優れた野球選手だと思う。インパクトの面では、ジ―ターのやってきたことはとても大きく、そのことがヤンキースのファンの多くが彼の時代以降で最もお気に入りの選手だと言わせている点でもある。ジーターがもたらしたカルチャーへのインパクトは、おそらくジャッジを上回っていると思う。マニアではない一般のファンたちに最もお気に入りの選手は誰かと聞けば、大部分が依然としてジーターと言うだろう。私はジーターよりもジャッジの方が優れた野球選手だと思うが、ヤンキース全体という面で問うのであれば、彼はもしかしたらジーターに劣るかもしれない。差は小さいと思うが、影響力全般ということでは大差があると思う」
 彼はジャッジとジーターを比較したが、ある意味、すでに大谷も野球殿堂入りしているジーターらレジェンドと肩を並べているということなのかもしれない。大谷は来季はいよいよ二刀流を解禁させる。MVP発表後のインタビューでは、サイヤング賞獲得の可能性について質問されていたが、来季は、もう真のMVP論争など起こらないのかもしれない。

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