“指笛”で横浜DeNA東の投球を妨害した“犯人”は「ソフトバンクのユニホームを着て酔っ払っていた」…すぐ近くでネット裏解説をしていたOB池田親興氏が目撃
日本シリーズの第3戦が29日、みずほPayPayドームで行われ、横浜DeNAがソフトバンクを4-1で下して初勝利、対戦成績を1勝2敗とした。クライマックスシリーズで左太もも裏の肉離れを起こして戦列を離れていたエースの東克樹(28)が復帰して7回を10安打されながらも1失点に抑える力投を見せたが、ネット裏ファンの指笛で投球を妨害されるという前代未聞の異常事態を乗り越えてのシリーズ1勝だった。
東の抗議で異例の場内アナウンスが流れる
日本最高峰の舞台で異常事態が発生した。
3-1で迎えた6回一死一塁。先発の東が今宮を打席に迎え、初球をファウルにさせた直後だった。東がセットに入ろうとすると、ネット裏から「ピー!」と大きな指笛が鳴り響いた。
東は、その音源の付近を指差して、一度、プレートを外す。
2球目を投じて空振りを奪うと、その直後、スタスタに原球審のところまで歩いて、再びネット裏を指差して何かを訴えた。
原球審は場内放送のブースのところまで行き場内アナウンスを要求した。
「お客様へお願いいたします。試合進行の妨げになるような行為はご遠慮いただきますよう、ご協力をお願いします」
試合進行の妨げになる行為?
場内には、それが何を示すかが伝わらず、異様な空気が流れた。
さらに東がセットに入ろうとするとまた指笛が鳴った。
今度は、責任審判の笠原が、場内放送のブースまで確認へ行き、再度、場内アナウンスを求めた。
「投手が投げる間際の口笛などは、ご遠慮いただくようにお願いします」
2度目のアナウンスは具体的だった。
音の大きさから言うと正確には口笛ではなく指笛。
さすがに指笛は止まり、東は、今宮にセンター前ヒットを打たれたが、続く正木をセンターフライ、二死一、三塁となって、シリーズでまだ1本のヒットもない甲斐をファーストのファウルフライに打ち取りピンチを脱した。
実は、フジ系列の中継局の「バックネット裏解説」として、ネット裏の4、5列目付近の席に陣取っていたホークスOBで評論家の池田親興氏と同じ列に“犯人”が座っていた。
ソフトバンクのユニホームを着た5、6人の男性グループで「試合の序盤からずっとうるさかった。かなり酔っ払っていてずっと指笛を鳴らしていた。ネット裏からだとドームだし響くんだよね。私たちは、その席からの中継の割り込みもあったので“ちょっとうるさいね”という話をしていた」という。
池田氏によると、場内アナウンスと同時に球場スタッフとセキュリティが、指笛を鳴らしていたファンの元に飛んできて、直接、注意を促した。その張本人とグループは抵抗することなく、指笛を止めたので、“強制退場”させられることはなかったという。
試合後、東は自身のXにこう投稿して指笛問題に抗議した理由を説明した。
「炎上覚悟で言います。 指笛の件なんですが、禁止されていないのでやってもらって構わないんですが、ただ投球モーションに入ったタイミングで指笛をやるのはやめてください。という話です」
スポーツ各紙の報道によると「繊細すぎるという意見があるかもわからないが、僕たちはこれが仕事で人生をかけてやっている」とも切実に話したという。
過去にレーザーポインターの照射やスマホのライトを当てるなどの妨害行為はあったが、指笛での妨害行為が指摘されたのは異例だろう。
池田氏も「外野の応援団は別にして、そもそも内野のファンは、観戦のマナーとして、投手がセットに入ると、大声でヤジを飛ばしたり、指笛を鳴らしたりはしませんよ。こんなの初めてじゃないですか。妨害のつもりでやったのか、酔っ払って騒いだだけか知りませんが、明らかに応援の範疇を逸脱する迷惑行為でした。投手は集中すれば、そういうものが耳に入らなくなりますが、そういうレベルじゃないくらいにうるさかった。東にとって絶対に負けられないゲーム。1球でも制球を間違えば、ゲームの流れが変わる緊張した状況の中で、神経質になるのも無理はなかったと思う」と東の訴えを支持した。
負ければ王手をかけられる第3戦でシリーズ1勝をチームに呼び込んだのは、その指笛問題に悩まされた東の力投だった。
桑原の先頭打者二塁打をきっかけに牧の内野ゴロで1点のリードをもらった東は、その立ち上がりに、一死一、二塁から山川をショート正面のゴロに打ち取った。だが、森が併殺を焦って、一瞬、ファンブル。併殺を成立させることができずに二死一、三塁となって、日本シリーズで初スタメンとなった首位打者の近藤に同点のタイムリー二塁打を許した。しかしそれ以上、ホームは踏ませない。
流れは横浜DeNAにはなかった。3回にもソフトバンク先発のスチュワートから森、桑原が連続で四球を選び、得点機を作ったが、梶原が2度バントをファウルにして、最後は空振りの三振。走者を進めることができず、牧、オースティンが連続三振に倒れた。オースティンの見逃しの三振は、明らかな内角のボール球をストライクと判定され、本人も球審に毒づくなど、不運な点もあったが、その流れを断ち切る強さが東にはあった。その裏一死一塁から山川をショート併殺打に打ち取った。
10月12日の阪神とのクライマックスシリーズのファーストステージの初戦で、一塁へ走った際に、左足太もも裏の肉離れを起こして、巨人とのファイナルステージには登板できなかった。三浦監督は、DH制で走塁のリスクのない第3戦に東を起用したが、「いけるところまで」と見ていた。
だが、東は7回もマウンドに上がった。
「これでも病み上がりなんで、まさか7回まで投げると思ってなかった」
7回まで、毎回走者を背負い、10安打されたが、初回を除き連打は一度も許さなかった。2番の柳田は3本、3番の栗原に2本のヒットを許したが、4番の山川はノーヒット。5番の近藤、6番の今宮にも、2本ずつ打たれたが、7番の正木、8番の甲斐はノーヒット。見事に打線を分断した。
「ノーヒットに抑えることは絶対に無理だと思ってマウンドに上がってましたし、ランナーを出しながらも抑えるという自分らしい投球ができた」
池田氏は、東の粘投を「責任感の表れ」と分析した。
「まったく怪我の影響は感じさせなかった。ソフトバンクの右打者は入ってくるスライダーを狙っていたが、外のチェンジアップをうまく使い、左打者へは外のスライダーと、上下だけなく、奥行きを使った投球で走者を出しながらも、丁寧に低めにボールを集めて、あと1本を打たせなかった。横浜DeNAはミスが多く、何度も流れがソフトバンクへ傾きかけたが、それを断ち切ったのは東の投球だった」
その東を援護したのが1番打者の桑原だった。
初回の二塁打に続き、5回には、2番手の大津から均衡を破る一発を左中間に叩き込んだ。桑原は27日の第2戦の敗戦後に開いた緊急ミーティングで「悔しくないんか?」とチームに呼びかけた。打つだけでなく2回には正木のセンターを襲う打球をダイビングキャッチでアウトにしている。桑原の有言実行の姿にチームは鼓舞された。
5回には、さらに無死満塁とチャンスを広げ、筒香のライトへの特大の犠飛で追加点。二塁走者の牧が抜けたと勘違いして三塁ベース付近まで進み、タッチアップできなかった走塁ミスで、取れたかもしれない、もう1点を逃したが、8回にも戸柱のタイムリーで追加点を奪い4-1で振り切り、2018年から続いていたソフトバンクの日本シリーズの連勝記録を「14」でストップさせた。
王手される危機を回避した三浦監督の「ホッとした」は本音だろう。
「選手自らがミーティングをしながら、表情を見ても下を向くことなくね。昨日の練習から今日の試合に向けていい形で入れた。桑原が1番打者として打線に勢いをつけてくれた。東が復帰戦でゲームを作って、流れを渡さない投球をしてくれたは大きかった」
投打のヒーローを称えた。
この1勝はシリーズの流れを変えることになるのか。
池田氏は、「もう東は先発では使えない。横浜DeNAの今後の投手事情を考えると流れを変えたとまでは言い難い。打線も牧、宮崎、佐野あたりに当たりが出ていない。ソフトバンクも打線がうまくつながってこない。この先のシリーズを占うのは、第4戦ではないか」という見方をしている。
今日30日の第4戦の横浜DeNA先発は、巨人とのファイナルステージで2試合に先発するフル回転をした左腕のケイ。対するソフトバンクは、まだ今季のポストシーズンでの先発がない石川柊太。横浜DeNAが2勝2敗のタイに戻すのか。ソフトバンクが王手をかけるのか、シリーズの行方を左右する第4戦となりそうだ。
10/30 09:18
RONSPO