苦悩!「今は自分の仕事ができていない」なぜヤンキースのジャッジはWSで打率.083と大スランプに陥っているのか…3連敗で崖っぷちのブーン監督は第4戦も「3番」を動かさず

 ワールドシリーズの第3戦が28日(日本時間29日)、ヤンキースタジアムで行われ、ドジャースがヤンキースに4-2で勝利して3連勝、“世界一”へ王手をかけた。左肩亜脱臼を負った大谷翔平(30)の出場可否と共に注目を集めているのがア・リーグの2冠王でMVP最有力とされているアーロン・ジャッジ(32)の大不振だ。3戦でヒットはわずかに1本で7三振。打順降格やスタメン落ちを求める批判が相次ぐ中、ジャッジは「今は自分の仕事ができていない」と苦悩の心境を明かした。アーロン・ブーン監督(51)は、それでも29日(日本時間30日)の第4戦にジャッジを「3番・中堅」でスタメン起用した。

 ポストシーズンの変化球への打率は.071

 ニューヨークに戻ってもジャッジは深刻なスランプから脱出できなかった。
 2点を追う1回一死一塁にドジャースのビューラーが外角へ投じたカットボールにまったくタイミングが合わず空振りの三振を喫すると、第2打席も一塁ゴロ。第3打席に四球を選んだが、8回の第4打席もライトフライに倒れてノーヒットである。
 チームは2-4で敗れて3連敗。間違いなく、このシリーズで12打数1安打7三振で打率.083、本塁打ゼロ、打点ゼロの深刻な大スランプに陥っているジャッジが“戦犯”だ。
 レギュラーシーズンでは58本塁打、144打点で2冠王を獲得して打率.322で、1位の座を猛追し、MVPの最有力となっているが、まるで別人。ポストシーズンに入っての数字も、43打数6安打20三振で、打率.140、本塁打2、打点6と低迷している。
 ニューヨークポスト紙は「存在感のないジャッジのプレーオフの悪夢が深まる」との見出しを取り、「少なくともア・リーグ、もしかしたら世界で最高の打者は、チームのシーズンで最も大切な試合の中で打撃が止まった。ヤンキースはこの3試合で7得点。攻撃の停滞ぶりは彼らの最強打者から始まっている。もしジャッジが目覚めなければ、この深刻なスランプは、野球界が目にした彼の素晴らしいシーズンの締めくくりに1つの暗い影を落とすだろう」と批判した。
 またアスレティックス時代の1988年にMVPを獲得し、2度の本塁打王に輝いたヤンキースOBでもあるホセ・カンセコ氏もXに「ジャッジはベンチに下げるべきだ」と提言した。
 ジャッジ自身も苦悩の心境を明かしている。
 米スポーツ専門局のESPNによると、ジャッジは「必要なのは1つのことだ。1つのスイング、1つの打席、1つのプレー、それですべてが変わる。それを頭に置いてやらなければならない」と語り「チームを失望させていると思うか?」との質問にこう返した。
「確かにその通りだ。ヒットを打ちたい。フィールドに立って仕事を果たしたい。しかし、私は今自分の仕事をできていない。だから立ち直らなければならない」
 なぜジャッジはスランプに陥ったのか。
 ESPNは、その原因の分析を行った。同メディアが取材したアメリカン・リーグのスカウトの1人は、こう証言している。

 

 

ドジャース(の投手陣)は曲げて、曲げて、曲げて、彼がボールを追うように投げている。そのため速球が、実際よりも厳しい球に見えて、彼のタイミングが合わなくなっている。彼は、一発を狙うことを止める必要があり、これらのスライダーに、ただ食らいついて、ライトや右中間の合間にそのボールを運ぶようにしなければならない」
 ジャッジは外角のボールゾーンへの変化球攻めを徹底されている。
 25日の第1戦で3打席連続三振を喫したが、第1打席はスライダー、第2打席はナックルカーブに手を出し、第3打席は裏をかかれて、外角のストレートにバットが空を切った。
 26日の第2戦は山本由伸との対戦だったが、第1打席はスライダー、第2打撃はボールゾーンにスプリットを落とされて連続三振。この日、3つ目の三振は、ブレーク・トライネンに三球三振。最後はまたボールゾーンへ曲がるスライダーだった。
 一発を狙いすぎて体の開きが早く、外の変化球に対応できない。 
 同メディアは、「落とす、もしくは曲げる球への対応が、ジャッジにとって、このポストシーズンでの泣き所となっている。10月の変化球に対する打率は、レギュラーシーズンの.258に対してわずか.071となっている。これらの投球での三振率も3月から9月までの39.8%と比較して58.5%に上がっている」と付け加えた。
 ヤンキースのジェームズ・ローソン打撃コーチは「もう1スイングだ。大きな話題となっているが、私の見方からすれば、この選手は、野球界でプレーしてきた中で最高の打者の1人だ。ある一夜があれば、全てのストーリーが書き変わる」と、1打席のきっかけで、目覚める可能性があること示唆したという。
 崖っぷちの第4戦でジャッジは目覚めから覚めることができるのか。
 ブーン監督は、第4戦で、打線のつなぎを意識したのか、ジャズ・チザムを4番に据え、ジャンカルト・スタントンを5番に据える打順変更を行ったが、ジャッジの3番は動かさなかった。

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