中日の井上一樹監督が誕生すれば“禁断”の矢野元阪神監督のヘッドコーチ招聘があるのか?

 中日の次期監督として2軍監督の井上一樹氏(53)の就任が決定的だが、ヘッドコーチ候補として元阪神監督の矢野燿大氏(55)の名前があがっている。元監督が他球団でヘッドやコーチを務める例は決して珍しくないが、阪神では元監督の他球団コーチ就任は35年間封印されている。現実問題として招聘は難しそうだが果たして中日はチーム再建に向けてどんな組閣を組むのだろうか。

 井上氏は“盟友”矢野元監督に誘われ3年間阪神でコーチを務めた

 中日は屈辱の3年連続最下位に終わった立浪和義監督の退任が決まり、次期監督として井上2軍監督の監督昇格が秒読み段階に入っている。受諾と同時に進むのがコーチ人事。その中でヘッドコーチ候補として浮上しているのが元阪神監督の矢野氏だ。
 井上氏と矢野氏は、中日の現役時代から親交が厚く、加えて矢野氏が、井上氏の野球理論と人柄を買っているため、阪神監督としての1年目を終えた2019年オフに2013年限りで中日のユニホームを脱いでいた井上氏を1軍打撃コーチとして招聘した。2021年からはヘッドコーチを任せ、2022年に矢野監督が退任すると同時に井上氏もチームを去った。3年間、阪神で苦楽を共にして戦った2人の関係は良好で、互いにリスペクトしており、矢野氏が、もし阪神での監督再登板があれば、また井上氏をコーチとして招聘したいと明言しているほど。
 今回はその逆のケースだが、外野手出身の井上氏が、投手起用を含めたバッテリー部門の指導、采配を矢野氏に任すことができるのならば最強のコンビと言えるのかもしれない。
 矢野氏は、阪神の監督就任前に金本知憲監督を2年間、1軍作戦兼バッテリーコーチとして支えていた。
 評論家の中には「矢野氏は監督ではなく、バッテリ―部門の専門コーチの方に適性があるのではないか」という評価もある。
 中日OBでもある矢野氏が阪神監督時代にライバル球団の壁を超えて協力してくれた井上氏に今度はコーチとして恩返しをしても不思議ではない。
 元監督がコーチを務める例は珍しくない。今季西武でヘッドコーチ兼打撃戦略コーチを務めた平石洋介氏は、元楽天監督。昨季は元楽天監督の“デーブ”大久保博元氏が、巨人の1軍打撃チーフコーチに就任している。中日では立浪監督の前の与田剛監督の3年間に元西武、ロッテ監督の伊東勤氏がヘッドコーチを務め、2002年には、山田久志監督が、元近鉄監督の佐々木恭介氏を1軍打撃コーチとして招聘した例がある。たとえ元監督でもあっても指導者として有能な人材は見過ごしたくないとの考えだ。

 

 

 ただ阪神の元監督が他球団のコーチを務めたケースはそう多くない。古くは石本秀一氏が西鉄、中日でヘッド、中西太氏がヤクルト、近鉄、巨人、オリックスなどでコーチを歴任、安藤統男氏がヤクルトの関根潤三監督に誘われて1987年から3年間、作戦コーチを務めた例があるがそれ以降、35年間封印されたままだ。まして同一リーグで相対するとなるとまさに“禁断の人事”ということになる。それは阪神の監督がいかに特別かを示すデータでもあり、関係者によると現実問題として矢野氏の中日のヘッドコーチ招聘は難しいという。
 すでに球界内ではまことしやかに「矢野氏の中日のヘッドコーチは消えた」との怪情報も駆け巡り、阪神の次期監督として決定的な藤川球児氏にコーチ経験がないため、「中日の話がなくなったのは、矢野氏が阪神のヘッドコーチに就任するからではないか?」との新たな怪情報が流れているほど。これもあり得ない人事ではあるが、オフのストーブリーグ情報は、ある意味、なんでもありだ。
 いずれにしろコーチ人事は、井上氏の監督就任が正式に決定してからの話だが、もし矢野氏の招聘が難しい場合は、ヘッドは中日OBや内部調整を軸とした人選となるだろう。
 井上氏は、今季2軍監督として昨季最下位だったチームを優勝争いさせた手腕が評価されている。性格が明るく、選手をその気にさせるモチベータータイプの指導者だ。立浪監督とは対照的な指導スタイルに期待が寄せられるが、コーチングスタッフの陣容が重要になってくる。広島では、同じくモチベータータイプの新井貴浩監督をヘッドコーチである元阪神の藤井彰人氏ら、野球理論や戦術、戦略に長けたコーチングスタッフが支えて成功している。
 コーチ人事は球団フロントとの共同作業となるが井上氏は3年連続最下位のチームを立て直すためにどんな組閣を組むのだろうか。

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