「選手たちの力を信じて良かったな」10度宙を舞った阿部監督、歓喜の輪の中であふれた涙

 セ・リーグは28日、優勝へのマジックナンバーを1としていた巨人が広島を8―1で下し、リーグ制覇を果たした。

4年ぶりのセ・リーグ優勝を決め、胴上げされる阿部監督(28日、マツダスタジアムで)=大塚直樹撮影

 阿部監督が現役時代の背番号と同じ10度、宙を舞った。主将の岡本和真(28)が、ベテランの坂本勇人(35)が泣いていた。「皆が苦しんだシーズンだからこそ、優勝できた。同じ気持ちだったんだな」と阿部監督。歓喜の輪の中で自身も感極まった。

 就任1年目でチームを結束させた。優勝へのマジックナンバー「9」を点灯させた9月18日。延長十二回の末に引き分けたDeNA戦を終えると、阿部監督は報道陣への取材対応をやめ、選手たちを集めて引き締めを図った。「浮かれるのは、マジックが1になってからだ」。異例となる試合後の全体ミーティングを行い、手綱を緩めなかった。

 優勝が近づくまで、「感情的になっても選手は動かない」と冷静な目で見つめていた。試合中、気づいたことや疑問を書き留めるノートには、覇気のない姿や怠慢プレーへの憤りや文句も赤裸々に記した。勝利への妨げとなる喜怒哀楽はノートに閉じ込め、選手一人ひとりと向き合ってきた。

4年ぶりのリーグ優勝を決め、喜ぶ阿部監督(28日)=横山就平撮影

 ペナント奪還の戦力になると見定めた選手を信じ抜いた。坂本は調子が今一つでも、首位攻防戦では上位打線に置いたり、要所で代打に送ったりして快勝につなげた。将来のスター候補と評した高卒2年目の浅野翔吾(19)のひたむきさを買って起用し、チームに活力をもたらした。

 完敗の屈辱に震え、勝負所の采配を悔いて眠れない夜もあった。それでも、選手を励まし、自らを奮い立たせ、大混戦を抜け出した。「選手たちの力を信じて良かったな」。抱えてきた思いが、涙となってあふれた。(運動部 平山一有)

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