長嶋一茂とかつてドラマで共演…阪神ファンから届いたFAXに「コワっ」!? 自身は「アンチ巨人ファンのアンチです(笑)」【狂言師・茂山逸平氏特別インタビュー】


「とにかくデカい、そしてよく食べる。そんなイメージが残っていますね」
 
秋晴れの陽気が心地よい10月31日、大谷翔平擁するドジャースが世界一に輝いたほんの数分後にオンラインインタビューに応じてくれたのは、京都を拠点に狂言師として活躍する茂山逸平さんだ。

茂山さんは1979年6月、狂言方大蔵流の能楽師・二世茂山七五三さんの二男として京都府に生まれた。4歳の時に初舞台を踏んで以来、伝統芸能の世界に留まらず、子役として俳優として数々の映画やドラマに出演。今年4月から9月にかけてNHK BSで再放送された連続テレビ小説『オードリー』(2000~01年初回放送)では、主人公の弟という重要な役どころを演じていた。

冒頭の発言は、24年前に『オードリー』で共演した長嶋一茂さんに対して抱いた茂山さんの第一印象だ。「(撮影では)一茂さんとの絡みはほとんどなかった」とのことだが、共演者らと「撮影後に焼き鳥だか串カツだかを食べに行って、(一茂さんが)めちゃくちゃ食べていた印象が強い。食いっぷりがとにかくすごかったことが記憶に残っています」と、当時のエピソードを語ってくれた。

ちなみに『オードリー』が始まったのは茂山さんが21歳、一茂さんが34歳のとき。今でこそバラエティー番組に欠かせない存在となった一茂さんだが、当時はプロ野球を引退して約4年。タレントとしてはまだ“若手”の頃だったが、それでも撮影現場では兄貴分的存在だったらしい。

『オードリー』をはじめ、多くのドラマに出演してきた茂山さんは、「小学校低学年の頃から野球ファン」であり、京都出身ながら「大の巨人ファン」として育ったという。今回はそんな茂山さんに野球にまつわる思い出やエピソードを約1時間にわたって語ってもらった。


◆ 家族で大谷翔平を応援

――― 本日はお忙しい中、インタビューに応じていただきありがとうございます。茂山さんはかなりの野球好きと伺いました。

そうですね。プロ野球はもちろん、高校野球もメジャーリーグも大好きです。さっきも移動中の車内でワールドシリーズ(第5戦)の実況を聴いていました。特に今年は家族全員でドジャースの大谷翔平選手を応援していましたね。ホント大谷選手には今年1年間楽しませてもらいました。

――― どういったきっかけで野球を見るようになったのでしょうか?

確か小学校低学年の頃に雑誌か何かで原辰徳選手を見て巨人ファンになりました。あごを左肩に乗せるあの独特の打撃フォームがとにかくカッコ良かったんですよ。私の父親も巨人ファンなので、その影響もあったのかもしれません。

――― 野球のプレー経験もあるのでしょうか?

私たちの世代はみんなそうだと思いますが、子供の頃はよく草野球をやっていましたね。数年に一回程度ですが、大人になってからもやっていますよ。この前は、歌舞伎役者さんたちに交じって東京ドームで試合をやりました!私は指名打者でしたが(笑)。

――― 贔屓球団の本拠地、しかも東京ドームで実際にプレーできるなんて羨ましいです!

実はまだ東京ドームで巨人の試合を観戦したことがないんですよ。それなのに先に自分がプレーしてしまいました(笑)。


◆ 大学の後輩、DeNA東投手が挨拶をしてくれた

――― その巨人ですが、今年は4年ぶりにリーグ優勝を飾ったものの、CSで敗退してしまいました。

そうですね。(DeNAとのファイナルステージ)第1戦を戸郷投手で落とした時に嫌な予感はしたのですが、あれだけ打てないと仕方ないですよね。今季15勝した菅野投手もメジャーに行くようですし、来年が心配です。

――― ちなみにDeNAとソフトバンクの日本シリーズはご覧になっていますか?

DeNAの東克樹投手が立命館大学の後輩なんですが、彼がプロ入りする際に大学のイベントで顔を合わせたことがあって、律儀に挨拶をしにきてくれました。それもあって巨人の選手以外だと、やはり東投手のことが気になります。

――― そうなんですね。日本シリーズ第3戦では圧巻の投球を見せてくれました。そういえば、一茂さんのお父様、長嶋茂雄読売ジャイアンツ終身名誉監督にもお会いになったことがあるとか。

2003年頃に哲学者・梅原猛さんの原作『スーパー狂言 クローン人間ナマシマ』という創作狂言に出演したときですね。東京ジャイガンツという架空球団のナマシマ前監督の「クローン人間」を造り出してしまうという風刺作品だったのですが、なんと長嶋監督ご本人が国立能楽堂に足を運んでくださって、一緒に記念写真まで撮らせていただきました。

――― 何かと長嶋家にはご縁があるようですね(笑)。

確かにそうですね。ただ関西(京都)という土地柄もあって、巨人ファンを公言していると、いろいろ怖い体験もするんです。


◆ 阪神ファンのリスナーから届いた恐怖のFAX?

――― どういうことですか?

居酒屋で酔っ払った阪神ファンに絡まれるのはまだ序の口。10年くらい前ですかね、ラジオ番組のパーソナリティーをやっていた時にちょうど巨人が優勝して、喜びのあまり浮かれたコメントをしていたら、阪神ファンのリスナーから抗議のFAXが届きまして……。

――― ど、どういった内容の?

『あなたは江川事件のことを知らない年齢だから、関西でそのような発言をされるかもしれませんが……』のような内容だったと記憶しています。生放送中にそんなメッセージが送られてきて、「コワっ」ってなりました。

――― そうなると、やはり阪神ファンは苦手ですか?実は私も虎党でして……。

アンチ巨人ファンのアンチです(笑)。純粋な阪神ファンはいいんですけど、中にはアンチ巨人ファンが何%かいらっしゃるんですよ。話していても、それは「阪神ファンじゃなくてアンチ巨人でしょ」っていう。江川事件をまだ言う人もいらっしゃいますし(苦笑)。


 生粋の京都っ子にもかかわらず40年近く巨人愛を貫いてきた茂山さん。長嶋親子と縁があったことを思えば、なるべくして巨人ファンになったともいえるだろう。

 そんな茂山さんだが、狂言師として週末は全国各地を飛び回り、平日は稽古に明け暮れる忙しい日々を送っている。今月23日には『お豆腐の和らい』という公演が名古屋で開催予定。昨年秋に重要無形文化財保持者各個認定(人間国宝)された父・茂山七五三さんの記念公演でもあるというから、興味がある方はもちろん、伝統芸能の舞台をまだ見たことがないという方にもぜひ足を運んでもらいたい。

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取材・構成=八木遊
写真=本人提供
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茂山逸平プロフィール】
1979年生まれ、京都府出身。父二世茂山七五三、祖父、四世茂山千作という狂言方の家に二男として生まれる。4歳の時に「業平餅」で初舞台。94年には兄・宗彦らと「花形狂言少年隊」を結成。2009年より日本舞踊、尾上流家元三代目尾上菊之丞と『逸青会』を、落語家三代目桂春蝶と『春蝶・逸平の一緒に遊びまSHOW!』を主催。俳優としても『オードリー』『ごちそうさん』『だんだん』、土曜ドラマ『夫婦善哉』などに出演している。

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