高木豊がさらなる飛躍を期待するパ・リーグの若手4選手 勝負強いソフトバンクの新6番、西武のエース候補も

高木豊が注目する有望選手 パ・リーグ編

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 高木豊氏に聞く注目の有望選手。パ・リーグ編はすでに実績のある選手も踏まえ、さらなる飛躍が期待できる投打の4選手について語ってもらった。


ソフトバンクの6番での起用が増えている3年目の正木智也 photo by Sankei Visual

【ソフトバンクの大砲候補は「非凡なものがある」】

――パ・リーグで注目している若手選手は?

高木豊(以下:高木) ロッテの佐藤都志也(5年目)です。プロ入り以来、攻守両面で毎年少しずつ成長している印象でしたが、今季はバッティングでひと皮むけました。内側でも外側でも、強いボールにも押し込まれることなく弾き返しています。

 バットの出方が定まらない時期がありましたし、縦振りでいくべきか横振りでいくべきか、バッティングに迷っていたこともあったと思うんです。しかし今季は、一貫して横振り。自分に合った振り方が定まったんでしょう。

※8月14日時点の成績・・・86試合、打率.298、出塁率.348、3本塁打、33打点、4盗塁

――それによって、成績が飛躍的に伸びましたね。

高木 いろいろな振り方を試すなかで、ハマったのが横振りだったということでしょう。オールスターゲームでは、佐藤と近藤健介(ソフトバンク)が揃って1試合5安打をマークしましたが、横振りの佐藤と縦振りの近藤はものすごく対照的でした。

 同じロッテでは、藤岡裕大は縦振りを試しているように見えますが、それが合っていたのか力強い打球が徐々に増えてきましたね。それで思ったのは、やっぱりバッティングの答えは、個人が探し当てるものなんだなと。

 今は縦振りが推奨される傾向にありますが、選手によって体型も体の使い方も違いますからね。佐藤はそれを教えてくれました。1年目から井口資仁監督(当時)に抜擢されて"代打の切り札"で使われた時期もありましたし、当初からバッティングは買われていましたが、やっと迷いがなくなって開花した。打てるキャッチャーとしての今後の成長が楽しみです。

――ほかに注目している野手はいますか?

高木 ソフトバンクの正木智也(3年目)は勝負強いですね(得点圏打率.471)。6月21日からスタメンで起用されるようになり、今はクリーンナップが強力なソフトバンクの6番に固定されつつあります。相当な精神力がないと打てない打順ですし、そこで結果を出しているということは、やっぱり非凡なものがあるんじゃないかと。

※8月14日時点の成績・・・43試合、打率.316、出塁率.354、2本塁打、19打点、1盗塁

――長打率も.471と高く、大砲候補としても期待ですね。

高木 そうですね。ただ、無理にホームランを狙う必要性はないです。ソフトバンクはほかにホームランを打ってくれる選手がいますから。かつて、巨人時代の中田翔(中日)も「(日本ハムから)巨人に行って楽になった」と言っていました。周りがホームランを打ってくれるから、求められていることが違うんだと。それと同じで、正木もたまったランナーを還したり、ランナーがいない時は出塁に徹したり、つなぎの意識を持つことが相手にとって脅威になると思いますね。

――正木選手が6番でいい働きをすることで、打線がさらに厚くなった印象です。

高木 バッティングは思い切りがいいですね。また、自分がどう攻められるのか、どういうバッティングをするべきなのか、といったことを冷静に整理してから打席に入っている印象を受けます。だから、変な力みがない。ベンチが考えていることを理解しながらプレーしていると思いますし、そういう選手がいてくれるとチームは助かりますよ。

【西武の将来のエース候補】

――投手で注目している有望選手は?

高木 ここ2試合は失点が多いですが、西武の渡邉勇太朗(6年目)はいいですね。3年目には4勝(4敗)を挙げましたけど、その時も「すごくいいピッチャーが出てきたな」と見ていたんです。余力を持って投げていて、勝負どころでは出力を上げて150km台後半を出すことがある。

 7割ぐらいの力で投げても150kmを超えるぐらいの出力があって、それをコントロールよく投げられるんです。モノが違うというか、持っているパワー、エンジンが違うという感じがしますね。

※8月14日時点の成績・・・11登板、1勝4敗、防御率3.18、奪三振率5.22

――身長は191cmと、体格的には同じ西武の髙橋光成投手に近いですが、ピッチングを比べるとどうですか?

高木 髙橋は出力を調整するのではなく、すべてのボールに体重を100%乗せて力を伝えるタイプ。だから力が残っていれば抑えられるんですが、力が落ちてきて一度つかまりだしたら止まらなくなる。いずれにせよ、渡邉の投球スタイルとはちょっと違いますよね。

――変化球の精度はどうですか?

高木 低めに丁寧に投げていますし、ピッチングをよく知っているなと思います。オリックスの山下舜平大も同じような体格ですが、彼の場合はちょっと不安定。渡邉はコントロールもいいし、しなやかさがあります。投げるスタミナ、精神的なスタミナも持ち合わせていますし、近い将来のエース候補だと思います。

――ほかに注目している投手はいますか?

高木(楽天の球団記録である)28試合連続無失点を継続中の鈴木翔天(そら/6年目)です。これは大変な数字だと思うのですが、どうしてもソフトバンクのダーウィンゾン・ヘルナンデスや、ロッテの鈴木昭汰の無失点記録のほうが取り上げられがちです。なので、すでに実績がある投手ではありますが、スポットを当てる意味も込めて楽天の鈴木をプッシュしたいと思います。

※8月14日時点の成績・・・35登板、2勝0敗、15ホールド1セーブ、防御率1.02、奪三振率8.92

――ピッチングの特徴は?

高木 とにかくマウンドで落ち着いているので、安心して見ていられます。あとは、スライダーのキレや精度が抜群ですね。真っすぐの平均球速は150km前後でコントロールもいいので、スライダーが生きます。

 左バッターの自分が打席に入るとしたら、スライダーは狙いませんね。真っすぐを素直に打ち返すことに徹すると思います。それぐらい、鈴木のスライダーを打つのは至難の業です。真っすぐで追い込まれて、最後にスライダーを投げられたらお手上げですよ。右バッターにはシュートも投げますが、真っすぐとスライダーで十分ですよ。

――昨季は61試合に登板し、今季もすでに35試合に登板。楽天ファンのなかには先発転向を望む声もありますが、いかがですか?

高木 リリーフのほうがいいでしょうね。ただ、先発をやるとなれば、今はほとんど投げていないカーブの割合も多くなりそうです。でも、鈴木のいいボールはやはり真っすぐとスライダー。無失点記録も更新中ですし、今後のさらなる活躍に期待しています。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

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