“巨人はロッテより弱い”の元近鉄・加藤哲郎氏、ソフトバンク村上コーチ「宮城のほうが断然いい」について語る「あれでDeNAに流れが傾いたとは思わない」

1989年の日本シリーズで話題を集めた元近鉄・加藤哲郎氏

 ソフトバンクが敵地で2連勝した後、まさかの4連敗でDeNAが“下剋上”の日本一に輝く結果となった今季の日本シリーズ。同シリーズでは第3戦を前にしたソフトバンク・村上隆行打撃コーチの発言が“ターニングポイント”になったとも指摘され、その展開が35年前の日本シリーズの流れを彷彿とさせるものだと話題になっている。

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 物議を醸したのは、DeNA先発・東克樹への対策を報道陣に問われた村上コーチの「パ・リーグにもそんなにいないかもしれないけど、(オリックスの)宮城(大弥)のほうが断然いい」という発言だ。これを聞いたDeNAナインが奮起し、シリーズの逆転につながったとも報じられている。

 第3戦で東が好投してDeNAが勝利した翌朝、Xに〈村上、いらん事言わんでええねん 記者もいらん事聞かんでええねん〉とポストしたのは、元近鉄投手の加藤哲郎氏だった。

 加藤氏で思い起こされるのは1989年の近鉄vs巨人の日本シリーズだ。第3戦の先発マウンドに立った加藤氏は6回3分の1を無失点に抑え勝利投手となり、3連勝の近鉄が日本一に王手を掛けた。その時のヒーローインタビューで、“今日の巨人は(パ・リーグ最下位の)ロッテより弱いですか?”とマイクを向けられた加藤氏は「別になんてことなかったですね」「シーズンのほうがよっぽどしんどかった」と発言。

 翌日、スポーツ紙には「加藤、巨人はロッテより弱い」の大見出しが躍り、反発心に火がついた巨人ナインが奮起して、シリーズは3連敗からの4連勝で巨人が日本一となった。

「東も宮城も素晴らしいピッチャー」

 まさに今年の日本シリーズと重なって見える展開だが、加藤氏のXへのポストの真意はどこにあったのか。加藤氏に話を聞くと、「全く深い意味はないです」と応じた。

「村上の発言を見たから、話題に乗っかっただけ。プロ野球選手同士で試合をしているのだから、そんなに力の差はないんですよ。たまたま優勝したとか、CSで負けたとか、それだけの話。その時のチーム状態もある。このタイミングでDeNAが上り調子だっただけという気がしないでもありません。

 シーズン中でも連勝や連敗はある。たまたまソフトバンクに悪い波がきていたのだと見ています。(自身のポストについては)みんなが、近鉄時代の日本シリーズでのボクの発言と重ねただけで、何もソフトバンクや村上を心配しての発言じゃじゃないんですよ」

“宮城のほうが断然いい”発言で注目された村上コーチは近鉄時代の同僚で、1歳年下という身近な存在だ。

「もちろん個人的な意見としては、DeNAの東もオリックスの宮城もどっちも素晴らしいピッチャーなので、余計なことを言わんでいいとは思いますが、たまたまつぶやいただけです。マスコミも書くのが商売ですからね。嘘じゃなければ書くのはしょうがないが、これ(村上コーチの発言)でDeNAに流れが傾いたとは思っていないですね。

 ボクが日本シリーズで投げた時もそうなんですが、形勢が悪い時に何かぶつけるものがあるとみんなが結束しやすい。あの時はボクが発言したことで巨人が結束した。それに近い部分があったのか、なかったのかはわからないです。ボクらの時はあからさまにそれがあったんですが、だから今回つぶやいたというわけじゃない」

 ただ、村上コーチの発言の後、ソフトバンクはいいところなく黒星を重ね、日本一を逃した。まるでそうした展開を予見したポストにも見えたが、加藤氏はこう応じる。

「村上をよく知っているからつぶやいただけで、深い意味はないです。こういう結末になるということで言ったわけではないです。ボクはCSの制度に疑問を持っているためシーズンを通して勝ちを重ねてリーグ優勝したソフトバンクに勝ってほしいとは思ったが、どっちが強い、弱いは思ってない。私自身、近鉄時代の(日本シリーズの)ことは何も思っていないですからね」

 短期決戦で何が転換点になるかわからない。今年の日本シリーズも、後年に語り継がれる劇的な展開であったことは間違いない。

※週刊ポスト2024年11月22日号

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