「どうせするから」医者もあきらめた DeNA・桑原、頸椎の限界超えてもダイビングキャッチ続ける理由

日本一で喜ぶナインの輪に飛び込む桑原(奥=カメラ・岩田 大補)

◆SMBC日本シリーズ2024第6戦 DeNA11―2ソフトバンク(3日・横浜)

 DeNAの桑原将志外野手(31)が、日本シリーズ(S)新記録の5試合連続打点、6試合シリーズのタイ記録9打点をマークするなどチームをけん引し、MVPを獲得した。また、4月に5年ぶりに古巣に復帰した筒香嘉智外野手(32)は2回に先制V弾。5回2死満塁では走者一掃の二塁打でトドメを刺した。2017年日本Sに出場していた2人が7年前の借りを返した。

 全試合で1番を託され、27打数12安打の打率4割4分4厘。第2戦から日本シリーズ新の5試合連続打点。チャンスメーカーとポイントゲッターを完璧に演じきったDeNA・桑原が、文句なしのシリーズMVPに輝いた。

 あふれる闘志をそのままボールにぶつけるように、有原の内角ツーシームを振り抜いた。2回、筒香の先制ソロに続いて下位打線が築いた2死二、三塁で、リードを広げる左前2点打。新記録達成に「もう1点、もう1点と強い気持ちを持ち、そして後ろにつなげようと打席に入った」とガッツポーズ。初回と4回にも安打、5回にも押し出し四球で打点をプラスした。

 同じ1番打者だった7年前のシリーズでは、6試合で26打数4安打10三振と役目を果たせなかった。だが、リベンジの舞台にも「借りを返そうって気持ちはない。今いる最高のメンバーと喜びを感じながら戦いたかった」と、勝利を何よりも優先。連敗スタートとなった第2戦後の緊急ミーティングでは、主将の牧からシリーズ経験者として発言を求められ、「気持ちを前面に出して戦おう」と後輩たちに呼びかけた。

 そして敵地で3連勝。気持ちの入ったプレーでもり立てた。連続打点だけではない。第3戦と第5戦で、投手を救うダイビングキャッチを連発。今や代名詞ともなっている捨て身のダイブだが、その影響で体はボロボロだ。3年ほど前、首の張りがとれない時期が続いた。生活に支障はないものの、チームドクターには頸椎(けいつい)が機能していないと診断された。

 ドクターには「どうせするから、ダイビングするなとは言わない」と言われたものの、選手生命を左右しかねない状態。だが、「けがしたら本望。怖がってプレーしてるぐらいやったら、ユニフォーム着てる資格ない」と、果敢に宙を舞い続けた。

 身も心も限界まで燃やしてたどりついた初めての日本一。ゲームセットの瞬間、7年前に共に悔しさを味わった筒香に歩み寄り、ガッチリと抱き合った。大歓声に包まれたお立ち台で「本当に幸せです」。シリーズ開幕から見せることのなかった白い歯がこぼれた。(星野 和明)

 ◆桑原 将志(くわはら・まさゆき)1993年7月21日、大阪府生まれ。31歳。福知山成美から2011年ドラフト4位でDeNA入団。17、23年にゴールデン・グラブ賞。通算1133試合、68本塁打、295打点、打率2割6分5厘。174センチ、80キロ。右投右打。4年契約3年目の今季年俸は1億2000万円。

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