大谷翔平「振り返れと言われてもあまり思い出せない」ほど極限の集中力 ファン乱入の異様なムードも関係なし

◆米大リーグ・地区シリーズ ドジャース7ー5パドレス(5日、米カリフォルニア州ロサンゼルス=ドジャースタジアム)

 ドジャース大谷翔平投手(30)が5日(日本時間6日)、メジャー7年目で初めてポストシーズンの舞台に立った。異様な球場の雰囲気の中で、改めて浮き上がった大谷の特別な才能を、19年から追ってきた安藤宏太記者が「見た」。

 大谷が初めて立ったポストシーズンの舞台。いつもとは違う空気を「雰囲気自体がすごい興奮、熱気」と表現。日本ハム時代の日本シリーズや、昨年のWBCなど“明日なき戦い”は経験してきたが「1年間戦い抜いてきたファンの人たちとポストシーズンのゲームを戦うということは、(これまでのWBCなどの大舞台と)比べられないですけど、同じくらい特別だった」と心を躍らせるような口調で振り返った。

 19年から大谷を追い続けてきて、大谷同様、私も念願の地区シリーズ初取材。昨年ツインズブルージェイズのワイルドカードシリーズを取材したが、まるで空気は違う。しかも、同地区のライバルで、両軍の本拠地は200キロほどしか離れていないという、ご近所対決。ド軍ファンのパドレスへの意識はすさまじく、試合開始前にナインが整列のためグラウンドに出てきただけで、大ブーイング。特に4番のマチャドに対しては毎打席、痛烈なブーイングが送られた。ファンには青いタオルが配られ、いつもは見られないタオルをグルグル回しながらの応援もチームに力を与えた。

 4回表のパドレスの攻撃前にはファン数人がグラウンドに入り込んで、警備員が動き出すハプニングもあった。ファン同士のトラブルなどでざわつくこともあった。さらに元NBAスター選手のマジック・ジョンソン氏、米人気俳優ブラッド・ピットらも観戦。全米中継もされて、高い注目を集めている。

 しかし、そんな大舞台でも結果を残すのが大谷だ。むしろ、大舞台がさらなる力を与えているとすら思えてくる。試合後に明かした心境に衝撃を受けた。「今、1球1球振り返れと言われてもあまり思い出せないくらい1打席1打席集中できていたかな」。極限状態とも言える“自分の世界”に入り込んでいた。試合前の興奮状態から平常心どころか、研ぎ澄まされた集中力を発揮。「試合前からすごい球場の熱気というか、そういうのを感じて、終始ただただ楽しいゲームだったなと思います」。この明日なき戦いの重圧を楽しめるからこそ、大谷の強さを改めて感じた初ポストシーズンだった。(安藤 宏太)

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