「下もぐちょぐちょですし最悪のコンディション」巨人・戸郷が雨に泣いた 痛恨の9月初失点…阿部監督「何も責められません」

7回1失点の戸郷(カメラ・相川 和寛)

◆JERA セ・リーグ DeNA1―0巨人(25日・横浜)

 マウンドは粘土質になり、スパイクには土がへばりついた。激しく降り注ぐ冷たい雨にも負けず、戸郷は腕を振った。「下もぐちょぐちょですし最悪のコンディションだった」。打線の援護に恵まれず8敗目。それでも、7回118球、9安打1失点で踏ん張ったのはエースらしかった。

 見せ場は両軍無得点の2回。先頭・オースティンの飛球を右翼手・浅野がぬれた人工芝で足を滑らせて転倒し、捕球できずに三塁打。さらに連続四球で無死満塁のピンチを招いた。一度、マウンドに土を入れてもらってギアチェンジした。まずは戸柱を二ゴロでホームゲッツー。森敬は申告敬遠で2死満塁としたが、ジャクソンをフルカウントから149キロ直球で見逃し三振に斬った。「雨でぬれていたし風も吹いていたのでしょうがない。カバーできたのはよかった」。顔色を変えず、切り抜けた。

 3回1死三塁から、佐野の二ゴロで先制点を奪われ9月4試合目で初失点。8月31日の阪神戦以来、24イニングぶりの失点だった。4度もマウンドに土を入れながら、乱れなかった。防御率は1・95に良化。投球回数も、自己ベストを上積みし、両リーグでも最多の180回に到達した。阿部監督も「何も責められません。ナイスピッチング」とたたえた。

 あの頃とは違い、チームや後輩を思いやるたくましいエースになった。19年、リーグ制覇を決めた9月21日・DeNA戦(横浜)では高卒1年目で初登板初先発し、4回2/3を2失点。「あの時は自分のことしか考えていなかった」。思い出の場所でもある横浜で、心の成長を見せた。

 8月22日の広島戦(東京D)。3試合連続完封まであと2人というところで同点打を許し、チームも敗れた。翌23日には西舘がプロ初先発したが、打ち込まれた。「僕が勝っていい状態で立たせてあげたかった」と後輩を思いやった。「プレッシャーは僕らが背負えばいい。若い子にはもっと楽な環境で自分のプレーや投球ができることが一番だと思う。まぁ、僕もまだ24歳だけどね」。若きエースはチームを背負う責任を胸にマウンドに立っている。

 チーム状況次第ではあるが、シーズン最終戦の10月2日・DeNA戦(東京D)での登板が見込まれる。「チームが勝たなかったので申し訳ないですけど、次はゼロで抑えたい」。戸郷の熱い思いは必ず届く。(水上 智恵)

ジャンルで探す