史料提供に礼状送った鴎外・同僚に喉や腰の不調訴えた芥川…全集未収録の文豪のはがき、30通超発見
森鴎外や芥川龍之介、幸徳秋水の全集未収録のはがきなど30通以上が、東京都の文京区立森鴎外記念館で保管されていることがわかった。作品成立の経緯や歴史的な事件の背景が読み取れる貴重な資料だという。
茶道・江戸千家家元の川上宗雪さん(78)が昨年度、約40年にわたり収集してきた、明治から昭和にかけての文学者ら89人のはがき111通を同館に寄贈。大妻女子大の須田喜代次名誉教授(日本近代文学)を中心とした研究者が、その中身を調査した結果、未収録資料の存在が確認された。
江戸時代の儒学者の史伝「北条霞亭」を新聞連載する前年の1916年11月20日に、鴎外が知人の新聞記者へ宛てたはがきには、〈
須田名誉教授は「丁寧な礼状を送る鴎外の姿勢には、一次資料に基づいて
スペイン風邪にかかった芥川が18年11月5日、英語の嘱託教官を務めていた海軍機関学校の同僚に喉や腰の不調を訴えたはがきもある。〈大分
歴史的な事件に関連するはがきも含まれていた。10年の思想弾圧事件「大逆事件」で主犯とされた秋水は、逮捕まで1か月余りに迫った同年4月22日、新聞社に〈
須田名誉教授は、芥川のはがきについて、「流行する感染症におびえながらも回復に向かっていることを知人に知らせる姿はコロナ禍にも重なる」とし、秋水のはがきについては「送った時点では、逮捕が迫り、窮地に陥っていると思っていなかったのではないか」と推察する。
一連の資料には、このほか、室生犀星、坪内逍遥、与謝野晶子といった文学者や、博物学者・南方熊楠らの全集などに未収録のはがきも含まれていて、同記念館の特別展で10月12日から展示される予定。
10/04 05:00
読売新聞