坂口健太郎×イ・セヨンが振り返る5年という歳月「5年前、私の人生は変わりました!」
この秋もっとも美しいラブストーリーが幕を開ける。
坂口健太郎と、イ・セヨン。日韓を代表するスターがW主演を務める『愛のあとにくるもの』が、10月11日よりPrime Videoにて見放題独占配信中だ。
坂口にとっては、初の韓国ドラマ。演じるのは、小説家を目指す大学生・潤吾だ。イ・セヨンが扮するのは、韓国から日本へ留学に来たチェ・ホン。きらめくような恋におちながらも、一度は別れを選び、離れ離れになった二人が運命の再会を果たす。韓国と日本を舞台にしながら、5年の月日をまたぐ男女の愛が、抒情的な映像美で綴られていく。
言語の壁を超えて深い信頼を築き上げた二人は、取材中も息ぴったり。
二人にとって、共に過ごした撮影の日々はどのようなものだったのだろうか。
健太郎さんのおかげで朝鮮半島がザワザワしてます(笑)
――今回役を演じてみて、ホンと潤吾のどんなところに魅力を感じましたか。
イ・セヨン 潤吾は口数の少ないところがいとおしかったです。もちろん本来なら口に出して伝えるべきことを伝えなかったために、二人は理解が足りず別れを選択してしまうんですけど、私は行動よりも先に言葉が出る人のことをあまり信用していないんですね。
でも代わりに、潤吾って言葉を発する前に行動で見せてくれるじゃない? そういう人を私は信用しているので、すごく頼もしいし信じられる人だなと思いました。
坂口 確かに潤吾はすぐ黙るよね。なんなら日本語の台詞は彼女の方が多かったかもしれない(笑)。
イ・セヨン そこはちょっと憎たらしいかな(笑)。
坂口 現代と過去でまたちょっと違ってくる部分もあるんですけど、潤吾はホンがいちばんほしいときにいちばん必要な言葉を言えない人なんですね。それに対して、ホンはちゃんと潤吾に気持ちを伝えてくれる。そういうところに潤吾は惹かれていったのかなという気がしました。
――では、一緒にやってみて、お互いについて素敵だなと思ったところも教えてください。
イ・セヨン 健太郎さんは否定的なことを言わないんです。ネガティブな言葉を口にしたところを一度も見たことがない。
坂口 確かにあんまり言わないかも。
イ・セヨン 心が清らかでピュア。内面的な成熟を感じる方ですね。
坂口 たぶん、僕ってどこかで性善説なんですね。
イ・セヨン (日本語で)うんうん。
坂口 もちろん面倒くさいなと思うこともあるんですけど、それがあまりマイナスな表現につながらないというか。否定的な瞬間があっても、別の言葉に置き換える。捉え方が楽観主義なんだと思います。だからストレスがたまらないし、そもそもストレスのたまっている状態でいることがもったいないなと感じるタイプで。なるべく幸せな時間を共有したほうが楽だから、そうしているところはありますね。
イ・セヨン あとはすごく愉快な人です(笑)。
坂口 ありがとうございます(笑)。
イ・セヨン この間、韓国で制作発表会をしたときに、健太郎さんが「この氷でかき氷をつくってくださいっていう韓国語を覚えた」とおっしゃって。それを聞いた韓国の人たちが「こんな言葉も健太郎さんは知ってるんだ!」って今大騒ぎになっています。
坂口 そんな騒ぎになってないんじゃない?(笑)
イ・セヨン もう朝鮮半島がザワザワしてます(笑)。
彼女の楽しそうな雰囲気に僕も救われました
――坂口さんはどうですか。
坂口 僕は彼女の作品に懸ける取り組みというか熱意が素敵だなと思いました。今回、本当に覚えることが多かったと思うんです。日本語もそうだし、あとはギターもランニングもしなくちゃいけなかったし。
イ・セヨン 確かに今回は覚えることがたくさんありました。日本語にギターにボーカルにランニングに車の運転に自転車も!(笑)
坂口 たとえば撮休があると、僕らは「明日休みだ!」となれるけど、彼女はその休みの間にギターやその他いろんな練習をしなくちゃいけない。僕らの見えないところですごく努力をされていたと思うんですね。でも現場に来たらまるで疲れなんて感じさせずに入ってきて。彼女の楽しそうな雰囲気に救われたスタッフさんはたくさんいると思うし、僕もその一人です。
イ・セヨン やらなきゃいけないことはたくさんありましたが、その中でもいちばん楽しかったのは日本語です。学習しながら、とっても興味が湧きました。
坂口 また日本語の上達スピードがすごいんですよ。
イ・セヨン 台本の中で繰り返し出てくる台詞がたくさんあったので、このフレーズはどういう意味なんだろうって気になって周りの人に聞いたり。日本語の先生に授業をしていただいたのですが、本当に楽しかったから、自分でもびっくりするくらいスッと頭の中に入っていきました。もちろん本番では緊張しましたけどね。
――特に好きな日本語はありますか。
イ・セヨン (日本語で)「もう別れよう」。
坂口 あったね、そんな台詞も(笑)。
イ・セヨン (日本語で)「言葉にできるわけじゃないけど言ってくれなきゃわかんないことだってあるでしょう」とか。クランクアップしてしばらく経ちましたが、今でも時々思い出しますね。
坂口 彼女は本当に楽しい人なんです。よく空いてる時間におしゃべりもして。
イ・セヨン 特定の単語が思い出せなくて言葉につまることがあったんですね。そのときに健太郎さんに教えてもらいました。(日本語で)「眠くて死にそう!」とか(笑)。
坂口 そうそう(笑)。で、日本語としては合ってるんだけど、「死にそう」っていう言葉はあんまり使わない方がいいかも……なんて話をしてました(笑)。
小説があったから、潤吾の想いが褪せることはなかった
――ホンと潤吾は5年の時を経て再会します。5年というのは長い月日のように感じますが、5年前の自分のことをお二人は覚えていますか。
坂口 覚えてないなあ。2019年ということは、ちょうど『イノセンス』とかをやってた時期ってことですよね。忙しかったことは覚えているけど、何を考えていたかは全然覚えていない。
イ・セヨン 私は覚えています。
坂口 本当に?
イ・セヨン どうしてかというと、私、5年前からサッカーが大好きになったんです。サッカーを好きになって私の人生は変わりましたね。心がヘルシーになったしポジティブになった!
坂口 そっか。5年前からなんですね。
イ・セヨン この作品の撮影中もトーナメント戦のサッカーの試合があって、勝ち上がっていけば韓国と日本が試合することになる予定だったのですごく楽しみにしていたんですが、実現しなくて…。とても残念で、次の日、現場で暗い表情でその話を健太郎さんにしたら「そういうことがあったんですね」と優しく声をかけてくれました。
坂口 あったね。現場のスタッフさんもサッカー好きな人が多くて。仕事をしながら、試合の映像を観たり。
イ・セヨン 私も観ていました(笑)。
坂口 夢中だったもんね(笑)。
イ・セヨン 仕事中なので、あんまり褒められたことではないかもしれないですけど、サッカーは私の人生で何よりも大切なものだから(笑)。
坂口 そういう時間も大事ですよ。質問に話を戻すと、確かに5年という月日はすごく長くて。その間、距離も離れていたのにずっとホンのことを想い続けた潤吾に対して、はたして僕ならできるだろうかと思ったんですね。特に潤吾の場合、5年ぶりに再会したときにまるで昨日のことのようにきらめく思い出の数々が甦ってきて。きっと潤吾があれだけ一途に想い続けられたのは、彼が小説を書いていたからだと思ったんです。ホンをモデルに書き続けた時間があったから潤吾の想いは褪せることはなかった。小説を書く時間こそが潤吾が最愛の人を想い続けられる時間だったんだろうなと感じました。
取材・文:横川良明 撮影:堺優史
<作品情報>
『愛のあとにくるもの』
Prime Videoにて配信中
10/15 12:00
ぴあ