モーリス・ベジャール・バレエ団が3年ぶりの日本公演。クイーンの名曲がダンスで炸裂する『バレエ・フォー・ライフ』ほか

モーリス・ベジャール・バレエ団の2024年日本公演が、9月21日(土)より東京・東京文化会館にて開催される。

『バレエ・フォー・ライフ』 photo: BBL-Guillermo Mendo Murillo

バレエから古い装飾をはぎ取り、多様な音楽と題材を融合させて、生と死を見つめる現代人の芸術として創作した天才振付家、モーリス・ベジャール。その舞台はバレエ・シーンに革新をもたらし、世界中の観衆を魅了してきた。日本では1967年の初来日以来、瞬く間に感性の鋭い人々の注目を集め、ブームを巻き起こした。2007年にベジャールがこの世を去って以降は、長年ベジャール・ダンサーとして活躍したジル・ロマンが師の志を受けて芸術監督に就任。本年3月からは、ジュリアン・ファヴローが暫定的にその任を引き継ぎ、ベジャール・レパートリーとともに、現代人に響く新たなダンスを上演している。

モーリス・ベジャール photo: BBL-Jean-Guy Python

ジュリアン・ファヴロー(芸術監督) photo: BBL-Anoush Abrar

モーリス・ベジャール・バレエ団は1967年の初来日を皮切りに、これまで18回の日本公演を行っており、日本にもファンが多い。1979年に、ジョルジュ・ドン主演により日本で初めて上演され紹介された「ボレロ」と、1982年に公開されたクロード・ルルーシュ監督の映画「愛と哀しみのボレロ」(物語の中でドンと20世紀バレエ団が「ボレロ」を踊った)をきっかけに、80~90年代にはバレエ界を超えた熱狂的なブームを巻き起こした。

3年ぶり19度目となる今回の日本公演は、東京公演、西宮公演、札幌公演が予定されており、東京公演ではAプロとBプロを上演。Aプロは、世界的ロック・バンド、クイーンの音楽を使って大ヒットを飛ばしてきた『バレエ・フォー・ライフ』。

『バレエ・フォー・ライフ』 photo: BBL-Guillermo Mendo Murillo

本作は、アカデミー賞4冠を獲得した映画「ボヘミアン・ラプソディ」(2018)で再び注目を浴び、以後2度にわたる来日公演も話題を呼んだ世界的ロック・バンド、クイーンの音楽を使い、ロックとバレエを融合させた奇跡のステージだ。ベジャールは、クイーンを象徴する存在だったヴォーカルのフレディ・マーキュリーと、ベジャール作品でカリスマ的な存在感を放ったダンサーのジョルジュ・ドンという、同時期にともに45歳で夭逝したふたりのアーティストへのオマージュとしてこの作品を創作。クイーンの17のきらめくヒット曲が響き渡る中、ステージではダンサーたちが「生」を炸裂させる。そこにはフレディと思しき人物もトレードマークだった衣裳を身に着けて登場。また、ところどころにモーツァルトの音楽が挿入され、病気や死、天国のイメージが鮮やかに対比される。クライマックスはフレディ、ドンをはじめとする犠牲者たちの追悼式ともいうべき厳かな雰囲気を帯び、客席は感動に包まれる。

『バレエ・フォー・ライフ』 photo: BBL-Elena Morosetti

音楽に正面から向き合い寄り添った作品の豊饒さと圧倒感

Bプロでは不朽の傑作『ボレロ』をはじめとして、デュエット『2人のためのアダージオ』、ベジャールによる祝祭的ストラヴィンスキー・バレエ『コンセルト・アン・レ』、前芸術監督のジル・ロマンがコロナ禍に踊る喜びを表現した『だから踊ろう…!』を加えた全4作が上演される。

ジル・ロマン振付『だから踊ろう…!』 photo: BBL - Gregory Batardon

Bプロのオープニング『だから踊ろう…!』は、コロナ禍のもとでカンパニーを率いていたジル・ロマンが、困難な状況下で“踊る喜び”を表現することを念頭に創作。ロマンは「そのダンスの喜びを体現」し2021年に没したダンサーのパトリック・デュポンに本作を捧げている。

これに続くのはベジャール珠玉の3作。『2人のためのアダージオ』は1986年初演の『マルロー、あるいは神々の変貌』からの抜粋で、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタにのせて、ある男と”死“を匂わせる女の濃厚なダンスが踊られる。『コンセルト・アン・レ』は、ストラヴィンスキーの同名のヴァイオリン協奏曲ニ調を、ひと組の主役ペアと男性ソリスト、女性群舞で視覚化するベジャールには珍しいネオ・クラシカルなバレエ。フィナーレには規律から脱したダンサーたちが祝祭的なダンスを繰り広げる。そしてプログラムの掉尾を飾るのが『ボレロ』。巨大な赤いテーブルの上で踊る孤高の“メロディ”と、そのカリスマに導かれて群がる “リズム”たち。ラヴェルが構築した精巧な音楽をダンスで鮮やかに展開しながら、爆発的な絶頂をもって終結し、観る者に衝撃とカタルシスを与える、ベジャール不滅の傑作だ。

『2人のためのアダージオ』 photo: BBL - Gregory Batardon

『コンチェルト・アン・レ』 photo: BBL - Gregory Batardon

『ボレロ』 photo: BBL - Gregory Batardon

時代とともに歩み、常に熱狂を巻き起こしてきたモーリス・ベジャール・バレエ団の2024年日本公演をお見逃しなく。チケットは発売中。

<公演情報>
モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演

Aプロ
■『バレエ・フォー・ライフ』
振付:モーリス・ベジャール
音楽:クイーン/ W.A. モーツァルト
衣裳:ジャンニ・ヴェルサーチ

Bプロ
■『だから踊ろう…!』
振付:ジル・ロマン
音楽:ジョン・ゾーン、シティパーカッション、ボブ・ディラン
衣裳:アンリ・ダヴィラ
照明:ドミニク・ロマン

■『2人のためのアダージオ』
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
衣裳:アンリ・ダヴィラ
照明:ルーカス・ボルジョー

■『コンセルト・アン・レ』
振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
衣裳:アンリ・ダヴィラ

■『ボレロ』
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

【東京公演】
Aプロ
2024年9月21日(土)〜9月23日(月・祝)
Bプロ
2024年9月27日(金)〜9月29日(日)
会場:東京文化会館 大ホール

【西宮公演】(『バレエ・フォー・ライフ』)
2024年10月2日(水)
会場:兵庫県立芸術文化センター

【札幌公演】(『バレエ・フォー・ライフ』)
2024年10月6日(日)
会場:札幌文化芸術劇場hitaru

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2418474

公式サイト:
https://www.nbs.or.jp/stages/2024/bejart/

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