今秋、6年ぶりの日本公演でドラマティックバレエの傑作『椿姫』『オネーギン』を上演 シュツットガルト・バレエ団記者会見
2024年11月、ドイツの名門カンパニー、シュツットガルト・バレエ団が日本公演を行う。7月29日に都内で実施された記者会見では、タマシュ・デートリッヒ芸術監督と、「第17回世界バレエフェスティバル」出演のために来日した同バレエ団の4名のダンサー(プリンシパルとしてカンパニーを牽引するフリーデマン・フォーゲル、エリサ・バデネス、新鋭のマッケンジー・ブラウン、先にプリンシパル昇進が発表されたばかりのホープ、ガブリエル・フィゲレド)が登壇、日本公演および上演作品への思いを明かした。
6年ぶりのフルカンパニー来日に向けて
冒頭の挨拶で、「6年ぶりにフルカンパニーで来日できることを、とても嬉しく思っています」と述べたデートリッヒ。2022年に予定されていたシュツットガルト・バレエ団日本公演は、コロナ禍の中での制限により実現困難となり、急遽、プリンシパルをはじめとするダンサーたちによるガラ公演に変更された。デートリッヒは、「当時はとても難しい時期でしたが、バレエはずっと変わらずに続いていると世界に発信すべきと考えたのです」と振り返り、「ガブリエルはその時メンバーに選ばれていましたが、直前に新型コロナの検査で陽性となり来日できず、今回が東京文化会館初登場。契約はこれからですが、彼は来シーズンからプリンシパルです。マッケンジーも今シーズンからプリンシパルとして活躍しています」と、若きスターたちを紹介した。
日本公演での上演作品は、シュツットガルト・バレエ団創設振付家ジョン・クランコによる『オネーギン』と、50年にわたりハンブルク・バレエ団を率いたジョン・ノイマイヤーが、1978年にシュツットガルト・バレエ団で振付けた『椿姫』。いずれも、現代のバレエを代表する天才振付家によるドラマティックバレエの傑作だ。
「『オネーギン』は、1973年、ジョン・クランコが亡くなった直後に日本で上演されて以来、人気の高い作品ですが、極めて重要なバレエです。また、ツアーでの『椿姫』上演をノイマイヤーが認めてくれたことを、とても光栄に思います。ノイマイヤーも来日して、東京文化会館での舞台を手伝ってくださると聞いています。ダンサーにとっても特別な機会となるでしょう。
初日の『オネーギン』では、フリーデマンとエリサがオネーギンとタチヤーナを踊ります。『椿姫』ではマッケンジーがプリュダンスを、ガブリエルは初めてデ・グリューを演じます。ふたりは『オネーギン』でオリガとレンスキーを一緒に踊ることになっています」(デートリッヒ)
続いてマイクを持ったフォーゲルは、「まずは今回の世界バレエフェスティバルのAプロで、エリサとともに『椿姫』のパ・ド・ドゥを踊ります。日本公演で踊る『オネーギン』も『椿姫』も、シュツットガルト・バレエ団がとても大切にしている作品。素晴らしいプログラムですから、待ちきれません」と意気込む。バデネスも「とてもワクワクしています! シュツットガルト・バレエ団ならではのふたつの美しいレパートリー。たくさんの役柄を観ていただくことができます。どちらのバレエも、大いに楽しんでいただけると思います」と笑顔を見せた。
「初めての世界バレエフェスティバルへの参加、秋のフルカンパニーによるツアーへの初参加に、とても興奮しています」と話すのはブラウン。「両作品ともにバレエ団にとって特別な作品ですが、それを東京文化会館で踊れるのは特別なこと。尊敬すべき素晴らしいダンサーたちと一緒に踊ることができて、とても光栄です」と目を輝かせる。フィゲレドも、「11月にフルカンパニーで、素晴らしいアーティストたちと一緒に再来日できることをとても楽しみにしています」と、控えめながらしっかりとした言葉で思いを述べた。
ふたりの天才、クランコとノイマイヤーの偉業
その後の質疑応答、クランコとノイマイヤーのスタイルの違いや面白さについて質問が寄せられると、「クランコとノイマイヤーは、とても違うようで、ある意味で似ています」と答えたのはフォーゲル。「ふたりとも、動きを通して感情を伝える天才。複雑な物語でも動きで伝え、そこには言葉以上に強く心に訴えるものがある」。またバデネスは、「ふたりとも偉大なストーリーテラー。カンパニーには歴史、関わってきた人々がいるので、私たちはクランコのヴィジョンについて知ることができ、彼のバレエを日々進化させることができる。『椿姫』については、ノイマイヤーが一緒に来てくださいますが、彼は一人ひとりの踊り手のことをよく考え、常に変化させ、舞台はいつも違ったものになるのです」。
プリンシパルとしての意気込みについて尋ねられたブラウンは「もちろん、野心はあります。『オネーギン』『椿姫』を踊れること、バレエ団の一員となれたことは本当に光栄で、ダンサーとして、アーティストとして、人間として成長し続けたい」。新プリンシパルとなるフィゲレドも、「タマシュには、信頼し、サポートしてくださることへの感謝を伝えたい。それは特別なことだと思いますし、努力を続けるためのモチベーションを高めてくれます。『オネーギン』で踊るレンスキーは、感情のジェットコースターのような人物で、大好きな役柄。心から演じ、表現したいと思います」。
オネーギン役について、フォーゲルから印象的な発言も。「計画はするけれど、計画できないこともある。重要なのは、その役を生きること。同じように繰り返すことはできません。毎回違うので、飽きることはないんです。それは対話であり、パートナーや他のキャラクターを通して生まれるものがある。ひとりだけでできるものではなく、集団でつくりあげていくものなんです」。
ほかにも、コロナ禍での活動、若い振付家たちの育成についてなどさまざまな話題が飛び出した。真摯に答えるデートリッヒの語り口は、シュツットガルト・バレエ団が、クランコの遺産を受け継ぎつつ、常に未来を見据えるカンパニーであることを強く印象付けた。秋の日本公演を、大いに期待したい。
取材・文:加藤智子
<公演情報>
シュツットガルト・バレエ団
2024年日本公演
◎『オネーギン』全3幕
振付・演出:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
11月2日(土)~11月4日(月・休)
※各日14時開演
会場:東京・東京文化会館
◎『椿姫』プロローグ付全3幕
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
11月8日(金)~11月10日(日)
※8日(金)18時半開演、9(土)・10(日)※各日14時開演
会場:東京・東京文化会館
07/31 19:00
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