東京都交響楽団に指揮ヤクブ・フルシャが帰ってくる

かつて都響で首席客演指揮者を務めたヤクブ・フルシャが7年ぶりに帰ってくる。しかもプログラムはフルシャならではのチェコ音楽集。いやがうえにも期待が高まる。

チェコ出身のフルシャが都響の首席客演指揮者に就任したのは2010年のこと。就任時の記者懇談会で「都響とは初めてのリハーサルからお互いの気持ちが通じ合った」と語っていたことを思い出す。当時29歳のフルシャは、すでにヨーロッパで頭角をあらわしており、その力量は2018年まで続いた首席客演指揮者時代に存分に発揮されてきた。多くの人々の予想通り、フルシャは急速に活躍の場を広げ、現在はバンベルク交響楽団の首席指揮者を務める。

2018年にはベルリン・フィルにデビュー。デビュー以上に驚嘆すべきなのは19年、21年、23年とくりかえし同楽団の指揮台に招かれ、狭き門の「常連」枠に収まっていること。25/26シーズンからは英国ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督に就任することも決まっており、フルシャが時代を代表する指揮者のひとりになりつつあることを実感する。

ヤクブ・フルシャ (C)Andreas Herzau

今回フルシャが用意したのは、スメタナの歌劇「リブシェ」序曲、ヤナーチェク(フルシャ編曲)の歌劇「利口な女狐の物語」大組曲、ドヴォルザークの交響曲第3番という凝ったプログラム。どれも聴く機会はかなり貴重だ。スメタナは今年生誕200年。「リブシェ」序曲冒頭の輝かしいファンファーレは、チェコの国家式典でも用いられている。ドヴォルザークの交響曲第3番は作曲者がブレイクする前の意欲作。型にはまらないおもしろさがある。

最大の聴きものは、フルシャ自身の編曲によるヤナーチェクの歌劇「利口な女狐の物語」大組曲の日本初演だろう。「利口な女狐の物語」にはこれまでにも組曲がいくつか編まれているが、いずれもこのオペラのごく一部分の魅力を伝えるものでしかなかった。今回の編曲は約30分の長さを持ち、オペラのストーリーに添った順序で音楽が組み立てられているという。みずみずしく独創性豊かな音楽にあふれたこのオペラのエッセンスを伝えてくれる待望の組曲の登場を喜びたい。

フルシャはほかにブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番(独奏:五明佳廉)とブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」(コーストヴェット:1878/80年)を組合わせたプログラムも指揮する。こちらも語り継がれる名演になるのではないだろうか。

文:音楽ライター・飯尾洋一

ヤクブ・フルシャ指揮
東京都交響楽団

6月28日(金) 14:00開演
6月29日(土) 14:00開演
場所:東京芸術劇場コンサートホール

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347611
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347612

スメタナ:歌劇『リブシェ』序曲【スメタナ生誕200年記念】
ヤナーチェク(フルシャ編曲):歌劇『利口な女狐の物語』大組曲 [日本初演]
ドヴォルザーク:交響曲第3番 変ホ長調 op.10

7月5日(金) 14:00開演
サントリーホール 大ホール

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451346

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 op.26
ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 WAB104《ロマンティック》(コーストヴェット:1878/80年)

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