村上春樹「90歳を超えておられましたが、その音色はじつに若々しく…」ジャズ・クラリネットのレジェンド・北村英治氏との共演を回顧

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。11月26日(日)の放送は「村上RADIO~秋の夜長はジャズ・クラリネットで~」をオンエア。村上DJが所有しているアナログ・レコードをメインに、スイング時代から現代まで、優れたクラリネット演奏の楽曲をかけていきました。
この記事では、中盤4曲について語ったパートを紹介します。



◆Pee Wee Russell 「Ask Me Now!」
ピー・ウィー・ラッセルのクラリネットを聴いてください。セロニアス・モンクの「アスク・ミー・ナウ!」。1963年の吹き込みです。
ピー・ウィーは1906年の生まれで、世代的にはどっぷりスイング時代の人なんですが、革新を恐れない人で、1960年代に入ってからセロニアス・モンクやオーネット・コールマンの曲なんかを積極的に取り上げて、その時代を超えた個性的なスタイルを高く評価されました。

◆Ken Peplowski Quartet「Lotus Blossom」
今日おかけする中では最新の録音になります。ケン・ペプロウスキーがビリー・ストレイホーンの名曲「ロータス・ブロッサム」を、意外にもクラリネットで演奏します。2006年の録音です。
ペプロフスキーさんは現役ばりばりのジャズ・クラリネット奏者として第一線でがんばっておられて、クラリネット好きには得がたい、貴重な存在になっています。心に浸みる美しい演奏です。

◆Jimmie Noone「Japansy」
ここでまたぐっと古い録音になります。ジミー・ヌーンが「ジャパンジー」を演奏します。ヌーンは1895年生まれ、1944年には亡くなっています。でも今聴いても決して古くさくはありません。
美しい音色、抜群のテクニック、洗練された音楽性、どれをとっても一級品です。まず最初にヌーンのソロがあり、歌が入り、それからピート・ブラウンのアルトサックスとヌーンのクラリネットの絡みになります。この絡みが本当に素敵なんです。そのへんをひとつじっくり聴いてみてください。1937年の録音です。「ジャパンジー」。


◆北村英治 & Teddy Wilson「It's Been A Long Long Time」
北村英治さんは4 年前に「村上JAM」に出演してくださいました。大ヴェテラン、もう90歳を超えておられましたが、その音色はじつに若々しく、一堂思わず言葉を失ってしまいました。
僕の昔からの愛聴盤を聴いてください。北村さんとテディ・ウィルソンが日本で共演した「It's Been A Long, Long Time(ずいぶん久しぶりだね)」、どこまでも優しく親密な、心のこもった演奏です。

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11月26日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年12月4日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO ~秋の夜長はジャズ・クラリネットで~
放送日時:11月26日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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