ドラえもん役の大山のぶ代さんが死去 90歳

大山のぶ代さん(03年撮影)

 国民的アニメ「ドラえもん」のテレビ朝日版で、ドラえもんの声を26年間務めた声優の大山のぶ代(おおやま・のぶよ、本名・山下 羨代=やました・のぶよ)さんが老衰のため都内の病院で死去したことが、11日、分かった。90歳だった。大山さんは2012年に認知症と診断され、16年からは高齢者施設に入居。17年には夫で俳優の砂川啓介さん(享年80)が亡くなり、施設の職員らと晩年を過ごしていた。

 

 「ぼく、ドラえもんです。ぐふふ…」。特徴的なだみ声で「ドラえもん」を支えた国民的声優が旅立った。大山さんは2012年秋にアルツハイマー型認知症との診断を受け、15年に夫の砂川さんがこれを公表。当時は在宅での介護が続いていたが、16年に砂川さんが尿管がんを患ったことから以降は高齢者施設で暮らしていた。

 東京都生まれ。1956年に女優デビューし、翌年から声優としても活動を始めた。転機は79年。藤子・F・不二雄さんの代表的コミックを原作に、22世紀から現代へ来た猫形ロボットを主人公としたテレビ朝日系アニメ「ドラえもん」がスタートし、個性的な地声で主人公を演じると、たちまち人気を博し、同局の看板番組となった。若返りを図りキャストが一新された2005年3月まで声優を務め、30代以上の視聴者層にとっては「ドラえもん」イコール大山のぶ代の声であった。

 「ドラえもん」の声を藤子さんに初めて聴かせたとき、「ドラえもんはこんな声をしていたのか」と言われたという。大山さんは感激し、「うれしい。この声とは離れない」と、我が子のようにドラえもんの声を守っていくことを誓った。

 私生活では、64年の舞台共演がきっかけで、NHKの子供番組で「体操のおにいさん」として活躍した砂川さんと結婚。“おしどり夫婦”と呼ばれたが、32歳の時に死産を経験。38歳の時に生まれた女児は先天性の疾患のため生後3か月で亡くし、以降は子宝に恵まれなかった。

 晩年は病との闘いだった。01年に直腸がんをわずらい、「ドラえもん」のアフレコを続けながら闘病。08年には脳梗塞で入院。退院後、体は回復したものの突然怒り出したり、物忘れが激しくなったといい、12年にアルツハイマー型認知症と診断された。関係者によると、大山さんの記憶は徐々に薄れていき「テレビで『ドラえもん』を見ていてもよく分かっていない様子だった」という。

 17年に夫の砂川さんが亡くなった際には最期に立ち会えず、数日後、棺の中の夫と対面し涙を流したという大山さん。最近は施設で穏やかに過ごしていたといい、30年担当してきた女性マネジャーが定期的に通っていた。施設では明るい人柄で入居者の人気者だったという。

 テレ朝版「ドラえもん」の初代キャストでは、ジャイアン役のたてかべ和也さん(享年80)が15年に、スネ夫役の肝付兼太さん(享年80)が16年に、のび太役の小原乃梨子さん(享年88)が今年7月に死去している。大山さんの唯一無二の声と笑顔が、空の向こうに消えていった。

 

 ◆大山 のぶ代(おおやま・のぶよ)1933年10月16日、東京都生まれ。都立三田高校在学中に俳優座の養成所に入所。56年にNHKドラマ「この瞳」でデビュー。79年4月からテレビ朝日系アニメ「ドラえもん」の声を26年間担当。キャスト一新した2005年3月に水田わさびに引き継いだ。料理研究家としての一面もあり、著書「大山のぶ代のおもしろ酒肴」(81年)はベストセラーに。ゲーム「アルカノイド」の達人としても知られた。

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