現役東大生&早大生のお笑いコンビ・ナユタ「卒業しても芸人」

現在、アマチュアお笑い界を牽引しているのがナユタの二人だ。現役東大生のオノハラ、早大生のホリコシからなるコンビで、2023年にアマチュア同士のコンビで唯一、『M-1グランプリ』準々決勝に進出し、大きなインパクトを残した。さらに今年はじめには『大学生M-1グランプリ』を制覇している。

ネタでのセンスあふれる言葉選びと、舞台に立っても華のある二人には、すでにプロの芸人たちも一目置くところ。ニュースクランチ編集部は、コンビ結成からネタ作り、そして今後の展望についてインタビューした。

▲ナユタ(オノハラ / ホリコシ)【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-INTERVIEW】

『M-1』きっかけでお笑いにのめり込んでいった

――お二人がお笑いを好きになったきっかけを教えてください。

ホリコシ:やっぱり『M-1グランプリ』です。高校の頃から見始めて、気づいたら大学お笑いまでやっていました。

オノハラ:僕は小さい頃からドリフ(ザ・ドリフターズ)が好きで、いろいろなお笑いをずっと見てました。『M-1』も大きいですが、大学お笑いを始める前から『NOROSHI』という、大学生芸人の大会もYouTubeで見ていて刺激を受けていました。

ちょうど自分たちが大学お笑いをやり始めた頃、ニューヨークさんが「大学生芸人特集」というテーマでYouTubeの動画をアップして、大学生芸人が増えたし、認知も上がって、のめり込んでいく環境が整っていたと思います。

――お二人とも子どもの頃からお笑いが好きだったんですね。学校のクラスでは中心となって笑わせるようなタイプでしたか?

ホリコシ:いや、全然ですね。ただのお笑い好きなヤツ。

オノハラ:クラスの中心でめっちゃふざけるとかじゃないですけど、面白いこと考えたりするのが好きなタイプ。好きなのであえてこう呼ばせていただきますが、僕も松ちゃん(松本人志)タイプですね(笑)。

――若いお二人でも、松本さんの影響力というのは半端ないんですね。

オノハラ:もちろんですよ!

ホリコシ:僕らより上の世代の方にとってのダウンタウンさんと、僕らにとってのダウンタウンさんの衝撃って別物なのかなと思いますけど、それでもスゴさはわかります。

オノハラ:僕は同じ世代でも、かなりダウンタウンさんが好きなほうだと思います。関西ローカルの『松本家の休日』までチェックして見ていました。

――大学お笑い界全体で言うと、誰を目指す方が多いのでしょうか?

ホリコシ:やっぱり真空(ジェシカ)さんがすごいですね。真空さんはみんな好きですし、ああなりたいと思っている人が多いんじゃないでしょうか。

オノハラ:大学お笑い出身ですし、自分たちが憧れる対象として一番しっくり来る。売れても自分たちがやりたいことを折れずにやり続けているのはスゴいなと思います。

▲「真空ジェシカさんは大学お笑いにとって憧れの対象」

――真空ジェシカさんは、冠ラジオ番組の『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』も人気ですよね。お二人もラジオが好きとのことですが。

ホリコシ:高校生の頃、四千頭身さんの『オールナイトニッポン0』にハマって、オードリーさんの『オールナイトニッポン』も聴き始めました。大学入ってからは、ラジ父とか霜降り明星さん(のオールナイトニッポン)とか聴いています。

オノハラ:ラジオで最初に聴き始めたのは、TOKYO FMの『SCHOOL OF LOCK!』ですね。とーやま校長(グランジ・遠山大輔)世代です。最近は真空さんのラジオはもちろんですし、友達の影響で『マユリカのうなげろりん!!』や『きしたかののブタピエロ』も聞いてます。

――ここで改めて、ナユタ結成の経緯を教えてください。

ホリコシ:『早稲田大学お笑い工房LUDO』というインカレのサークルがあって、そこで出会いました。最初は仲の良い数人組のうちの二人で、各々別のコンビでやっていました。でも、大学お笑いは何個もコンビを組むのが普通なので、次は一緒にやってみようかとなりました。それから、小さいライブですけど、すぐ1位になったり結果が出たので、続けてみようかって。

組んですぐに出た『M-1』で2回戦に行ったんですよ。2回戦に行くのって4年生でも難しいとされていたので、“これはイケるんじゃないかな?”と続けてたら、翌年には準々決勝へ行けました。去年やった2つのネタは冗談半分で“準々決勝に行ってもおかしくないよな”と話していたんですけど、そうしたら本当に行けちゃったという感じでした。

調子に乗っていると思われないようにしてます

――こうしてお話しをしていると、お二人とも若くして結果を出されているのに、尖りがないですよね。とても素直でフラット。

ホリコシ:人間的に尖りみたいなものはないですね。二人とも人の悪口とかめったに言ったりしないですし。

オノハラ:いや、でも悪口は面白いですよ。

――あはははは!(笑)

オノハラ:今はそんなこと言うと“あいつら調子に乗ってる”とか思われちゃうので、しないですけど。

ホリコシ:最初の頃は「あいつは面白くないだろ」とか言ってましたけど、周りに認められちゃうと、悪口を言う相手も近くにいないというか。だから、僕らが後輩とか同期に言われている立場だと思います。

オノハラ:本当に! 相方には気をつけてほしいです。僕らなんて、早めにある程度、結果を出したから、ただでさえ悪く見られやすいので、調子に乗っていると思われないように気をつけていかないと。

この前、LUDOの定期ライブで、ホリコシが「あれ、今のLUDOってこんな感じなんだ~」とか言って、先輩風を吹かせていて……(笑)。あれ恥ずかしかったな。

ホリコシ:何も考えてなかった(笑)。

オノハラ:そうそう、何も考えていないからこそだと思うんですけど、調子に乗っているように思われる言動は損なので、気をつけてほしいです。

▲オノハラ「目立つからこそ見られ方には気をつけたい」

――たしかに、大学在学中にテレビやラジオなどのメディアに出て、これだけ知られるというのは特殊な環境ではありますよね。

ホリコシ:僕らを知って、LUDOに入ってきてくれる子もいるらしくて、ただのサークルの4年生なのに異常なことですよ、ありがたいですけど。だから、きちんとしなきゃというか、ナユタらしく、ということをどっかで意識しているのはありますね。

――ナユタらしくというお話がありましたが、セルフブランディングで何か意識されていることはありますか?

ホリコシ:好きで着ているんですけど、衣装にしているクッキーモンスターのTシャツは意図的です。『M-1』の予選はスーツの方が多いので、Tシャツってだけで異質感があって、アマチュア感も出るんで、“ちょっと見てみようか”となるかもと思って着たんです。僕らの雰囲気にも合っていますし、衣装はこれでよかったかなと思います。

――ナユタというコンビ名も、お二人にすごく合っている印象です。

ホリコシ:僕の中で「ナユタ」というカタカナの字面がカッコイイなと思っていて、他にもいくつか考えたんですけど、一度ナユタで行こうとなったのが、今でも続いている感じです。

自分たちのネタはあまり練習しないほうがいい

――ナユタといえば言葉遊びが軸となるネタが特徴だと思います。今の形になるまでに、どのような変遷があったのでしょうか?

ホリコシ:“言葉遊びでネタを作ろう”というより、ただ二人でふざけていて、それがたまたま言葉遊びだったんです。ふざけていたところから、面白いやつだけを選んでいったら、言葉遊びになったという感じですかね。

▲ふざけて遊んでいたところから自然と今のスタイルになっていった

――自分たちとしては誰の影響を受けていると感じますか?

オノハラ:真空さん、金魚番長さん。あとは風藤松原さんですね。僕らが好きなので、それが出ちゃうというか。

ホリコシ:無意識のうちにね。

――ふざけの延長線上にネタがあるということですが、ネタ作りも二人で話しながら?

ホリコシ:そうですね。どちらかが一人で、というのはほとんどないですね。オノハラが設定を持ってきて、僕がボケを出していくこともあるし、逆もあります。自分だけでは思いつかないボケが何個も足されていくので、そのぶんネタの成長が早くなると感じます。

――成長が早いと、ネタが100%のパフォーマンスに達するのも早くなりますよね。

ホリコシ:ただ、僕らあまり練習はしないんですよ。オノハラが覚えられれば、僕はそれにツッコむだけなので。あとはオノハラが順番通りに言えるかどうかなんです。

オノハラ:あんまり練習したくないですね、わざとらしくなっちゃうというか。

――たしかに、ナユタのネタはあまり“練習感”が出ないほうがいい気がします。

ホリコシ:僕もそう思っています。やり慣れていないときのほうが、僕らも面白いと思っているし、お客さんにも“面白い”を共有できる気がしますね。

先輩相手に1回しっかり勝ちたい

――最近のライブシーンでは、何か変化などありましたか?

オノハラ:学生相手のライブだと恥ずかしいのかわかんないですけど、ホリコシがこなれている感じを出すのはやめてほしいですね。いつも言わないのに「はいどうも、こんばんは、皆さんどうぞよろしくお願いします」みたいな入りをして、最後もスッと終わってくれないんですよ。

ホリコシ:同じ学生の前で真っ向からネタやるの恥ずかしくて……。

オノハラ:それ最悪。学生の前だとちょっと手を抜いている…?

ホリコシ:抜いてはない!

オノハラ:まっすぐやらないんですよ、変な感じで。学生の前なんて一番ちゃんとやらないといけないのに。

――(笑)。ただ、ポジティブに見ると、ネタの台本からはみ出していけているということでもありますよね。

ホリコシ:最近、アドリブは楽しいなって思いますね。アドリブから良いボケが出ることもあるので、今まではなかったんですけど、そういうのがあってもいいなと思います。

オノハラ:アドリブで良いのが生まれるときもあるんですけど、意味もなくダラダラ伸ばして喋るときもあって、それは勘弁してほしいなと思います。

ホリコシ:一応、俺の中ではビジョンが見えてるの。ここでウケるかなと思ったら、ウケなかったというだけで(笑)。

▲ホリコシ「最近、アドリブは楽しいなって思いますね」

――K-PROなど外のライブにもよく出ていると思いますが、手応えはどうでしょうか?

ホリコシ:『若武者』というK-PROさんのバトルライブに出ているんですけど、そこって芸歴2~3年目で僕らより少し上の人たちと戦わないといけないんです。まさに今、お笑い筋肉がムキムキで強いんですよね。なんとかなんとか食らいついていってる感じです。

健闘はしているとは思うんですが、1回しっかり勝ちたいですね。まだ勝てていないので。1回勝つと変わるかなと思います。

東大まで行って芸人を続けていいのかな?

――お二人とも大学4年生で、来春には卒業ですが、今後の進路は芸人ですか?

二人:そうですね。

――お二人で確認しあったのでしょうか?

ホリコシ:こういうインタビューとかで互いに知る感じでした。改めて意思確認とかはしなかったので、探り探り就活している時期もあったんですけど(笑)。自分の中で普通に働いている姿をイメージできなかったんです。

――オノハラさんは東大生ですが、芸人をやっていくことについて、ご両親に反対されたりとかはなかったんですか?

オノハラ:両親には言ってなかったんですけど、インタビューとかを見て知っていたみたいです。“せっかく東大に入ったのに、このまま芸人になっていいのか?”って進路に悩んでいるときもあったんです。そこで親に相談したら「え? 芸人になりなよ。もったいない!」って、はっきり言われて。てっきり就活を勧められると思っていたので、びっくりしました。

――今後の目標を教えてください。

オノハラ:『M-1』の準決勝に行きたいです。

ホリコシ:まず準決勝。決勝に行けたらヤバいですね。もう相当なニュースですよ。決勝に行って売れちゃいたいです。

――『M-1』でもまた結果を残すと、さらに活躍の場を広げていきそうですが、どういう番組に出たいでしょうか?

ホリコシ:『逃走中』とかですかね。ザ・テレビという感じで。

オノハラ:僕は音楽仕事がめちゃくちゃしたいです。

――音楽がお好きなんですね。

オノハラ:好きなミュージシャンはたくさんいるんですけど、特にアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)さん、フジファブリックさんが好きです。単独ライブの名前も(アジカンの曲名にある)『ループ&ループ』でした。

――単独ライブはこの前初めて開催して、大盛況でしたね。今後のナユタとしてのキャリアプランはどう考えているでしょうか?

ホリコシ:単独ライブは楽しいですし、いろんな所へ行ってみたいです。今後もライブは大事にしたいと思っていますし、テレビだけやライブだけということにはなりたくないです。

オノハラ:令和ロマンさんみたいに、舞台とメディアのバランスをうまくとっていけたらと思います。

――今後、ライバルとなりそうな同年代の芸人さんはいますか?

オノハラ:「無尽蔵」さんはすごいなと思います。

ホリコシ:あとは「天下茶屋」という大学お笑いの同期はいるんですけど、面白いですね。いつ『M-1』で来てもおかしくないと思います。

――最近は『M-1グランプリ』以外にも『ABCお笑いグランプリ』や『ツギクル芸人グランプリ2024』など多くの賞レースが盛り上がっていますよね。

ホリコシ:めっちゃ興味ありますよ。『UNDER5(AWARD)』も楽しかったですし、『UNDER 25(OWARAI CHAMPIONSHIP)』も出ますし。ABCとかツギクルは事務所に所属していないので、出られないんですけど楽しそうだし、そのために事務所に入りたいんですけど、悩んでいるところです。

(取材:まっつ)


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