FNS27時間テレビ総合演出が語る「霜降り・チョコプラ・ハナコと高校生の熱い掛け算」
コロナ禍による休止を経て、昨年復活した『FNS27時間テレビ』。今年はフジテレビ系で放送中の『新しいカギ』をベースに、『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』(7月20日18時30分~21日21時54分)というタイトルで放送される。
『新しいカギ』の人気コンテンツ「学校かくれんぼ」や「高校生クイズ何問目?」はもちろん、フジテレビの人気番組『千鳥の鬼レンチャン』や『逃走中』も27時間テレビの特別バージョンとして放送される。
ニュースクランチ編集部は、この『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』の総合演出を担当する、『新しいカギ』演出の田中良樹氏とディレクターの杉野幹典氏、この二人に27時間テレビへの意気込みと見どころについて聞いた。
『新しいカギ』ベースが決まったのは1年前
昨年、『千鳥の鬼レンチャン』をベースに4年ぶりに放送された『FNS27時間テレビ』。全てのパートでコア(13~49歳)、個人、世帯が同時間帯横並びトップとなる高視聴率をマークしたが、今年『新しいカギ』をベースにするというのは、昨年の27時間テレビの放送終了後、8月にはすでに決まっていたという。
杉野:“確実に何かスゴいことを言い渡されるんだろうな”という雰囲気を感じながら、矢﨑(裕明)さん(『新しいカギ』のチーフプロデューサー)と僕と田中の3人が社長室に呼ばれて、「来年の『27時間テレビ』は『新しいカギ』をベースに行くぞ」と言い渡されました。もともと僕は、『27時間テレビ』が昨年復活したときに、面白かったことがすごくうれしくて。やはり、一番近い記憶として、昨年の『27時間テレビ』があったので、引き受けるにあたって大きな後押しになりました。
田中:入社11年目なんですけど“そういえば、社長室に入ったことないな”って(笑)。なので、“『27時間テレビ』をやるのか”と同時に“社長室って、こんな感じなんだ”とか考えてました。子どもの頃から『27時間テレビ』という番組をずっと見てきていたので、制作に関われることになってワクワクしました。
“総合演出が二人”ということについて、意見の衝突などの心配はなかったのだろうか。その疑問を投げかけると、“うーん、あまり対立した記憶がないんですよね”というのが二人の共通認識であった。
田中:杉野がどう思ってるかはわからないですが、もちろん、この番組はどっちが担当するみたいなのは分けつつ、それぞれの考え方が真逆な気がしているので、あんまり明確に分けなくても、うまく補いあえている気がします。
杉野はすごく広い視野を持っていて冷静だし、自分はどっちかといえば1個の物事にすごく時間をかけちゃう。僕は優先順位をつけるのが苦手で、前のめりで考え込んでいると、杉野が引き戻してくれたりしますね。
杉野:お笑いのコンビの関係性に近いと思います。ボケがいてツッコミがいるようなもので、彼には彼の領域、自分には自分の領域があるっていう感じですかね。最終的な決定権は、確かに番組ごとに分担しているのですが、ラストに向かっていく過程は二人三脚です。
「学校かくれんぼ」は(田中)良樹が作りあげてきたもので、彼への信頼がありますから、そこには僕はノータッチです。ただ、そのほかのコーナー『(さんまのお笑い)向上委員会』や、深夜の「粗品ゲーム(~日本一不条理なお笑いバトル~)」は、僕が普段芸人さんと接する機会が多いこともあって、自然に「そっちは杉野のほうでちょっと頼むよ」となることが多いですね。
印象に強く残っているSMAPの27時間テレビ
『FNS27時間テレビ』を引き受けて、まず二人がしたのは過去の27時間テレビを見ることだった。
杉野:特に印象に残っているのは2014年。僕らが入社したのが2014年なんですけど、その年はSMAPが総合司会だったんです。すごく華やかだったなという印象があったんですが、実際に見返して改めて“スゴいな”と。番組のフィナーレ、SMAPのメンバーが暑い外のステージで、45分ノンストップで全力で歌って踊るプログラムがあって、とにかく圧倒されたんです。
ご本人たちがもともと持っているスター性とか、普段テレビで見せているスゴさが、27時間を駆け抜けてきた最後だからこそ、さらに磨きがかかってあふれ出てくる。これこそ“エンタメの極み”だなと思いました。
田中:もともと『新しいカギ』を作るうえで、個人的には霜降り明星、チョコレートプラネット、ハナコ、7人のグループショットをかなり大事にしているんです。誰一人似たような体形の人がいなくて、並んだときにすごくカッコいい。『HUNTER×HUNTER』に出てくる幻影旅団みたいだなと思っていて(笑)。
僕は以前に『関ジャニ∞クロニクル』という番組を担当していたんですけど、SMAPも関ジャニ∞も、面白さはもちろん、カッコよさがあったと思っていて。特にSMAPがメインの27時間テレビは、面白さとカッコよさのパッケージだったので、今回は芸人さんがメインの27時間テレビですけど、カッコよさはすごく意識しています。それはやはり、2014年の27時間テレビから影響を受けているんだと思います。
その影響は特に番組の終盤、日曜日の18時50分ごろの「カギダンススタジアム」に強く現れているそう。粗品を除くカギメンバーと高校生のダンスチームが超本気で練習し、ひと夏の青春を捧げたオリジナルダンスでNo.1を目指すプログラムだ。
田中:『めちゃイケ(めちゃ×2イケてるッ!)』がベースの2015年の27時間テレビでも、最後に岡村(隆史)さんのダンスがありましたし、2019年にも「ダンスができない7ティーチャーズ」というプログラムがフィナーレにあったので、“最後はダンス企画で”というのは自然な流れ、と言えるのかもしれませんね。加えて、この「カギダンススタジアム」には、自分の中で大きく2つの思いが込められているんです。
1つは『27時間テレビ』という代々続く番組の、今年のテーマが『日本一たのしい学園祭!』。ここには“カギメンバーと高校生が一緒に作る学園祭”という企画意図があるので、最後にどちらかが目立つということではなく、“MCが汗をかく”という27時間テレビの伝統を受け継ぎつつ、一緒に頑張っている高校生たちも置き去りにならないような企画をやりたかった。
もう1つは、『新しいカギ』という番組を軸に考えると「学校かくれんぼ」という企画が番組を盛り上げてくれたことは間違いないんですが、『27時間テレビ』という軸で考えたときに、“新しい何かを高校生たちと作り上げたい!”という気持ちがあって。
それを実現することで、『新しいカギ』の第一章のゴールになるんじゃないか、そしてそれをやるなら『27時間テレビ』という注目される番組の一番良い時間帯、メインの企画としてやりたかった、というのが、僕と杉野との共通認識です。
杉野:この企画は、ダンスがやりたくて始めたというよりも、学生とカギメンバーが共に暑い夏を過ごして、一番熱狂できる企画はなんだろうとなったときに、“一緒に創るひと夏のダンス”というのが、ゴールに向かっていく感じも含めていいなと。今回の『日本一たのしい学園祭!』というテーマにも沿った、“青春感”を入れたかったんです。
『向上委員会』「粗品ゲーム」にも注目してほしい
「カギダンススタジアム」以外にも、さまざまなプログラムが目白押しの『FNS27時間テレビ』。全てが注目のプログラムということを承知で、今回、成立してよかったプログラムについて聞いた。
杉野:例えば、『逃走中』はレギュラーで放送しているときは、大きいショッピングモールなどを舞台にしているんですけど、今回は、学校を舞台にして高校生たちを巻き込んだ逃走劇を展開しました。その意味では、『日本一たのしい学園祭!』という番組全体のテーマを、『逃走中』に落とし込むことができてよかったですし。また『ハモネプ』も、普段の出場者は大学生が中心なんですが、今回は高校生チームの対抗戦にしました。
田中:僕も(成立してよかったと思う企画は)個人的には『ハモネプ』ですね。就活で、いろんなテレビ局を受けていたときに、局に関わらず好きな番組を聞かれると、『力の限りゴーゴゴー!!』と答えていたんです。それに小学生の真似事ですが、アカペラグループを組んだりしていました(笑)。
自分が作るものには、必ずそういった自分自身の経験が反映されているし、これまでの経験知を自分が作りたいものに全部反映させる気持ちで取り組んでいるんですけど、間違いなく『ハモネプ』は見る側としてすごく影響を受けた番組なので、自分が作り手として次の世代にバトンを渡す役割を担えるというのは、すごくエモいですよね。
バラエティ好きとしては、土曜日の夜から明け方のプログラム『さんまのお笑い向上委員会』「粗品ゲーム〜日本一不条理なお笑いバトル〜」も気になるところだ。
杉野:僕は『さんまのお笑い向上委員会』の演出も担当しているのですが、(明石家)さんまさんは「みんながやりたいことをやったらいいと思う。若いMC陣にもとても期待している」と仰ってました。
深夜の「粗品ゲーム」は、粗品さんという芸人を全開にした企画です。こういう企画は、テレビ番組という形では、今まであんまりなかったような気がします。だから、カブりがないというか、見たことのないものにはなると思いますし、確実に笑いがあって面白いものになる。“粗品カラー”一色で、大勢の次世代を担う芸人さんたちと作る3時間なので、期待していただきたいです。
霜降り・チョコプラ・ハナコの魅力とは?
今回、総合司会を務めるのが、霜降り明星・チョコレートプラネット・ハナコ。この3組の印象を聞いてみた。
田中:霜降り明星は“主人公”ですね。『コロコロコミック』の漫画に出てくるような、めちゃくちゃわかりやすい主人公。ハナコは、霜降り明星と並んだときに良いバランスのグループショットになるというか。M-1チャンピオンとキングオブコントチャンピオンで、同年代でありながら真逆のキャラクター。そしてチョコレートプラネットは、霜降り明星とハナコが同期で同年代なので、『新しいカギ』の3組の中では優しいお兄ちゃん的な存在です。
杉野:3組とも全く違う個性。しかもそれぞれの個性が、単体でいるときよりも、この3組が掛け合わされることによって、さらに輝いてる瞬間があるなって思います。もちろん、単体での爆発力もありますが、“霜降り×チョコプラ”とか、“チョコプラ×ハナコ”とか、“霜降り×ハナコ”とか、足し算じゃなく掛け算になっているのを現場で感じています。
田中:「この3組で27時間をやります!」と発表したときに、メンバーも「スタッフ含め、みんなで頑張りましょう!」と言ってくださって。僕らが大事にしているのは、演者と一緒に作っていくということ。もちろん、他の番組でもそうですけど、『新しいカギ』と『27時間テレビ』は、演者とスタッフが1チームで、みんなで一緒に作れているのが特徴だと思います。
杉野:演者の皆さんとは、どちらかからの一方通行ではなく、双方向でコミュニケーションを取りながら作っていくことを大事にしています。
そんな二人に、テレビを作っていくうえでの信条について聞いた。
田中:めちゃくちゃ恥ずかしい話になってもいいですか?(笑)。Base Ball Bearというバンドに『どうしよう』って曲があって、「青春が終わって知った 青春は終わらないってこと」という歌詞があるんですよ。それがめちゃくちゃ好きなんですね。
ほかのインタビューでも「高校生とやるにあたってどうですか?」「高校生の青春を見て、大人も同じ気持ちになりますか?」と聞かれることがあるんですけど、よく考えたら僕は“あのときに大人になった”みたいな意識があんまりなくて。 高校生の頃から何も変わってないんです。
僕は社会人として番組を作っていますが、高校生に届くような番組を作るときに“大人が高校生に寄り添ってますよ”というスタンスではなくて、自分が高校生の頃に持っていた熱い気持ち、情熱を、そのまま注ぐことが大事だと思っています。
杉野:自分が『向上委員会』をやっているからではないんですけど、一番大事にしてる言葉は「行った先に何かがある」ですね。これは学生時代に誰かに言われたことがあって、とにかく食わず嫌いはよくない、という意味で僕は受け取っています。
例えば、23時に友達に呼ばれて飲みに行くのってイヤじゃないですか、本当は(笑)。でも、何があるかわからないから、まず行ってみることが大事だ、ということ。行ってみて、言葉を聞く。興味を持ったか持たなかったかは、その後の問題。やらずにイヤだっていうんじゃなくて、まずやってみよう、という姿勢は大事にしています。
最後に、終わるまで言いづらいかもしれないが……という前置きで、「これが成功したら、今回の『27時間テレビ』は成功」と思うポイントを聞いた。
杉野:うーん……となると、数字(視聴率)以外ですよね?(笑)
田中:具体的に言うならば、最後の「カギダンススタジアム」ですね。
杉野:うん、そうですね。
田中:カギメンバーの頑張りと高校生たちの頑張りが、それぞれどっちも欠けることなく掛け算で合わさったときに、すごくいいショーになるんじゃないかって。やっぱり、そこを成功させたいです。今年の『27時間テレビ』を象徴していると思うので。
杉野:そう、ダンスですね。ダンスの成功こそが、今回の成功。
「最後まで見逃せないということですね」と聞くと、大きく頷いた二人。新しい世代がカギとなる今回の『FNS27時間テレビ』に注目したい。
〈吉田 真琴〉
07/20 12:00
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