原田美枝子「芸能生活50年。今は趣味の乗馬に夢中。馬の前では〈ニンジンをくれるおばさん〉として気楽でいられる」

「ゴツゴツした岩も水に洗われて転がるうちに丸くなる――これって人間も一緒だなと思います」(撮影:浅井佳代子)
現在発売中の『婦人公論』2024年12月号の表紙は、女優の原田美枝子さん。紫綬褒章の受賞を、生き方も含めて認めてもらえてようで嬉しかったと語る原田さん。還暦をすぎ、毎日をより楽しめるようになった理由は――。発売中の本誌から、特別に記事を先行公開いたします。(撮影=浅井佳代子 構成=篠藤ゆり)

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【写真】真っ赤なワンピースに負けない鮮やかな笑顔の原田さん

一番感謝しているのは

15歳のときに映画デビューし、芸能生活50周年を迎えました。

今年4月には紫綬褒章をいただき、生き方も含めて認めてもらえた気がして、すごく嬉しかったです。

私の俳優人生は、心の成長とともにありました。若い頃は野心があって、とにかくナマイキ。でも、ゴツゴツした岩も水に洗われて転がるうちに丸くなる――これって人間も一緒だなと思います。

壁にぶち当たるたびに周囲の方々が支えてくださいましたが、一番感謝しているのは、今は亡き両親。

どんなことも乗り越えられるだけの丈夫な体と強い心を育んでくれてありがとう、と伝えたいです。

何を大事にして何を手放すべきか

還暦を過ぎて人生の残り時間を逆算できるようになると、体が動くあと10年、20年でやりたいことを実現するために、何を大事にして何を手放すべきかがはっきりしてきました。おかげで毎日をより楽しめるようになった気がします。

今は、乗馬に夢中です。40代から続けている趣味ですが、実は一昨年、ずっと乗っていた馬が亡くなってしまって。

一度は乗馬をやめようか悩んだものの、それも寂しいなと思っていたんです。

『婦人公論』12月号の表紙に登場した原田美枝子さん

新しい馬との出会い

そんなとき、ありがたいことに新しい馬との出会いがあり、今年に入ってからは週2日ほど練習しています。

最初はなかなか息が合わなくて大苦戦。でも、最近やっと希望が見えてきました。それに、彼にとって私は《原田美枝子》ではなく、《リンゴやニンジンを持ってきてくれるおばさん》なので、とても気楽でいいんです。

これまでは女として、母として、俳優としてなど、知らず知らずのうちに自分の役割に縛られていました。

それより今は、一つの生命体として与えられた命を無駄にせず、自由に無邪気に生きていきたいなって。我ながら大らかになってきたなぁと思います。

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