風吹ジュン「70代、割り切って〈おばあちゃん〉を表現できるようになった今、居心地がよくなった」

「年を取って何かを失うのではなく、むしろ人生経験を生かす場所があるということがわかって、なんだか救われた気持ちになったのです」(撮影:浅井佳代子)
現在発売中の『婦人公論』2024年11月号の表紙は、女優の風吹ジュンさん。70代になり「おばあちゃん」を表現できるようになって、居心地が良くなったと語る風吹さん。人とのかかわりを大事にしたいと、俳優仲間との料理教室を開いているそうで――。発売中の本誌から、特別に記事を先行公開いたします。(撮影=浅井佳代子 構成=篠藤ゆり)

* * * * * * *

【写真】鮮やかな緑と赤のコントラストを着こなす風吹さん

実りある年代

70代を迎え、やっと「いいところ」に来たなと感じています。

子どもが手を離れてから演技に向き合えるようになったものの、そのタイミングでいただく役は中途半端な年代で難しくて。

割り切って「おばあちゃん」を表現できるようになった今、居心地がよくなりました。

最近は、含蓄のある台詞を言うのもしっくりくる。

年を取って何かを失うのではなく、むしろ人生経験を生かす場所があるということがわかって、なんだか救われた気持ちになったのです。

人が繋がっていく素晴らしさ

この秋公開の映画『アイミタガイ』は、心からそう思わせてくれました。

大切な人を突然亡くした主人公に、「相身互い」という助け合いを意味する言葉を教える祖母役を演じています。

気づかないうちに、知らない人に心を救われている瞬間ってありますよね。

そんな優しい偶然が重なって、立ち止まった人々が一歩を踏み出す物語。世の中が殺伐としている今こそ、人が繋がっていく素晴らしさを感じていただきたいです。

『婦人公論』11月号の表紙に登場した風吹ジュンさん

俳優仲間と料理教室

私自身、人とのかかわりを大事にしています。

たとえば、俳優仲間との料理教室。現在メンバーは50人ほどで、料理家の小堀紀代美さんを講師に招いて料理を作り、皆で食べながら他愛のないおしゃべりを楽しんでいます。

最初は仕事とは違う時間を過ごせるといいかなという勝手な思いで始めたけれど、想像以上に皆さん喜んでくれて。この場を作ってよかったです。

今は、芝居ができるのが何より幸せ。人とのご縁も増え、実りある年代にいると実感しています。

ジャンルで探す