神野美伽さんが『徹子の部屋』に登場。再婚と元夫との関係を語る「銭湯、理髪店...笠置シヅ子さんとの不思議な因縁。母の境遇と笠置さんが重なり...」
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1977 年『東西対抗チビッコ歌まね大賞』の出演をきっかけにスカウトされ、1984 年、高校卒業とともに歌手デビュー、以来40年に渡って歌い続け、近年では海外でも活動する神野美伽さん。ステージを縦横無尽に駆け回るパワフルなスタイルから、いま朝ドラで話題の笠置シヅ子さん役として音楽劇『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE~ハイヒールとつけまつげ~』の主演を務めた。笠置さんをはじめとする昭和の歌手に受けた影響と、自身の歌手人生を振り返る。
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「時代」が笠置シヅ子という歌手を求め、作り上げた
「時代」というのは面白いもので、繰り返すと言われたり「作るものだ」と言われたり。しかし、いずれであっても私たち人間は生まれたその「時代」に生きることを拒否することはできません。
当然、笠置シヅ子という一人の女性も、先の大戦があったあの「時代」を選んで生まれたわけではなく、ひたすら生きなければならなかったのです。
神というものがあるとしたら、その神が笠置さんを選び、「時代」が笠置シヅ子という歌手を求め、そして作り上げたのだと考えたりします。
私はその戦争が終わり、日本の高度経済成長期のちょうど真ん中1965年に生まれ、その後バブル景気が始まる1984年に歌手としてデビューしました。いま思えば、芸能界も尋常ではないエネルギーと華やかさに満ち溢れた「時代」でした。そこから40年の月日が流れようとしています。なんて早いことでしょう。
もし、そのバブリーな時代に笠置シヅ子という歌手が産声を上げていたとしたらどうだったかしら?
もし、笠置さんと会えていたら
あの強烈な個性、才能は開花していたでしょうか。
作曲家 服部良一先生との「東京ブギウギ」という音楽は生まれていたでしょうか。
それは誰にもわからないことですが、私にとって大変興味深いことです。
ついでに、私のような歌い手が笠置さんの生きた「時代」に存在したとしたら...。さて、40年もの長い時間を歌って来ることができたでしょうか。
そして、もう一つ。もし、笠置さんと会えていたら...。どんなことを話していたでしょう。
せっかちで、人が驚くほど大胆で、悲しいくらい繊細で、過剰なほど清潔好きの片付け魔であったといわれている笠置さんと私は可笑しいくらい似ていて、きっと共感できることが沢山あったに違いないと独り善がりなことを思ったりしています。
私は昔から、興味のある人との共通点を探すことが好きで、例外ではなく、笠置さんの自伝書や他の作家によって書かれた評伝など多くを読む中で、笠置さんとの共通点を見つけ出しては会ったこともない笠置シヅ子という人に身近な感情を持つのです。
この世で人が生きることはじつに面白い
朝のドラマでも既に描かれていますが、笠置さんは非嫡出子として生まれ、養父母のもとで育ちます。そして、笠置さんご自身もお子さんを同じように産み育てられたことを自伝書中で「父を知らぬ不幸な巡り合わせは、奇しくも母子二代またがっている」と書き残されています。
じつは、私の母も非嫡出子として生まれ、幼いころは孤児として生きて来ました。
私がそのことを知ったのは15年ほど前。
なぜ母がそういう境遇になったのかという事実を知ったのは、つい数日前のことです。
衝撃でした。しかし、何かがストーンと腑に落ちた感じがしました。
歌手としてのキャリアの中で私の身に起こったいくつかの出来事が、偶然ではなく、必然であったと思えたのです。
笠置さんは、ご自分の身に起こる出来事を「因縁」という言葉で書き残されています。
私と、私の母の因縁。その話はまたいつか書いてみたいと思いますが、この頃、この世で人が生きることはじつに面白いものだと思うようになりました。生きているつもりで生かされているような、導かれているようなそんな不思議を感じるのです。いったいこれは何なのでしょうね。
笠置さんもきっと何遍も同じことを思われたに違いありません。
偶然、同じ「時代」に同じ大阪で
そうそう!「因縁」ではなく、共通点の話でしたね。
まだ乳飲み子だった笠置さんを引き取り育ててくれた養父母の家業は銭湯だったといいます。その銭湯の脱衣場で、幼き日の笠置シヅ子さんは歌を歌い始めました。
養父はのちに銭湯を廃業し、理髪店を始めたそうですが、私の母の養父も母がもらわれた頃、銭湯を家業としていました。そして、のちに理髪店を営んでいたといいます。
偶然といえば偶然、同じ「時代」に同じ大阪で、同じように二人の養父は生きていたのです。
笠置さんの養母のお名前は「うめ」さん。母の養母名は「ハル」さん。まぁ、ここまでいうと些かこじつけ感は否めませんが、私がこうして笠置さんとの共通点を見つけては喜びたい気持ちを汲んでいただけましたらとても嬉しく思います。
憧れとは、そういうものですね。
11/08 11:00
婦人公論.jp