塩野瑛久『光る君へ』一条天皇役の苦悩を語る「楽しかったのは最初だけ。あとはもがいて、苦しんで…」
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濃かったなあという印象
8月20日、都内で行われた番組の取材会に出席した塩野はくしくも『光る君へ』のクランクアップを迎えたばかり。平安時代の雅な一条天皇から一転、現代の若者らしいピンクのシャツ姿で会場に登場した。
最初に今の心境を問われた塩野は、少し考えてから「濃かったなあという印象」と感慨深げに一言。一条天皇という人間と向き合った濃密な時間に思いを馳せた。
「楽しかったのは最初だけ。あとはもがいて、苦しんで、自分の大切な人との死と向き合って…」と一条天皇の生きざまを自分の中に投影させながら語った。
同席した『光る君へ』制作統括の内田ゆきチーフ・プロデューサーが「塩野さんはオーディションで選ばれたが、一条天皇というのは非常に難しい役。脚本の大石静さんと共に、最初は少し心配していた。寵愛していた年上の定子の後うんと年下の彰子を妻にするわけで、両方に魅力があるように演じてねと頼んだ」と話すと大きく頷いた塩野。
「本人も努力されて、役作りする中で成長され、そんな努力を飛び越えていまや一条天皇といえば塩野瑛久となった。塩野さん、本当にありがとう!」と続けた言葉には思わず「泣いちゃう!」と反応した。
一条天皇になりきっていた
定子役の高畑充希さんに胸を借りたという塩野は、「定子との結婚の背景には政治的な思惑があったとしても、過去の経緯はどうでもよかった。それらはいったん置いておいて、その場での定子の気持ちを受け取って受け取って、丁寧に演じた」と振り返った。
「狭い世界、御簾の奥で孤独をかみしめ、政も大事にして、定子も大事にして、大事にしなければならないことがきちんとわかっていた人」という一条天皇になりきっていた塩野は、気品を常に意識、特別な空気がゆったりと流れていくように心がけたというが、内田チーフ・プロデューサーから「でも、走るシーンも多かったよね」とふられると「そうそう、めっちゃよく走りました! 長袴で走るのもどんどん上手になっていった」と笑った。
ここ数カ月は日焼けをしないように徹底していたというが、クランクアップを前にやや日を浴びたところ、共演者から「少し黒くなった」とすぐに指摘されたという。
ドラマでは、いよいよ吉高由里子演じる紫式部が「源氏物語」を書き始めるが、『歴史探偵』では、膨大な量であったはずの「紙」に注目して、そこにあった道長の思惑を探っていく。これまでの大河ドラマにはないぐらい小道具にもこだわったという内田チーフ・プロデューサーの言葉通り、『歴史探偵』で実際に手に取った鎌倉時代の「源氏物語の写本」と、小道具として触れた和紙との違いをまったく感じなかったと明かした塩野。今後の一条天皇と道長との信頼関係、緊張関係にもますます目が離せない。
08/28 21:00
婦人公論.jp