抗がん剤の副作用で心肺停止寸前になった宮川花子。神妙な顔の医者が告げた、大助からのまさかの伝言は「オリックスが…」
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【イラスト】神妙な顔の医者が告げた大助からの伝言は「オリックスが…」
心肺停止寸前。「花子、がんばれ!」
2022年10月29日のこと。
ベッドに横になっていると、ものすごく胸が苦しいんです。
大助くんに頼んで車椅子に乗せてもらいました。
不思議なことにストーブの前に座っていると、胸が少しスーッとして「あれ? 大丈夫かな」と。
理屈はわかりませんが、空気が温もってスチーム状になり、吸い込みやすくなるんでしょうか。
でも、またベッドに横になると苦しい。耐えられないくらい苦しい。
まったく息ができず、海の底で溺れ死にしそうな感じです。
私が呼吸困難に陥っている様子を見て、大助くんが「これは、あかん」と慌てて救急車を呼んでくれました。
深刻な状態
救急車に乗るなんて初めてのことです。
救急隊員の方々が家に来たところまではわかっていましたが、それからの記憶はまったくありません。
のちに聞いた話だと、一緒に乗り込んだ大助くんは、私の手をギューッと握り、「花子、がんばれ! 花子、がんばれ!」と大声で励まし続けていたそうです。
その声が救急車のスピーカーから外にガンガン響いていたというんですから、えらいことです。
折しも、統一地方選挙に向けた選挙活動の真っ最中。
私が立候補していると勘違いした人もいたんでしょう。
開票してみたら「宮川花子」に3票入っていたそうです(笑)。
というのは、のちに作った漫才のネタですが、大助くんが叫んだのはほんまの話。
嫁が抗がん剤の副作用で肺に水がたまり、死にかけていたんですから、動転するのも無理はありません。
奈良県立医科大学附属病院に担ぎ込まれたときは、心肺停止寸前・意識不明という、これ以上ないほど深刻な状態でした。
毎日病院へ
目を覚ましたのは3日後。
気がつくと、集中治療室(ICU)のベッドの上でした。
当時は、コロナウイルス感染予防のために家族との面会は一切禁止です。
それがわかっているのに大助くんは毎日、病院にやってきては、居ても立ってもいられない様子でウロウロしていたそうなんです。
見かねた先生が「花子さんに伝言があれば伺いますよ」と声をかけてくださったみたい。
大助くん、うれしかったんでしょうね。
メッセージを預けて、ようやく安心して帰っていったそうです。
大助くんの伝言
その先生がICUに来て、「大助さんから、ご伝言を預かりました」と神妙な顔でおっしゃるから、何かあったのかとドキドキしながら「はい、お願いします」と言うと、「オリックスが優勝したよ」。
は?
確かに救急搬送されるまで二人で日本シリーズのヤクルト対オリックス戦を見てました。
見てましたけど、心肺停止の状態で救急搬送され、生きるか死ぬかをさまよって、ようやく意識が戻ったばかりの嫁にそんなこと言います?
それも毎日病院に通ってきて、なんとか会えないかとウロウロして。
後日、「なんであんなこと言ったん?」と聞いたら、まじめな顔で「気になっているやろうから、ちゃんと教えておいたほうがええと思って」ですって。
おかしいでしょう。
どれだけ深刻なときでも、あの人といると笑ってしまうんです。
※本稿は、『なにわ介護男子』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
07/24 12:30
婦人公論.jp