『新宿野戦病院』ラストでいきなりぶっ込まれた小池栄子の “意外な事実”――あえて描かれなかった空白期間とは?【ネタバレあり】
9月11日(水)に最終話を迎えた『新宿野戦病院』(フジテレビ系)。
ラストのワンシーンで、“意外な事実” が急にぶっ込まれていた。
脚本家・宮藤官九郎(クドカン)のオリジナル作品で、小池栄子と仲野太賀のダブル主演作。新宿・歌舞伎町を舞台にした救急医療エンターテインメントだ。
きらめくネオンでごった返す夜の街の片隅に、ぽつんと存在するオンボロ病院「聖まごころ病院」には、やる気がなく腰掛けで勤務している美容皮膚科医・高峰享(仲野)ら、クセモノの医師や看護師が在籍。しかし、病院には享の叔父で院長の高峰啓介(柄本昭)しか外科医がおらず、その啓介は年老いたアル中のため、存続の危機に瀕していた。
そんなとき、アメリカ国籍の元軍医である謎の女医、ヨウコ・ニシ・フリーマン(小池)が現れ、外科医として歌舞伎町のワケあり患者たちを救っていくというストーリー。
■シリアス展開もいい意味でライトに仕上げていた
最終話のラストシーンについて語る前に、まずは本作の後半のストーリーに触れておきたい。
クドカンらしいコメディ要素たっぷりの医療ドラマではあったが、第8話以降はかなりシリアスなオオゴトが起こっていた。
第8話では、少女たちが働くコンカフェで大規模な爆破事件が発生。何十人という負傷者が次々と「聖まごころ病院」に搬送され、ヨウコや享たちは重傷者の治療を進めるため、トリアージ(傷病者の治療優先順位を決めること)をおこなわざるをえないほど逼迫した惨状が描かれた。
第10話と最終話では、未知の新種ウイルス・ルミナが日本中で感染拡大してしまうという、コロナ級の脅威の再来が描かれていく。享の父やヨウコ自身もルミナ感染したり、感染者数が減少したと思ったら第2波が到来したりと、コロナ禍をなぞるような緊迫したストーリーが展開した。
しかし、そこはさすがのクドカン脚本。
大筋はシリアスな事件や感染症を描きながら、個性的なキャラたちが真剣に医療に向き合うゆえにコミカルになるという掛け合いで、小さな笑いを挟みつつ絶妙に重くなりすぎない塩梅でストーリーが進んでいく。きちんとコトの重大さを伝えながら、いい意味でライトに仕上げていたのである。
■【ネタバレあり】小池栄子の院長時代があった!?
では、冒頭で触れた “意外な事実” について語っていこう。
ヨウコはアメリカの医師免許は持っていたが、実は日本の医師免許を持っていなかった。そのため、第10話で日本の国家資格を取得するまでは、ずっと違法で医療行為をしていたのだが、それがバレてしまい最終話終盤、医師法違反の容疑で逮捕されてしまう。ここで現在のシーンは幕を下ろす。
そして、最後の約3分はエピローグとして2年後が描かれたのだが、ラスト直前に急にぶっ込まれた意味深なシーンがあったのだ。
「聖まごころ病院」では享が5代目院長となっており、まだ頼りないところはあるものの、なんとか病院を切り盛りしている。しかしそこにヨウコの姿はなく、彼女は海外の野戦病院で奮闘していることが明かされた。
ただ、壁に飾られた歴代院長写真のなかに、なぜかヨウコの写真が4代目院長として並んでいたのである。
3代目が柄本昭演じる高峰啓介で、2年ジャンプして享が5代目に就任している。つまり、その描かれなかった空白期間にヨウコの4代目院長時代があったことが示唆されたわけだ。
なぜヨウコが院長になったのか、どれぐらいの期間務めたのか、そもそも逮捕で医師免許剥奪にならなかったのか、などなど謎だらけ。
いち視聴者としては、「ぜひ空白期間を描くSPドラマを!」と期待する気持ちもある。
けれど、続編は作らず、ファンがあれこれと妄想しやすい “想像の余地” として残しておくのも粋な気がする。ヨウコ院長時代をあえて描かないことが、一番のファンサービスなのかもしれない。
いずれにしても、クドカン初の医療ドラマとなった本作は、改めて彼の筆力を思い知らされた良作だった。
堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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