成田凌『降り積もれ孤独な死よ』今期イチの作品だが…終盤の尻すぼみと真相のスケールダウンが残念すぎた【ネタバレあり】

『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)主演の成田凌

 

 正直、実質的な “第2部” の尻すぼみ感が非常に残念だった。

 

 9月8日(日)に最終話(第10話)を迎えた成田凌主演『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)。

 

 個人的に「今期イチ」と推している作品だっただけに、期待値が上がりすぎていたのかもしれないが、“第1部” からのスケールダウンは否めない。

 

 

■【ネタバレあり】“第2部” の真相と犯人は?

 

 本作は大別すると第1話から第7話序盤まで描かれた2017年の事件と、第7話中盤から最終話まで描かれた2024年の事件がある。2017年の事件は第7話序盤で真相が明らかになって解決しているので、実質的に “第1部”・“第2部” といった位置づけだ。

 

 2017年は、とある地方の豪邸の地下室から、13人の子どもの白骨死体が発見されるという事件。少年少女監禁死体遺棄事件として捜査が始まり、刑事・冴木仁(成田)は屋敷の主・灰川十三(小日向文世)を容疑者として追っていた。そんななか、捜査の過程で、彼には血のつながりも戸籍上のつながりもない19人の子どもがいたことが明らかに。

 

 ネタバレになるが、実は灰川には1人だけ、ワケあって赤ん坊の頃に捨てた実子がおり、真犯人はその子どもが成長して刑事になった冴木の後輩(FANTASTICS・佐藤大樹)だった。父への復讐心と、血のつながらない子どもたちへの嫉妬心から連続殺人を犯したという真相が明らかになっていた。

 

 灰川の過酷な幼少期からめんめんとつながっていた運命が、もっとも凄惨な形で事件化してしまったのだが、サスペンスものドラマとしては上質なストーリーだった。

 

 一方の2024年は、1人の少女の失踪から幕を開け、その後、灰川の血のつながらない子のうちの “長女” が殺害される事件。

 

 ネタバレになるが、13年前に灰川への不信感から “次男” が “次女” 花音(吉川愛)の首を絞めて襲っており、花音を守るために “長女” が彼を殺してしまう。そして “次男” が死んだ経緯を知ったある人物(犯人)が、“長女” をビルの屋上から突き落としたというのが真相だった。

 

■過去の事件ともっと関連性があるかと思ったが…

 

“第1部” に比べると “第2部” は肩透かし感が強かった。

 

“第2部” の発端となった少女失踪は、ただ単に花音がかくまっていただけで少女はピンピンしており、その後に発生した “長女” 殺害事件とは無関係。導入となった失踪事件はあっさり解決し、“釣り” のような真相だった。

 

 また、13人もの子どもが監禁されて殺された事件と、成人女性(長女)1人が突き落とされて殺された事件では、サスペンスものとしてのショッキングさの度合いは雲泥の差。エンタメ作品として “第2部” はスケールダウンしてしまっていた。

 

 そもそも2017年と2024年の事件がもっと関連性があるのかと思っていたが、ほとんど別ものの事件だったことにもガッカリ。たとえば “第1部” の犯人をそそのかして操っていた黒幕的存在が “第2部” で明かされるなど、さらなる新事実でどんでん返しがあるのかと期待していたのだが、そのような仕掛けは用意されていなかった。

 

 こういった要因の数々から “第2部” は尻すぼみ感があり、最終話も第6~7話の盛り上がりにはとうてい及ばなかった。

 

■Huluオリジナルの後日譚が余韻を台なしにした

 

 ちなみに、Huluでは本作の「♯10.5【Huluオリジナルストーリー】それから」が配信されている。Hulu会員だけが楽しめる後日譚だ。

 

 本編の最終話は、事件解決後に主人公・冴木とヒロイン・花音が前を向いて歩き出すところで終幕。その際に手をつなぐところが一瞬だけ描かれ、2人が恋愛関係に発展していく予感を漂わせて終わるというきれいなラストシーンだった。

 

「♯10.5」はそのラストシーンから始まったのだが、個人的にはそのきれいな終わり方の余韻を台なしにする蛇足に思えて仕方がない。

 

 第1話から最終話までの名シーンを織り交ぜつつ、冴木と花音が過去を振り返り未来の話をするというストーリー。それまでのシリアスな作風から外れたコミカルなシーンもあった。冴木と花音が和気あいあいとし、ちょっとイチャつくようなやりとりもあるが、事件解決後だからこそ見られる幸せな情景だと好意的に受け取ることもできるだろう。

 

 だが、最終話ではそういった具体的なシーンは描かず、2人の未来は視聴者のご想像にお任せするといった手法でいい余韻を残していたので、わざわざ公式がぶち壊すようなことをしてほしくなかった。

 

 ――前半から中盤にかけて非常におもしろかっただけに、最終話への期待値が上がりすぎていたのかもしれない。それでも筆者のなかでは『降り積もれ孤独な死よ』は「今期イチ」のドラマだった。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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