『降り積もれ孤独な死よ』成田凌に期待しなかったことを謝罪したい!それほどおもしろいサイコ・サスペンス【ネタバレあり】
あまり話題になっていないが、マジでおもしろい。特にサイコ・サスペンス系が好きな人は、騙されたと思って観てみてほしい。7月21日(日)に第3話まで放送されている成田凌主演『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)のことだ。
視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、第1話が世帯5.2%・個人2.9%。第2話が世帯4.8%・個人2.7%。第3話が世帯3.6%・個人2.1%。スタートからよくなかったが、そこからさらに右肩下がりしているさんざんな状態である。
しかし、観てみるとどんどん世界観に引き込まれていき、筆者はかなりハマっている。
2017年、とある地方の豪邸の地下室から、13人の子どもの白骨死体が発見される。少年少女監禁死体遺棄事件として捜査が始まった。成田演じる刑事・冴木仁は、屋敷の持ち主である灰川十三(小日向文世)を容疑者として追うが、捜査の過程で、彼には血のつながりも戸籍上のつながりもない19人の子どもがいたことが明らかに。
13体の遺体はその子どもたちだとわかり、6人だけ生き残っていることが判明。生存者はだいたい20代の若者で、彼・彼女たちは口を揃えて「父は犯人ではない」と訴えて――というストーリー。
灰川と子どもたちは、“父と子” という一面もあるが、カルト教団の “教祖と信者” のような印象もあり、得体の知れない気持ち悪さを内包した関係性として描かれている。
大量の子どもたちの死の真相を追う物語だけあり、役者たちはボソボソとしゃべるリアリティある演技をしているし、画面も意図的に暗くしてあり、いい意味で作品全体が不穏な空気感に包まれている。
■【ネタバレあり】飽きさせないスピーディな展開
正直、第1話を観るまで、このドラマに期待はしていなかった。
なぜなら本作が日本テレビ系の作品だったから(制作は読売テレビ)。日テレ系の作るドラマは、シリアスな演出にすればかなりおもしろくなりそうな設定やストーリーなのに、フタを開けてみると子ども騙しなチープな演出が多く、これまで何度もガッカリさせられてきたからだ。
しかし、この『降り積もれ孤独な死よ』はケレンミを極力排除しており、重く暗い作風をストイックに突きつめている感がある。
また、飽きさせないスピーディな展開も見どころ。
ネタバレになるが、事件の真実を握っているであろう灰川が、第1話のラストで実にあっさり逮捕される急展開。そして第2話ラストで、留置場で首を吊って亡くなっており、早々に物語から退場してしまう。
出し惜しみなく次々とショッキングな展開を用意しており、誉め言葉として受け取ってもらいたいのだが、「このスピード感で1クール持つのか!?」と思ったほどだ。
今のところ物語は2017年をメインに進行しているが、実は2024年でも不穏な行方不明事件が起きているため、7年前と現在の事件がリンクしていくことで、さらに二転三転していきそうな予感である。
■ガチで意外すぎる “犯人” が発覚
これもネタバレになるが、第3話で主人公・冴木が隠していたとんでもない事実が明らかに。
劇中では13体の白骨化遺体事件とは別に、中年男性ばかりを狙う連続傷害事件も描かれており、2つの事件がリンクしてくるのかと思われた。だが、なんと連続傷害事件の犯人は主人公の冴木だったのだ。
少年期に父から虐待を受けていた冴木は暴力衝動が抑えられないタチで、傷害事件を繰り返していたという。警察のルールにとらわれず、はみ出した行動を取ることも多いが、正義感が強い主人公だと思われただけに、まさか別事件の犯人だったとは……という驚愕の展開となった。
だが、個人的にはこの主人公像にも好印象。
主人公が聖人のようなキャラだと、その視点から描かれる結末はどうしても美談になりがち。けれど、エグいほどの弱さや悪さを持った設定になっていることで、きれいごとを抜きにした生々しい結末が期待できるというものだ。
余談だが、個人的にこれまで成田凌の主演作にあまりハマッたことがないので、今作にもたいして期待していなかったのだが、いまは「ごめんなさい」と謝りたい気分だ。
表向きは正義漢に見えるが裏には狂気をはらんだ冴木という主人公を、やりすぎず・抑えすぎずの過不足ない絶妙な演技で作り込んでくれているからだ。
――今夜放送の第4話も、予測不能なストーリーで翻弄してもらいたい。期待大のドラマである。
堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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