「最高だった」“テレビ界の嫌われ者” 村本大輔のドキュメンタリーが好評なワケ「構成が素晴らしい」プロも太鼓判

 

 2024年7月6日、お笑いコンビのウーマンラッシュアワー・村本大輔のドキュメンタリー映画『アイアム・ア・コメディアン』が公開された。

 

「2013年『THE MANZAI 2013』(フジテレビ系)で優勝してから、お笑い業界の最前線で活躍していたウーマン・ラッシュアワーですが、2017年頃から村本さんが『安倍政権批判』や『原発問題』など社会問題をネタにするようになり、テレビ出演が激減。2020年のテレビ出演はわずか1本でした。いわゆる “アンチ” も多く、一時期は発言するたび炎上するような状態でした。まさに “テレビ界の嫌われ者” ですね」(芸能記者)

 

 本作はそんな村本がテレビから消えた3年間の軌跡を追った骨太のドキュメンタリーだ。

 

 

「劇場や路上を主戦場に変え、“スタンダップコメディ” を学ぶため本場アメリカでの修行や、知られざる家族との関係、そして未曾有のパンデミックのなかでもがきながら “お笑い” を追求する姿が描かれています。再び “嫌われて” 終わるだけかと思いきや、意外にも好評を得ているんですよ」(映画ライター)

 

 公開から5日後に鑑賞したIT企業に勤める都内在住・20代女性はこう語る。

 

「約100席ある劇場の3分の1くらい埋まっていましたね。30〜40代の男性のお客さんが多い印象で、時折、笑い声も聞こえてきました。英語の字幕がついていたので、いつかは海外上映も目指しているのかな、なんて思いました。村本さんは、漫才のときは早口でまくたてるように話すのが特徴なので、そういう意味でも字幕がついていて助かりました(笑)。

 

 正直、最初は映画としての面白さに期待していなかったのですが……コロナ禍で予定していたイベントもすべてなくなり、生活が一変していく様子、そして人間味のある描写は、 “芸人” という肩書関係なく感動させるものがありました。ニューヨークという大舞台で “スタンダップコメディ” に飛び込む姿は、“嫌われ者” と言われても突き進む彼の信念を見ることができた気がします。最高でした」

 

 国内最大級の映画レビュー数を誇る映画情報サイト「Filmarks」でも「5」満点中「4.1」という高評価を得ている同作(7月13日時点)。映画評論家の前田有一氏はこの結果をこう解説する。

 

「この映画を一言でいうと、『見せたいものが明確で演出も的確』なのだと思います。わかりやすくいうと、村本さんに世間が抱いている偏見やマイナスのイメージを柔らかく解きほぐして、『けっこう魅力的な人じゃないの』と思わせているということです。つまり、お笑いがメインではなく、村本さん自身を魅力的に描くのが一番の目的でしょう。

 

 構成的にいうと、最初は早口で社会派問題を提唱するシーンがあるのですが、それが致命的に面白くないんです(笑)。それって、世間の人が村本さんに抱いているイメージどおりで、『日本だとあのタイプはドン引きするよね』と意図的に見せるのですが、物語が進むことでアメリカへの挑戦が描かれ、そこで披露するネタが意外と面白いんです。最初のイメージがすごく悪いぶん、余計笑えるんですよ」

 

 そして最後に感動が待っているというのだ。

 

「人って笑うと共感していくので、普通のお客さんたち、もしくはアンチたちも徐々に村本さんに共感を抱くようになるんですよ。あの映画の圧巻な部分は、中盤はただ笑わせつつ、終盤は笑いと同時に泣かせるんですよね。お父さんをネタにして笑わせるシーンがあるのですが、村本さんの真骨頂であり、芸人としての才能だと感じました。

 

 監督さんや、作り手の人たち村本さんの魅力をとにかく見せたかったんだなっていうのがすごく伝わります」(前田氏)

 

 さらに高評価を得たのは “嫌われ者” ならではの理由があると分析する。

 

「映画って、基本的に評価が下がるのって期待値が高い作品なんです。たとえば、超人気の漫画の実写化や、ベストセラーの映画版。それが『思っていたのと違う。原作に忠実じゃない』という理由で評価が下がります。

 

 村本さんの場合、アンチ寄りの人が多い芸人さんなので、そもそも期待値が高いわけではない。だからこそ、このやり方が功を奏したと思うんですよ。そういう人たちが見たら、彼の魅力に絶対に気づくように作ってあるので、どんなアンチが見ても『思ったより悪いやつじゃないな』というように評価は上がっていきます」(前田氏)

 

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