間宮祥太朗『アクマゲーム』評判さんざんでも映画化発表…なぜ止められなかったのか、あふれる疑問【ネタバレあり】

 

 どうして映画化を止めることができなかったのか?

 

 日本テレビが抱える “膿”(問題点)が、詰まりに詰まった劇場版発表だったように感じた。

 

 6月9日(日)に最終話(第10話)が放送された間宮祥太朗主演ドラマ『ACMA:GAME アクマゲーム』(日本テレビ系)のことだ。

 

 

■【ネタバレあり】ラスボスは意外なあの人だった!

 

 2013年から2017年まで『週刊少年マガジン』(講談社)に連載されていた同名漫画が原作のドラマ。13年前、尊敬する父(吉川晃司)を殺害された主人公(間宮)が、99本そろえればこの世のすべてを手に入れることができるという「悪魔の鍵」をめぐって、命がけの心理戦「アクマゲーム」に挑んでいくというストーリー。

 

 ネタバレになるが、謎の組織のボスで、主人公と最後の「アクマゲーム」で対戦したのは死んだはずの父親。父は闇堕ちして自身の死を偽装していたのだが、最後は主人公が勝利してフィナーレとなった。

 

 ちなみに原作漫画も大筋は同じストーリーで、最後に父親を倒してハッピーエンドとなっている。ただ、原作では父を利用していた組織幹部の悪人キャラ(小澤征悦)も父とともに死ぬのだが、ドラマではそのキャラが逃げてしまう展開。

 

 そして、最終話終了後に物議を醸したのが、続編となる『劇場版ACMA:GAME 最後の鍵』が、今年10月25日から公開されるという発表だった。

 

 公開されたティザームービーを観ると、やはり逃亡していた悪人キャラが主人公たちの前に立ちふさがるようだが、原作は父親を倒して終幕となっているので、劇場版は完全オリジナルストーリーになるのだろう。

 

■視聴率もTVerのお気に入り数もヒットとはほど遠い

 

 このドラマにハマっていたファンは続編の劇場版に歓喜したかもしれない。が……その “ファン” がどれだけいるのかというのが非常に疑問。

 

 本作の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、下記のように低調に推移。

 

第1話:世帯5.7%/個人3.4%
第2話:世帯3.7%/個人2.2%
第3話:世帯3.7%/個人2.1%
第4話:世帯3.3%/個人1.9%
第5話:世帯3.5%/個人2.0%
第6話:世帯3.5%/個人1.9%
第7話:世帯2.9%/個人1.7%
第8話:世帯3.2%/個人1.9%
第9話:世帯3.1%/個人1.7%

 

 近年のテレビ局は「コア視聴率」(おおむね14歳~49歳に対象を絞ったデータ)重視といえど、個人視聴率で1%台を連発していた状態ではコア視聴率もたかが知れている。

 

 また、TVerのお気に入り数も40.4万(6月10日現在)と低い数値。100万突破が人気のひとつの目安となっているため、見逃し配信でバズッていたというわけでもない。

 

 要するに、爆死と言っても過言ではないようなドラマの映画化が発表されたわけだ。

 

 映画化発表時の主演・間宮のコメントに、《実は映画化する事はドラマ化と同時に聞いていましたし、映画の撮影もドラマと地続きで行ってきました》と記されていた。劇場版制作はドラマ放送前から既定路線になっていたため、いくらドラマが不評でコケても映画化にストップをかけられなかった――ということなのかもしれない。

 

 それでも、止められない映画化っていったい……?

 

 筆者は第1話を視聴した際、牛の姿をした悪魔のCGがどうにもチープなことや、デスゲームに緊迫感がなくコントのようになっていることなど、作品のクオリティの低さを感じたが、本作を批判したのは筆者や視聴者だけではなかった。

 

 第7話や第8話の放送後には、原作者のメーブ氏もXのポストを連投し、次のような苦言を呈していたのだ。

 

《ううーん… ちょっと流石に不明なこと、はっきりしないことが増えすぎて、7話は楽しめなかった…》

 

《漫画と設定を変えてもいいんだけど、それで矛盾が発生して、その矛盾がキャラの心情すらもわからなくさせてしまっている気がします》

 

 日本テレビと言えば、昨年10月期に放送されたドラマ『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子氏が急死した問題に対して、5月31日に社内特別チームによる調査報告書を公表したばかり。

 

 芦原氏が自分の作品を改変から守ろうと苦心していたにもかかわらず、日テレのプロデューサーが自社都合を優先させようとしたり、保身に走っているようにもとらえられる言動をしたり、といったことが読み取れる内容となっていた。

 

 日テレ側も、そんな調査報告書では “火消し” とならず、むしろさらに炎上するぐらい想定できていただろうが、『ACMA:GAME アクマゲーム』の撮影はそんな問題の渦中におこなわれていたわけだ。

 

 メーブ氏はXで、『セクシー田中さん』の原作改変問題とは構造がまったく違うといったポストもしているが、突き詰めていくと日テレが抱えている問題の根っこは同じなのではないかと見る向きも多い。

 

『セクシー田中さん』の原作改変問題がまだ炎上しており、『ACMA:GAME アクマゲーム』も放送中に原作者から苦言を呈され、しかもドラマ版は成績も評判もさんざん。なぜそれでも止められなかったのか、疑問があふれるばかりだ。

 

 けっきょく、人の命が失われるほどの痛ましい出来事が起こっても、日テレの体面を保とうとするような体質は、いまなお変わっていないのではないか。映画化の発表を見て、残念ながら、そう思わざるをえなかった。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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