「イスラム国」建国から10年も「残党潜んでいる」…解放後に襲撃受けた男性、今も脅威

 イスラム過激派組織「イスラム国」がイラクとシリアの支配地域で「建国」を宣言してから、29日で10年となる。「イスラム国」は米軍の軍事介入などで2019年までに支配地域を全て失った。だが、残党が住民やイラク軍への襲撃を続け、脅威は消えていない。

「イスラム国」の集団に銃撃された傷痕が脇腹に残るアリ・サディクさん(22日、イラク中部バクバで)

 「時々、あの恐ろしい瞬間を思い出す」

 そうつぶやくアリ・サディクさん(27)の脇腹には、銃で撃たれた傷痕が残されていた。

 イラクの首都バグダッドの北約80キロにあるアブ・セイダの自宅が「イスラム国」の武装集団に襲われたのは、19年4月の夜。その約3年前に軍の作戦で「イスラム国」の支配から解放されたが、襲撃は続いていた。

 命からがら脱出したものの、脇腹や足に銃弾4発を浴びた。兄(当時23歳)は殺された。父(当時55歳)は17年に拉致され、行方が分からない。18年には自宅が爆弾で破壊され、弟(当時18歳)が命を落とした。

「イスラム国」の集団に銃撃され、重傷を負ったアリ・サディクさん(左)と弟(22日、イラク中部バクバで)

 19年の襲撃後、約20キロ離れたバクバに避難したが、後遺症のため仕事に就けず、一家8人での借家暮らしは生き残った弟らが頼りだ。

 アブ・セイダは治安部隊が管理してここ数年は平穏だという。そこで普通に暮らしたいが、「残党がどこかに潜んでいるはず。危険で帰れない」。(カイロ支局 田尾茂樹、写真も)

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