外信コラム 五輪に歓喜したパリ…余韻を掻き消す政治の混乱 パリの窓

パリ五輪・パラリンピックは幕を閉じたが、街には大会の余韻が漂っている。

観光名所であるエッフェル塔に設置された五輪マークはパラ閉幕後も残った。市民や観光客が大会マスコット「フリージュ」のグッズを持ち歩き、熱戦が繰り広げられた会場前で記念撮影に興じる姿が目立つ。

ただ、祭典が閉幕した今、市民の最大の関心事は仏政治の混乱に移ったといえよう。

国内では7月に国民議会(下院)選挙の決選投票が行われたが、過半数に届いた勢力がなく、不安定な政局が続く。マクロン大統領は今月5日、中道右派・共和党のミシェル・バルニエ氏を首相に任命した。だが、それに反発した下院最大勢力の左派連合「新人民戦線」がデモを呼びかけ、7日にはパリに2万人以上が集まった。

政権浮揚を目指すマクロン氏が目をつけたのが五輪・パラリンピックだった。14日に行われた選手らが参加するパレードに、バルニエ氏とともに登場。この日を「スポーツの日」とする計画も明らかにした。

市民には「マクロンはパレードを利用し、『新政権は盤石だ』とのメッセージを伝えようとしている」などと冷ややかな受け止めもある。アスリートに歓喜したパリ市民だが、その余韻を政治の迷走がかき消そうとしている。(板東和正)

ジャンルで探す