ヒズボラ攻撃に国際社会が危機感 「ほぼ全面戦争」イスラエル軍、レバノン地上侵攻観測も

【ラマラ(ヨルダン川西岸)=佐藤貴生】イスラエルが親イラン民兵組織ヒズボラを標的にレバノンで大規模な攻撃を行い、国際社会から懸念する声が相次いだ。パレスチナ自治区ガザに端を発する中東の戦闘が広域化しかねず、緊張は一段と高まっている。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は23日、イスラエルのレバノン攻撃を受け、「ほぼ全面戦争」の真っただ中にいると述べ、危機感を示した。

ロイター通信によると、米国務省高官は攻撃を巡ってイスラエルとの間に意見の隔たりがあることを暗に認め、事態の沈静化に向けて関係国と協議する意向を示した。

レバノンでは攻撃で子供35人も死亡したと報じられ、民間に大きな被害が出た。攻撃開始直前には、レバノン国内の携帯電話に8万件の避難要請の連絡が届いたとされる。イスラエル軍が市民の不安をあおる心理戦を仕掛けた可能性もありそうだ。南部から首都ベイルートなど北部へ向かう主要道は脱出を図る多数の車で埋まり、混乱の大きさを示した。

イスラエルにはヒズボラが使う小型の通信機器に工作を施し、9月17、18の両日にレバノン国内で一斉爆発させた疑いが浮上している。ヒズボラ内部の連絡網を寸断した上で、大規模攻撃に乗り出し、最大限の打撃を与えることを狙った可能性もある。

イスラエル軍がレバノンへの地上侵攻を検討しているとの見方もある。イスラエルはレバノン国境周辺の交戦で避難を余儀なくされている北部の住民約6万人を帰還させる方針を示している。住民の安全確保のため、軍を侵攻させてレバノン南部との間に「緩衝地帯」を設けるとの観測だ。

大規模攻撃を受けた後も、ヒズボラはロケット弾などによりイスラエルを攻撃しており、抗戦が続くことは確実だ。イスラエル軍が地上侵攻に踏み切れば、戦闘の長期化や戦費の増額は避けられない。イスラエルのネタニヤフ政権の次の一手は今後の戦局を大きく左右する。

ジャンルで探す