被害額が最大5兆4700億円に達するほど巨大化した東南アジアの国際サイバー犯罪シンジケートについてのレポートを国連組織が発表


国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)の東南アジア太平洋地域支部が、東南アジアにおける国際組織犯罪の脅威の変化についてのレポートを発表しました。これによると、2023年には東南アジアのサイバー詐欺による金銭的損失は最大370億ドル(約5兆4700億円)に達しており、ディープフェイク関連の犯罪が1530%増加したとのことです。
Billion-dollar cyberfraud industry expands in Southeast Asia as criminals adopt new technologies
https://www.unodc.org/roseap/en/2024/10/cyberfraud-industry-expands-southeast-asia/story.html


Transnational Organized Crime and theConvergence of Cyber-Enabled Fraud,Underground Banking and TechnologicalInnovation in Southeast Asia:A Shifting Threat Landscape
(PDFファイル)https://www.unodc.org/roseap/uploads/documents/Publications/2024/TOC_Convergence_Report_2024.pdf
東南アジアでは、洗練された犯罪シンジケートや複雑なネットワークによって、組織犯罪の脅威が急速に進化しています。サイバー詐欺やオンラインギャンブルなどが拡大し、カジノや特別経済区が犯罪の拠点となっています。仮想通貨を利用したマネーロンダリングも増加しており、高リスクな仮想資産サービスプロバイダーが各国の犯罪サービス経済を変容させています。
報告書によると、東南アジアのサイバー詐欺による金銭的損失が180億ドル(約2兆6600億円)から370億ドルに達したとのこと。シンガポールでは、2023年に2065億シンガポールドル(約23兆4000億円)の損失をもたらした詐欺事件が報告されています。
また、ある高リスクな仮想資産サービスプロバイダーは、2021年から2024年の間に490億ドル(約7兆2400億円)から640億ドル(約9兆4600億円)相当の仮想通貨取引を処理したとされています。


さらに、アジア太平洋地域でのディープフェイク関連の犯罪が2022年から2023年にかけて1530%増加したという調査結果も報告されています。2024年5月には、香港のエンジニアリング会社が2億香港ドル(約38億円)の損失を被るディープフェイク詐欺事件が発生しました。
UNODC東南アジア太平洋地域支部は、暗号メッセージングサービスのTelegramが、東南アジアの組織犯罪の温床となっていると指摘。数百のTelegramチャンネルを分析した上で、サイバー詐欺やマネーロンダリングに関連するサービスの宣伝が増加していることが明らかになったと報告しました。
特に、Telegramにおけるディープフェイク関連コンテンツの言及が2024年2月から7月の間に600%以上増加したとのこと。さらに、情報窃取用のマルウェアの配布や窃取したデータを販売するアンダーグラウンドビジネス「Cloud of Logs」の提供にも利用されていると報告書に記されています。


UNODC東南アジア太平洋地域支部長を務めるマスード・カリミプール氏は「組織犯罪グループは結束して脆弱(ぜいじゃく)性を悪用しており、状況の進展は政府による抑制を急速に上回っています。犯罪グループは技術の進歩を利用して、より大規模な詐欺やマネーロンダリング、地下銀行、オンライン詐欺を行っています。これは犯罪サービス経済の創出につながっており、影響力の拡大と新たな事業分野への多様化を目指す国際犯罪ネットワークの重要な実験場と化しています」と述べています。

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