Metaのマーク・ザッカーバーグはなぜスマートグラスがスマホに取って代わると考えているのか?

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Metaの開発者向けカンファレンスであるMeta Connect 2024の中で、テクノロジーメディアのThe Vergeがマーク・ザッカーバーグCEOにインタビューを実施しました。この中で、ザッカーバーグCEOは「なぜスマートグラスがスマートフォンに取って代わるのか」について熱く持論を語っています。
Why Mark Zuckerberg thinks AR glasses will replace your phone - The Verge
https://www.theverge.com/24253481/meta-ceo-mark-zuckerberg-ar-glasses-orion-ray-bans-ai-decoder-interview


The Vergeの副編集長であるアレックス・ヒース氏は、インタビュー直前にMetaの開発したスマートグラスである「Orion」を外部の人間として初めて使用したそうです。Orionについて、ヒース氏は「まだ発表されたばかりですが、真のARグラスがようやく実現に近づいてきたように感じます」と語っています。
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このOrionの開発初期の頃について、ザッカーバーグCEOは「モバイルプラットフォームとの関係にまでさかのぼる必要があります。私たちはモバイルではなくウェブからスタートしたため、すでにひとつの大きなプラットフォーム移行を経験しています。携帯電話とスマートフォンは、Facebookや初期のソーシャルメディアとほぼ同時期に登場したため、私たちはそのプラットフォーム移行において実際に何らかの役割を果たすことができませんでした」「しかし、モバイルで生まれ育ったわけではない私たちは、ウェブはあるものの、モバイルはそれとは異なるものだという認識を持っていました。モバイルには長所と短所があります。コンピューティングには連続性があり、今ではいつでも持ち運べるモバイルデバイスがあり、それは素晴らしいことです。しかし、それは小さく、他のやり取りからあなたを引き離します。これは素晴らしいことではありません」と語りました。
続けて、「コンピューターからモバイルへの移行があったように、モバイルが終着点ではないという認識がありました。私たちがより安定した会社になり始め、モバイルで足場を固め、廃業するなどという明確な見通しがなくなったとき、私は『よし、将来実になりそうなもののために種を蒔き始めよう』と思いました。モバイルはすでに定義されつつあります。2012年、2014年までに、そのプラットフォームを本当に意味のある形で作るにはあまりに遅すぎました。そこで、私たちはいくつかの実験をしましたが、成功せず、どうにもなりませんでした」「『将来に焦点を当てるべきだ。デスクトップからモバイルへの移行があったように、将来は新しいことが可能になるはずです。それで、それは何だろう?』と思いました。その最もシンプルな答えが、Orionで見え始めたものだと思います」と語り、従来の携帯電話からスマートフォンへの移行を経験したMetaならではの着想から、スマートフォンに代わる次世代プラットフォームとしてスマートグラスに目をつけたことを明かしています。
さらに、ザッカーバーグCEOはOrionについて、「Orionは非常に基本的な機能を2つ備えたスマートグラスです。ひとつはホログラムを世界に配置して、別の人や別の場所に一緒にいるかのようなリアルな存在感を実現するというものです。物理的に誰かと一緒にいるかもしれませんが、私たちが行ったように、仮想ゲームなどを呼び出したり、一緒に作業したりすることもできます。コーヒーショップに座って、さまざまなモニターのワークステーション全体を呼び出すことも可能です。飛行機に乗っているときや車の後部座席に座っている際に、フルスクリーンの映画館を呼び出すこともできます。優れたコンピューティングと完全な存在感があり、どこにいても人々と一緒にいるような感覚が得られます」
「もうひとつが、『OrionはAIにとって理想的なデバイスである』という点です。その理由は、メガネは自分が見ているものを他の人に見せたり、自分が聞いているものを他の人に聞かせたりできるという点で、ユニークな位置にあるためです。メガネは、非常に微妙なフィードバックを与えてくれます。耳元で話しかけたり、メガネに表示されるサイレント入力は他の人には見えず、周囲の世界からあなたを引き離すことはありません。これはすべて、非常に重要な意味を持つと思います。私たちがこの分野に取り組み始めた時、ホログラムがAIよりも先に実現可能になるだろうと考えられていました。しかし、実際はホログラム技術が手頃な価格で大量生産される前に、AI機能が実現可能なものとなりました。これは興味深い運命のいたずらです」と語りました。

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また、世界にはメガネを日常的に着用している人が10億~20億人もいます。これらのメガネユーザーを次の10年でスマートグラスユーザーに変え、最終的には普段メガネを着用していない人もスマートグラスをかけるようになるだろうというのが、Metaの展望だそうです。
しかし、Metaは「ホログラムができる普通に見えるメガネを手頃な価格で作るのは本当に難しいかもしれない」という問題に直面してしまったそうです。そんな中でMetaが取った解決策が、「エシロールルックスオティカとの提携」でした。エシロールルックスオティカとの提携により、「ディスプレイがなくても、動画をストリーミングしてコンテンツをキャプチャすることができる、カメラ、マイク、優れたオーディオを備えた、普通の見た目のメガネを入手できるようになった」とザッカーバーグCEOは語っています。
ザッカーバーグCEOの言うところの「ディスプレイがなくても、動画をストリーミングしてコンテンツをキャプチャすることができる、カメラ、マイク、優れたオーディオを備えた、普通の見た目のメガネ」とは、Metaとレイバンが共同開発して、エシロールルックスオティカがメガネのグラス部分を提供している「Ray-Ban Meta」です。ただし、記事作成時点でスマートグラスにとって最も重要な機能はAIであるとザッカーバーグCEOは言及しており、Meta AIにアクセスできるRay-Ban Metaは「完全なホログラフィックメガネを構築する道すがらにある」と表現しています。
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ザッカーバーグCEOはOrionを「次世代の数十億人規模のコンピューティングプラットフォームの典型的なビジョンであることは間違いない」と表現していますが、Orionは最終的に一般ユーザー向けに販売されることはありませんでした。これについて、「当初、Orionは消費者向けの製品となる予定でしたが、初めからこれが実現できるかどうかには確信が持てませんでした。製品が完成しても、すべてが思い通りにはいかず、製品として市場に出すにはもう少し小さく、もう少し明るく、もう少し解像度を高くし、より手頃な価格に抑えたいと思っています。そのため、Orionのバージョン2がおそらく一般消費者向けの製品になると思います」とザッカーバーグCEOは言及しました。
Orionを初めとするスマートグラスを開発するMetaのAR/VR開発部門であるReality Labsは、2022年6月以降、毎月10億ドル(約1450億円)もの損失を計上していることが報じられています。そんなReality LabsがOrionの開発にどれだけの費用をかけてきたのかについてヒース氏が質問したところ、ザッカーバーグCEOは50億ドル(約7200億円)以上の費用がかかったであろうことを見ています。「Reality Labs全体では、しばらくの間、予算のすべてがARとMRに向けられていると多くの人が考えていました。実際、スマートグラスプログラムの予算はARとMR関連のプログラムよりも大きな予算が当てられていたと過去に公言しました」と語っています。
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さらに、スマートグラスはまだまだ開発の初期段階にあるものの、AIに質問するだけであらゆることが実行可能となれば、「かなりエキサイティングなことになる」とザッカーバーグCEOは語りました。ただし、AIの進化の恩恵を受けるのはスマートグラスだけではなく、スマートフォンも同様であるとザッカーバーグCEOは予想しています。
他にも、ザッカーバーグCEOはXとの競争やAIトレーニングデータと著作権をめぐる論争、EUによる規制についてなどさまざまなトピックについてコメントしているので、気になる人はインタビューの全編をチェックしてみてください。
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